残念ながら、
なぜなら。
あたしたちに気づいた
まあ、離れているとはいっても姿が見える距離にはいたわけだし、魔法の技を使ったり、大カエルが川に飛び込んだりすれば、さすがに気が付くよね。
文字通り、空をすっ飛んできた二人は、あたしを守るようにして河原の石ころの上に降り立った。
「魔法少女ハンターっていうのは、あんたのことか?」
「マホーショージョもどき!」
どうやら二人とも、月見さんがサトーさんの言っていた魔法少女狩りの犯人では? と思って、警戒しているみたいだった。
でも、ルナ。
確かに、月見さんは正統派魔法少女じゃないと思うけど、ルナには言われたくないんじゃないかなー?
ルナのコスチュームは、普通の白いTシャツにデニムのショートパンツだし。猫耳と猫しっぽがついていて、空を飛んできたばかりだから、背中には大きな猛禽類系の羽が生えているし。
こっちはこっちで、混ぜるな危険というか。
猫と鳥は一緒にしたら、いけないんじゃないかなーと星空は思います。今更だけど。
「え? 何? 魔法少女ハンター? 何それ、かっこいい! 魔法少女ハンター☆月見っていうのもありかも☆ そうなると、武器はやっぱり弓!?」
「あー、違うの、二人とも! この人は、えーと、マジカルでウィッチな魔法少女? の月見さんって言って、月見はお月見の月見で、あたしがおっきいカエルの妖魔と見つめあって動けなくなっていたところを助けてくれたの! 一応! あと、月見さんは月下さんの知り合いなんだって! 最近の月下さんのことを教えれば、月下さんとの馴れ初めを聞かせてくれるって!」
魔法少女ハンターと聞いて、楽しそうに遠い夢の国へと意識を飛ばしてしまった月見さんに代わって、あたしは二人に、あたしと月見さんの馴れ初めを説明する。
「は?
「なんだー。ゲッカの知り合いかー」
二人とも警戒は解いてくれたみたいだ。
みたいだけど。
紅桃。気持ちは分かるけど、失礼だよ?
まあ、月見さんが聞いてないみたいだからよかったけどさ。
「魔法少女ってか、マジシャンじゃね? マジカルとウィッチって微妙にかぶってるような気がするんだが……。マジシャン要素がマジカルなのか? ウィッチ……だから、ほうきに乗ってて。で、お月見だから、うさ耳としっぽをつけてる、と。いつの時代の魔法少女なんだ、これ? それとも、個人のセンスなのか……?」
紅桃は、まだぶつぶつ言っている。
もー、そう言うことは、本人の前で口に出したらだめだって。心の中だけにして。たとえ、本人が聞いてないとしても。
ていうか、紅桃のその分析は何なの?
お月見だからうさ耳って。
よく気付いたね、そんなこと……。
あたしは、全然分からなかったよ。
で、まあ、その後。
夢の国から戻ってきた月見さんは、サトーさん情報の魔法少女もどきの魔法少女ハンターじゃないかと思ってちょっとトゲトゲしちゃいましたって二人が謝ると、あっさり笑って許してくれた。
「あー。サトーのせいじゃ、仕方ないよねー」
サトーさん…………。
そして、もう一度っていうか、あたし以外のみんなが自己紹介をし終えたところで、月見さんが何やら分析? というか、推理? みたいなことを楽し気に話し始めた。
「うーん、それにしても、魔法少女もどきの魔法少女ハンターかぁ。魔法少女に擬態した妖魔が、仲間だと思わせて魔法少女に近づき、相手が気を許したところで…………とか?」
「な、何のために、そんなことをするんだ!?」
「もちろん、食べるためでしょ?」
ほうきをユラユラさせながら、月見さんはなんか怖いことを楽しそーうにおっしゃった。
「ま、魔法少女って、おいしいの?」
闇底に彷徨いこんだばかりのころ、沼地で魚型の妖魔に食べられそうになったことを思い出して、自分を抱きしめるようにしながらぶるりと身を震わせる。
「んー。おいしいのかどうかは知らないけど、需要はあるみたいだよー? もうちょっと、戦闘系の強い妖魔がいるところだと、『お前を食らってその力を手に入れてやるー!』とかいう妖魔がしょっちゅう現れるよ? ま、全部返り討ちにしちゃったけどネ☆」
「ツキミ、強ーい!」
「ふっふふーん。まあね。なんたって、月見サンはこの闇底世界の元祖魔法少女だもんねー☆」
月見さんは、ほうきの上で胸を反らした。
って、いや、ええ!?
「元祖」
「マホー」
「少女!?」
思わず三人でハモ、ハモ……いや、ハモってはいないな、えーと。こういうのは、なんていうんだっけ?
ん、まあいいや。
ちなみに。
上から、紅桃、ルナ、あたしの順です。
それは、ともかく。
元祖魔法少女?
何ソレ! 知りたい! 教えて、月見サン!!