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第30話 アジトへ向かってGO!

 元祖魔法少女。


 それは、一体どういうことなのかと月見つきみさんに詰め寄ると。

 月見さんは、ふふーんと笑いながらこう言った。


「そっれはねー、月下美人げっかびじんとの馴れ初めにも関係してくるんだよねー☆」

「そうだった! 馴れ初めー! 聞きたい、聞きたい! お願いします!」


 そうそう。

 そもそもは、それを教えてもらうはずだったんだよ!

 あたしは、河原を蹴り飛ばして宙を飛び、ほうきで飛んでいる月見さんの前にずずいと身を乗り出す。

 ほうきの柄の数センチほど上あたりで、空中正座の姿勢をとり、わくわくと続きを強請った。


「お? なになに、そんなに興味あるのー? もーう、しょうがないなー。そこまで言われちゃ、話さないわけにはいかないよねー☆」


 右手の人差し指を立てて、左右にフリフリしながら、月見さんは嬉しそうに笑った。

 いよいよ!

 と思ったら、またしても水を差された。


「長い話になりそうだし、アジトに帰ってからにしねぇ? 夜咲花よるさくはなも聞ききたいだろうし。それに、今ならクッキーと紅茶が大量にあるし。土産に、根こそぎ持って行ってもらいたい……」


 うっかり舌打ちしそうになったあたしだけれど、クッキーと紅茶と聞いて、それだというように紅桃べにももを振り返る。

 女子バナには、お茶とお菓子が付き物だよね!

 女子バナっていうか、魔法女子バナ?

 恋愛的要素は、たぶん何一つないと思うけど。それは、それ。

 まあ、紅桃はそういう意味で気を利かせたわけじゃなくて、大量にあるクッキーの在庫整理を手伝ってもらいたいだけなんだろうけど。

 夜咲花は、凝り性っていうのかな? 

 ジャージの魔女には負けられないとか言って、究極のクッキー目指してひたすらクッキーの試作に励みだしちゃって。ジャージの魔女は、地上からお取り寄せしたとか言っていたから、張り合ってもしょうがないと思うんだけど。まあ、納得いくクッキーが出来たら、月華つきはなにも食べてもらいたいから、っていうのもあるみたいだからなー。その野望に月華が絡んでいる以上、夜咲花は絶対に諦めないだろうし。まあ、しょうがない。

 ともかく。そんなわけで、アジトはクッキーだらけなわけで。

 あたしやルナはまだ平気だけれど、紅桃はクッキーに飽きてきちゃってるみたいだったからなぁ。


「え? クッキーと紅茶!? なになに、もしかして、地上から流れてきたのを拾ったの? いやーん、行く、行くー☆」


 クッキーと紅茶と聞いて、月見さんも瞳をキラッと輝かせた。


「んーとね、ちょっと違うかな。地上産のクッキーじゃなくて、うちの引きこもり錬金魔法少女が錬金魔法で作ったクッキーと紅茶です」


 別に自分で作ったわけじゃないのに、あたしは自慢げに胸を反らした。


「え? 作った!? なにそれ!? おいしいの? あ、よく見たら、なんか妖精みたいな美少女が嫌そうな顔しているけど!? もしかして、押し付けようとしてる!?」


 月見さんの乗ったほうきが、スッと後ろに下がった。


「え? いやいや、ちゃんとおいしいですよ!? ただ、ずっとクッキーばっかだったので、紅桃はちょっと飽きちゃってるだけで!」


 あたしは慌てて、違う違うと両手を左右に振った。


「おう……。俺は、ポテチとコーラが食いてぇ……」


 後ろから、どこか疲れたような紅桃のボヤキが聞こえてくる。


 「あ、あー。そういうこと。んー、まあ、いいか。月下美人にも久しぶりに会いたいし。でも、クッキーはおいしくなかったら、食べないからね? お土産にもいらないからね?」


 月見さんは、首を捻りながらも一応は納得してくれたみたいだった。

 念のために釘を刺すのは忘れてないけど。

 用心深い。


 ま。

 そんなわけでー。


 アジトに向かって、ゴー!


 よーし。きっと、これで少しはクッキーの在庫が減って……も、またすぐ増えちゃうんだろうなぁ……。

 うん、食べる。食べるよ…………ちゃんと。

 夜咲花が作ってくれたんだもん、ね…………。


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