討伐は城から街に降り、街道を歩き、その近くの森に団長の班と副団長の班。二手に分かれて移動することになった。どちらかがゴブリンの巣を発見すれば魔法石を使った通信機。魔法石は魔法使いが魔力を込めた石でそれをブローチにして通信魔法をかけて、相互に連絡を取り合うのだ。今日はゴブリンの巣を発見し、討伐は明日行うそうだ。
「はぁはぁはぁ」
「体力ないな。オーエン」
「ディグリス副魔法長。そっ外にまっまったく、でっ出なかった人には運動量はきっきついです」
「頑張れ。メンバーもかなり緊張しているみたいだな」
緊張。一言で片付けても良いのだろうか。緊張と怯えが伝わって、オーエンは余計に疲れていた。騎士団長とかなり距離をあけて歩いている。怖いのだろう彼が。
「いっ生きてるひっ人は全員怖いですよ。にっ人間だろうと、獣人だろうとエルフだろうと、魔族も。ディグリス副魔法長含めて」
「本人を前にして言わないだろ。ゴブリンが早く出てくれれば良いのだけどな。居心地が悪い遠征は初めてだ」
ジュノス団長を目の前にして、ディグリス副魔法長も言い過ぎなような。自分も失礼な事を言ったような気もするけど。
「……ん」
「なんだ。オーエン。変な声を「しっ、みっ皆さん。とまっ止まってください」」
リュックから可愛らしいもふもふのくまのぬいぐるみを出して、前方におもいっきり投げた。ジュノス団長から数メートル離れた場所に落ちたぬいぐるみがずぶずぶ下に沈んでいく。
「あぁぁぁぁ」
「変な声を出すな馬鹿者」
ディグリス副魔法長に頭を殴られそうになり、間一髪しゃがみ込んで避けた。
「やっややめてください。なっなんて事をすっする。
こっここれだから、生きてる者は嫌いだ」
「嫌いでもなんでも良い。説明しろ。オーエン。あれはなんだ」
「えっ。せつ、説明。わっ私が説明」
ここにいる全員の視線が、自分に向いている。オーエンの声はどんどん小さくなる。怖い無理。自分に説明なんて無理。無理無理。出来ない。
気持ち悪る。何お前。化け物じゃん。
婚約破棄するわ。気持ち悪いのよ。私が望む事。望む物。何も言っていないのに完璧に用意する。貴方が怖いわ。
幻聴が聞こえてきて、オーエンはしゃがみ込む。息がうまく吸えない。騎士団の人の騒めきにより一層胸か苦しくなる。声も出せない。
「ちっ」
大きな舌打ちがオーエン耳に聞こえた。目の前に紙袋が差し出された。自分の左手が紙袋を差し出した彼の肩に乗せられる。
(トラウマか。妹が過呼吸起こしていたな。落ち着け大丈夫だ)
舌打ちとは真逆の優しさ心の声。気持ちが落ち付いた。
「あっああありがとうございます」
「ちっ。迷惑かけるな」
(引き篭もりみたいだからな。急に連れ出して悪かったな。
甘い物好きかは分からねぇけど、終わったら差し入れしてやろう)
ジュノス団長。驚き過ぎてオーエンは固まってしまった。