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コスモスと紅葉 6

 その2週間後、今度は日光に紅葉を見に行く日になった。今回も田代が前日から泊まり込んでおり、車で一緒に向かうことになっている。海水浴の時のことがあるし、泊りがけの予定なのでサポート用の車も同行する。もちろん、辺見家には見えないところから付いていくわけだが、そのことを知っているのは田代だけだ。

 正男を交えての1泊旅行というのは初めてのことだ。休む場所が辺見家からホテルになるだけだが、いつもと異なる環境ということだからこその対応だ。海水浴の場合、暑さや海水のことが心配されてのことだったが、今回はそういう懸念要素は無い。だが、研究所から離れるということで、不測の事態に備えるため、ということで帯同することになったのだ。

 辺見家から紅葉の名所、いろは坂までの所要時間は途中で休憩を入れたり渋滞などの可能性を入れたら4時間前後と一郎は考えている。

 あえて休日を避け、平日にしているが関東の紅葉の名所だけに、同じように考えている人も多いはずだ。子供も一緒なので長時間のドライブで飽きないようにしなければならないが、眠ってもらっても良い。適度にサービスエリアで休憩を取りつつ、行程にメリハリを付けて目的地に到着することを考えている。

 紅葉が一番の目的だが、いろは坂のほうに行くとなると、華厳の滝や中禅寺湖も堪能したいと思っている。

 スケジュールを考えると7時半を出発の時間と予定しているが、みんなの気持ちが高くなっているために、7時ちょっと過ぎには準備が終わっている。ならば余裕を持った行動ができるということで早々に出発することになった。まずは宇都宮まで行き、それから日光を目指すことになるが、安全運転を心掛ける場合、スピードは出せない。

 時間がかかる可能性で大きいのが渋滞だが、車に搭載しているナビの場合、その情報も教えてくれるので、今回はそれが重宝しそうだ。

 出発前にそういったケースを考えることで、もともと余裕がある予定に加え、一郎の気持ちは軽くなった。だが、逸る気持ちが全員の心に沸き起こり、結局、7時半を待たずに出発することになった。

 宇都宮まで高速に乗った時、車の流れは大変スムーズだった。これでは遅れることなく到着しそうだと思った。そうなるとトイレ休憩や食事など、途中で時間を使ってもおつりがくる感じだ。運転のストレスは無い。

 しばらく走ると、里香がトイレに行きたいと言った。お菓子も買いたいようだ。

 ということで、その話が出たところから一番近いサービスエリアで休憩をすることになった。誰か一人がトイレに行けば、一緒に行く人も出てくる。結局、正男を除いて全員トイレに行くことになったが、その後は売店に行き、お菓子や飲み物を買ってきた。ドライブの場合、こういったことが楽しいのだが、早速今回の旅の楽しみが始まった。


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