「オーエン。起きろ」
「はっ、ひぃぃぃぃ。どど、どうして僕の部屋にいっ居るでありますか。副魔法長ディグリス様」
オーエン・リディクリス・リーチェ。魔法省の西棟の魔法使い。引きこもりの最年少17で魔法省に入り、3年引きこもり、執務も全て部屋でおこない魔法でぬいぐるみを操り、提出していた。
「オーエン。魔物討伐を行うため、騎士団の応援部隊として、我々が行くことになった。おまえもだ」
「ぼっ僕でありますか。ぼっ僕なんて引き篭もりの屑でカスみたいな底辺な魔法使いですから、お役に立たないかなぁと」
「おまえ。自分で言ってて悲しくないのか」
哀れみの表情を見せるディグリス副魔法長に、オーエンはただただ困惑していた。いつもは放っておいてくれる西棟の魔法使い達、魔法長。副魔法長。なのに、どうして今日に限って部屋に。昨日は転移ルーンの魔法陣の研究をしていて、確か寝落ちしてディグリス様の顔があった。部屋はベットに机。魔法省。研究途中の論文に、書きかけのルーンの紙が大量に散らばっている。この部屋に副魔法長がいる。
「すっすみません。あの汚い部屋に足を踏み入れさせてしまい。
あっあの、事実なので悲しいとかは特に」
「変わっているな。決定事項だ。3日後準備をしておくように。
何故おまえかと言えば。治療魔法が使える魔法使いが多く求められているからだ。以上だ。今日提出の書類はあるか」
「えっ、ええっと」
床を這いつくばり机まで移動し、ぐしゃぐしゃにならないように避けてあった書類を取りディグリス副魔法長に渡す。
「では、また3日後。来ない場合は強制的に呼び出すから、覚悟しろ」
ディグリス副魔法長の呼び出し魔法は強力で、誰も逆らえない。道中が問題だ。階段があろうが坂道だろうが、ディグリス副魔法長の所に連れて行かれる。あれは痛くて最悪だと聞く。外に出るのも嫌だけれど、痛いのもやだ。行くしかない。オーエンは3日後が憂鬱だった。