次の日、ホームセンターからクリスマスツリーが届いた。
昨日の買い物の中にはツリーの飾り付けもたくさんあった。これできれいに飾りつけられるということで、ツリーを置くのに一番良いところにセットした。何の飾り付けもされていないが、リビングに置いてあるだけで雰囲気がまるで違う。
「よそのお家に来たみたいだね」
里香が言った。美恵子もその言葉に頷いている。
「じゃあ、飾り付けようか」
「里香、低いところを飾る。正男君とお母さんは高いところをお願い」
クリスマスツリーの到着で里香のテンションは上がり、すっかり現場監督のようだ。
星形や球体の色とりどりの飾りをツリーに付け、昨日の電飾のコードも少し巻き付けた。雪を思わせる綿の塊も適切に配置した。現場監督気分の里香は時々少し離れて全体を見て、いろいろ指示を出している。みんなはそれに従い、作業を初めて2時間くらいで終了した。
電飾のスイッチを入れると色とりどりの電球が点滅し、とてもきれいだ」
「キレイダ。里香チャン、ヤッタネ」
正男の言葉に里香はご満悦だった。
「でも、それも正男君とお母さんが手伝ってくれたからよ」
その言葉に美恵子と正男は互いに目を合わせた。これまで里香がこのようなお礼の言葉を言うことがなかったからだ。
だが、正男が会話の度に行っていたことから学んだのだろう。
その様子に美恵子は里香の成長も感じたが、ほんのり涙目になっていた。正男と共に里香の成長も確認できたことに喜びが湧いていたのだ。
「お母さん、どうしたの?」
「作業で目にゴミが入ったみたい。でも大丈夫、今、取れた」
美恵子はこの日、クリスマスツリーの飾り付けで昼食を作るのが難しいだろうと思い、事前に用意していたサンドイッチを食べることにした。スープも用意していたので、飾り付けをしたツリーに点灯し、一足早いクリスマス気分を味わっていた。
夜、一郎が帰宅した。まずリビングに行ったが、開口一番、雰囲気の違いを口にした。
「おっ、きれいだね。もうクリスマスが来たって感じだ。みんなで飾りつけしたの?」
「そう、低いところは里香、高いところは正男君とお母さん。サブちゃんとモモちゃんは遊んでいた」
里香が一郎に抱き着きながら言った。美恵子は台所で夕食の支度をしながら会話を聞いていた。
「あなた、着替えて。ちょっと待っててね、もうすぐ夕食、できるから」
「分かった。正男君も手伝ったのか。どうだった?」
一郎は美恵子に返事した後、正男にクリスマスツリーの飾り付けについて尋ねた。
「楽シカッタ。明日ハ家ノ外ノ飾リ付ケヲ里香チャントスル。クリスマス、イロイロヤルンダネ。新シイコト、タクサン教エテモラッタ」
会話が複雑な感じになっており、こういう雰囲気に一郎は仕事の疲れもどこかに忘れている。この後、みんなで夕食をとり、他愛のない日常会話で1日を終えたが、そういう当たり前がとても大切に思えているのが最近の日常になっている。