周りの騒めきがようやく言葉となってオーエンの耳に聞こえてきた。
あいつ団長怒らせて終わったな。
遠征が終わったらクビだろ。
などなど、全員が団長が怒っているとしか言っていない。顔が怖くて舌打ちしかしない。勘違いされても仕方ないとオーエンは思う。私はどうすれば良いのだろう。
「申し訳ございません。ジュノス団長」
ディグリス副魔法長のおかげで、オーエンはようやく我に返る。目の前のジュノス団長の顔が入れ替わるようにディグリス副魔法長に変わる。
「平気か」
「だっ、だ大丈夫です。すみません」
「意地の悪い事を言って悪かった。ジュノス団長。オーエンと話をしてきてよろしいでしょうか」
「ちっ、しばし休息。その後調査を再開する」
「ありがとうございます」
ディグリス副魔法長の手を借り、オーエンは立ち上がる。団員達は誰もジュノス団長の元に行こうとはしない。団長を労う様子もない。団長も1人離れた場所で水を飲んでいる。
「オーエン。どうして分かった」
「そっ、それは。あの、えっと」
「俺に話せないのか。オーエン」
「ディグリス副魔法長。おっお怒らないで、きっ聞いてくれますか?」
「聞いてからだ」
「わっ分かり、分かりました。私がぬいぐるみを使って森の地図をつっ作っていてですね」
「いつそんな事をしていたんだ。ぬいぐるみを使ってか。
どうして、そんな事をしていた」
森の地図をどうして作っていたか。本当は外を自由に歩きたかった。何も気にせず、誰かにぶつかることも恐れずに。
「もっ妄想して、していた」
「妄想?」
「ぬいぐるみに聞きながら、森を歩くわたしを。
自由に。なっ何も気にしな、しないで。まっま街のもあっあります」
「分かった。咎めはしない。ゴブリンにぬいぐるみは遭遇したか」
「はっははい。いっ今のゴッゴブリンは凄いですね。まっ魔法が使える。あっあの底無し沼もゴッゴブリン作のとっトラップですから」
「はぁ。おまえが常識がないことを忘れていた。いいか、オーエン」
真剣な顔でディグリス副魔法長が言うから、オーエンも居住まいを正す。
「はっはい」
「魔物は魔法を使えない。ゴブリンではない。何か別の魔物だ」
「えっ」
オーエンがほおけている間にディグリス副魔法長は慌てた様子でジュノス団長の元に駆け寄った。