元祖魔法少女。
それは、一体どういうことなのかと
月見さんは、ふふーんと笑いながらこう言った。
「そっれはねー、
「そうだった! 馴れ初めー! 聞きたい、聞きたい! お願いします!」
そうそう。
そもそもは、それを教えてもらうはずだったんだよ!
あたしは、河原を蹴り飛ばして宙を飛び、ほうきで飛んでいる月見さんの前にずずいと身を乗り出す。
ほうきの柄の数センチほど上あたりで、空中正座の姿勢をとり、わくわくと続きを強請った。
「お? なになに、そんなに興味あるのー? もーう、しょうがないなー。そこまで言われちゃ、話さないわけにはいかないよねー☆」
右手の人差し指を立てて、左右にフリフリしながら、月見さんは嬉しそうに笑った。
いよいよ!
と思ったら、またしても水を差された。
「長い話になりそうだし、アジトに帰ってからにしねぇ?
うっかり舌打ちしそうになったあたしだけれど、クッキーと紅茶と聞いて、それだというように
女子バナには、お茶とお菓子が付き物だよね!
女子バナっていうか、魔法女子バナ?
恋愛的要素は、たぶん何一つないと思うけど。それは、それ。
まあ、紅桃はそういう意味で気を利かせたわけじゃなくて、大量にあるクッキーの在庫整理を手伝ってもらいたいだけなんだろうけど。
夜咲花は、凝り性っていうのかな?
ジャージの魔女には負けられないとか言って、究極のクッキー目指してひたすらクッキーの試作に励みだしちゃって。ジャージの魔女は、地上からお取り寄せしたとか言っていたから、張り合ってもしょうがないと思うんだけど。まあ、納得いくクッキーが出来たら、
ともかく。そんなわけで、アジトはクッキーだらけなわけで。
あたしやルナはまだ平気だけれど、紅桃はクッキーに飽きてきちゃってるみたいだったからなぁ。
「え? クッキーと紅茶!? なになに、もしかして、地上から流れてきたのを拾ったの? いやーん、行く、行くー☆」
クッキーと紅茶と聞いて、月見さんも瞳をキラッと輝かせた。
「んーとね、ちょっと違うかな。地上産のクッキーじゃなくて、うちの引きこもり錬金魔法少女が錬金魔法で作ったクッキーと紅茶です」
別に自分で作ったわけじゃないのに、あたしは自慢げに胸を反らした。
「え? 作った!? なにそれ!? おいしいの? あ、よく見たら、なんか妖精みたいな美少女が嫌そうな顔しているけど!? もしかして、押し付けようとしてる!?」
月見さんの乗ったほうきが、スッと後ろに下がった。
「え? いやいや、ちゃんとおいしいですよ!? ただ、ずっとクッキーばっかだったので、紅桃はちょっと飽きちゃってるだけで!」
あたしは慌てて、違う違うと両手を左右に振った。
「おう……。俺は、ポテチとコーラが食いてぇ……」
後ろから、どこか疲れたような紅桃のボヤキが聞こえてくる。
「あ、あー。そういうこと。んー、まあ、いいか。月下美人にも久しぶりに会いたいし。でも、クッキーはおいしくなかったら、食べないからね? お土産にもいらないからね?」
月見さんは、首を捻りながらも一応は納得してくれたみたいだった。
念のために釘を刺すのは忘れてないけど。
用心深い。
ま。
そんなわけでー。
アジトに向かって、ゴー!
よーし。きっと、これで少しはクッキーの在庫が減って……も、またすぐ増えちゃうんだろうなぁ……。
うん、食べる。食べるよ…………ちゃんと。
夜咲花が作ってくれたんだもん、ね…………。