「
「え? 久しぶりって、何のことかしら? 月見なんて子は知り合いにいないのだけれど……」
「…………え!?」
よっこらしょと板の間の、月下さんの傍に座りながら、久しぶりの再会を
せっかく座ったのに、あたしは衝撃とともに腰を上げる。
え? ええ!?
だって、月下さん。さっき、あたしたちをそっちのけで、盛り上がってる二人を見てあきれたような顔をしていたから、てっきり。てっきり!
あれは、もしかして、夜咲花だけに向けられてたってこと?
いや、それよりも!
も、もしかして。
あたしたち、騙された!?
連れてきちゃいけない子を連れてきちゃった!?
夜咲花と二人だけでアトリエに行っちゃったけど、大丈夫なの!?
「え? だって、元祖魔法少女で、月下さんの知り合いだって言うから、連れてきたんだけど……」
「元祖魔法少女…………?」
膝立ちのまま、オロオロとそう言うと。
形のいい顎に人差し指を当てながら、月下さんはしばし考え込んだ。
それから、パンと手を叩く。
「ああ! あの子、マリンじゃないの! 衣装が随分個性的になっているから、気が付かなかったわ!」
月下さんの声が、珍しく弾んでいる。
ど、どうやら、騙されたわけではないらしい。
ふすまへ手をかけたまま、紅桃が振り返る。
ふすまの向こうからは、夜咲花の高笑いと月見さんが夜咲花を褒め称える声が聞こえてきた。
う、うん。
問題ないみたいだね。
紅桃は後ろ頭をガリガリと掻きながら、こっちに戻ってきて、どっかりと胡坐で座り込んだ。
ショートパンツだし、実は男の子だし、いいんだけど。いいんだけどさ。
見た目は妖精のように可憐な美少女だから、視覚の暴力って感じ!
その可憐さを、半分でいい、あたしに分けてほしい。
「どこかで見たことある顔だな、とは思っていたのよ。それにしても、昔は、もっとピンク一色な正統派魔法少女って感じだったのに。いつの間に、あんなことになっちゃったのかしら?」
「え、えーと。マジカル・ウィッチの月見ちゃんって名乗ってました」
月下さんや
「まじかるうぃっちつきみちゃん……」
月下さんは残念そうな微笑みを浮かべながら、ふすまの向こうに視線を走らせる。
うん、まあ。気持ちは、分かります。
「そういや、
胡坐に頬杖をつくという、最高にお行儀の悪い姿勢で紅桃が呟いた。
がっかりした気分になるので、なるべく視界に入れないようにしながら聞き返す。
「どういうこと?」
「ん? ああ。月見……さんも、飽きたからーとかいう理由で、名前とか服とかしょっちゅう変えたりしてんのかなー、と思ってさ」
「え? 段々とバージョンアップして、今のアレになっったんじゃないの?」
「バージョンアップなのか? あれは…………」
「え? う…………。きっと、本人的には、そうなんじゃないかな……?」
自信満々に名乗りを上げてたし。
「まあ、本人が気に入っていて、楽しくやっているのなら、何でもいいんじゃないかしら?」
月下さんが、無理やりまとめてきた。
いや、でも月下さんって、もともとそういうトコ、あるよね。
相手が満足していることは、それをそのまま受け入れちゃうというか。
あんまり、自分の考えを相手に押し付けてこないというか。
自分は、いつもピシッと正座で礼儀正しくお行儀がいいのに、ルナや紅桃がお行儀悪くしていても、咎めたりしないし。咎めるというか、あんまり気にもしていないみたいだよね?
「でさあ、元祖魔法少女って、どういうことなんだ?」
ぼんやりとアトリエへと続くふすまを眺めていたら、紅桃がどうでもよさそうに月下さんに尋ねた。
ちょっ!
紅桃!
そこ、どうでもよくない!
大事なとこだから!
あたしは、ちょっとだけ鼻息を荒くしながら、視線を月下さんにロックオン!
元祖魔法少女!
馴れ初め!
わくわく!!
「うーん、どういうことって言われてもねぇ。そのままの意味よ?」
「つ、つまり?」
身を乗り出す。
紅桃は、食いつきのいいあたしに、若干、引いてるみたいだけど、月下さんはいつものようにおっとりと優しい笑みを浮かべたままだ。
「つまり、マリン……じゃなくて、今は月見だったわね。あの子、月見はね。闇底で一番、最初の魔法少女で、そして同時に魔法少女の生みの親でもあるわね」
が、元祖なだけじゃなくて!!
ま、魔法少女の生みの親―――!?!?
それは、一体どういうことですか!?
詳しく!! プリーズ!!!!