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コスモスと紅葉 5

 喉を潤した後、コスモスの丘のほうに向かった。ここに植えてあるコスモスの色はピンクや濃い紅で、それが葉の緑との対比でとても鮮やかだ。同じエリア内にこもれびの里というところがあるが、そこにはヒガンバナが咲いていた。真っ赤な花が多いが、白い花もある。独特な花の形をしているので目立つ。園内にはヒガンバナが群生しているところがあるが、少し分かりにくいところにあるため、見過ごしてしまっていた。大きな池が目に入った少し手前で横に目をやると見つけられたが、ここで見ることができたのでこの花からも季節を感じることになった。

 その左手にコスモスの丘があるが、テレビの天気予報などの中継場所になることもある東京では有名なスポットになっている。

 ここでは「丘」という名称通り、小高い場所の斜面を活用して広いエリアにたくさんのコスモスが風にそよいでいる。それだけでもしばらく見入ってしまうくらいの光景だ。色の違いから、先ほどの黄色いコスモスのエリアとは異なる光景になっている。

 その違いに里香のテンションはまた上がっていた。この場所は傾斜している関係上、里香の背でも適度に顔が見えるので、花に埋もれている感じが出る。里香は正男の手を引っ張り、丘を駆け上っていった。

 今度はサブもモモも一緒だった。丘の中腹ではモモをゲージから出し、里香が抱きかかえた。サブのリードは正男が持っている。辺見夫妻と田代は丘の麓から写真を撮っている。さっきと異なる景色に写真の感じも違っている。

 それなりの枚数を撮った後、3人も丘の上に上った。里香たちよりも高い位置になった時、今度は異なるアングルで正男たちを撮った。時折声をかけ、目線を向けてもらったりしたが、自然に動いている様子も撮りたいと思っていたので、狙った通りの状態だった。

 コスモスの丘を堪能した後、隣にある日本庭園を訪れた。これまでとは異なった雰囲気で、京都にでも来たかのような雰囲気だ。和の建物や植えてある植物など、ここだけでも結構な時間が必要になると思われる場所だ。

 園内のモミジの一部はほんのり紅葉しているところもあるが、まだ緑のほうが濃い。ここで紅葉を見ようと思えば、もう少し先だろうという状態だ。

 そういうことを思いながら日本庭園のエリアを出ると、大きな華やかな花が見えてきた。ダリアだ。コスモスと違って力強さを感じる。秋の花として見ていたが、コスモスの群生の様子が印象的だったので、咲いている本数からそれほど気持ちは高揚しなかった。

 そのまま通り過ぎると、再び池が見えるところになった。そこにはレストランがあるが、その様子を見て里香が言った。

「お腹空いた」

 その言葉で時計を見たが、既に3時だった。花を見たりしていることで時間の感覚やお腹の状態まで気が回らなかったのだ。食事にしようかとも思ったが、時間が中途半端だし、ここでお腹一杯になれば、夕食が入らないだろう。ということでここでは軽食をとり、家に帰ってきちんと食べようということになった。


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