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正男、死す 3

 家に戻り、荷物を出し、この日にできることの準備をした。ツリーは明日届くので、今日は家の外の飾りつけの準備になる。買ってきた電飾のコードや電球を取り付けることになるが、どういうデザインにするかを決めなくてはならない。里香と正男がそのことで相談している。時々分からないことがあると美恵子にも相談していたが、概ね2人で決めている。今年のクリスマス、とても暖かいものになるだろう、と美恵子は想像していた。となると、どういう料理を作るか、ということをしっかり考えなければならない。もちろん、田代も呼ぶことになるが、みんなが美味しいと言ってくれるようなメニューをしたいと思っていた。

 里香と正男がデザインを考える時、コードをいろいろな形にしていたが、サブやモモにはそれが遊びに見えたのが、動きに合わせてじゃれてくる。モモは噛んだり爪でひっかくようなことをやっているが、それでコードの外側が破れたら漏電も心配される。美恵子が2人の様子を見て気になっていたのがそれだった。

「里香ちゃん、モモちゃんがコードを噛んだりしないように注意して。もしそれで切れたりしたら、せっかくきれいなはずの明かりが点かなくなるわよ」

 里香は美恵子の言葉にモモには遊ばせたいけど、電球が点かないとなると良くないと思い、噛みつかないようにそっと抱きかかえ、コードのほうには行かないようにした。サブはモモの行動に対して反応していたので、里香が抱きかかえたことで動きを止めた。

 モモはそのまま喉をゴロゴロ鳴らし始めたが、その様子にサブも撫でてもらいたいと思ったのか、正男のほうに近づき、そこで横になった。

 そのことで正男の手も止まり、サブを撫で始め、電飾用の作業の手が止まった。

「あらあら、仕方ないわね。じゃあ、今日はクリスマス用の仕事は終わり。サブちゃんとモモちゃんの相手をしてあげて」

 美恵子はそう言って、床に散らかったコードや電球を片付けた。


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