次の日、クリスマスのことを考えていると、里香がみんなへのクリスマスプレゼントを買いたいと言った。今年の正月にもらったお年玉で買うというのだ。だが、里香を一人で買い物に行かせることはできない。ということで、サブとモモの散歩も兼ね、みんなで出かけることにした。駅前に行けばいろいろなお店もあり、そこまでは3人でゆっくり歩いても30分もあれば着く。車ではなく、歩いて買い物というのは、食材を買いにスーパーに行くことぐらいだが、その場合は美恵子1人だ。里香も連れてというと、この前のクリスマスツリーを買いに行く時の様に、買ったものを車に積んで帰ることになる。
だが、今回の買い物は里香が主役だ。買うものも知れている。たまには手に荷物を下げて家に帰るということも良いのではと思い、道すがらの会話も楽しみながらということで出かけた。
駅前にはいろいろなジャンルの商品が置いてあるギフト店がある。そこなら里香がプレゼントを買うのに良いだろうと美恵子は考えていた。
店に着くと、里香は眼を大きく見開き、興奮していろいろな商品を見て回った。プレゼントというのは、箱を開ける時の楽しみがあるので、今回の様に相手がプレゼントの中身を事前に知っているということは無いが、子供の気持ちも含めて考えている。一郎へのプレゼントは買い物に同伴していないので分かることは無いが、問題は中身が分かる分からないではない。里香の気持ちを最大に考えたいところからのことだ。選択は里香の自主性に任せ、自分で選んでもらった。
一通り買った時、どこかで休んでいこうとなり、近くの喫茶店に入った。サブたちがいるため店内には入れないので、テラス席のある店に入った。時期が時期なのでそこに座っている人はいなかったが、ペット連れの人には有難い。風よけのビニールが設置してあるが、そもそもこの日、風は吹いていない。美恵子たちにとってちょうど良い条件だった。
「いろいろ買ったね。ショッピング、楽しかった?」
「楽しかった。お父さん、お母さん、正男君、サブちゃん、モモちゃんにも買った。クリスマスの日にあげるね。楽しみにしてて」
「分かった。ありがとう」
「僕モモラエルノ? ズット大切ニスル」
道路に面していることから、外の様子もよく分かるが、師走の忙しさが感じられるような人の流れだ。四角いテーブルの一方に美恵子は1人で座り、その向かいに里香、その隣に正男が座っている。サブは里香の横で座っており、モモのゲージは美恵子の隣の椅子の上に置いてある。
基本的に気温が低い日なので、飲み物は全員温かいものだ。
注文したものがテーブルに運ばれてきた時、少し遠くから車のエンジン音が聞こえてきた。通常とは異なる異様な大きい音だった。
「いやあね。暴走車じゃないならいいけど・・・」