一郎と美恵子はその様子に正男の成長を感じていた。里香との会話の様子を聞いていると普通の人間同士の話に聞こえていたのだ。そして、秋の足音が聞こえることも関係しているのか、正男と別れることについて、より感傷的になっている自分たちの心を感じていた。だからこそ、いろいろなことをみんなで経験し、来たる別れの時まで精一杯楽しい思い出も作っておこうと再確認した。里香が正男との別れのことを理解しているかどうかは分からないが、とにかく今は楽しい時を過ごそう、ということで具体的な話をすることにした。
「では、具体的にどこに行くか考えよう。それなりの雰囲気を味わいたいとなれば、それぞれ別の場所になると思う。まず、コスモスから考えようか」
「コスモスなら私、昔行った立川の昭和記念公園が良いかな。コスモスだけのエリアもあるし、他にも秋の花が楽しめる。1日中ゆっくりできると思う」
「良いね。そこならサブたちも連れて行けるし、開放感でゆったりできる」
「ねえ、その公園、どんなところ?」
里香が聞いてきたので一郎はスマホで昭和記念公園を検索し、里香や正男に見せた。
「楽しそう。里香、行きたい」
「僕モ」
早々に2人の賛同が得られた。
「じゃあ、次は紅葉だけど、昭和記念公園でも見られるけど、時期的にコスモスはともかく、紅葉はまだ難しいかもしれない」
「それなら、どうする?」
「1泊で日光というのはどうだろう。あそこは東京より一足先に紅葉が見られるし、日帰りでは鎌倉に行ったが、泊りがけというのはまだない」
「サブちゃんやモモちゃんはどうするの?」
両親の話に里香が割り込んできた。
「ペット同伴OKという宿を探そう」
一郎はそう言ってまたスマホで検索した。探してみると思ったよりもヒットした。
「大丈夫だ。みんなで行けるよ」
「良かった。泊りがけの紅葉、楽しみだ」
里香が喜んだ。それを見た正男も微笑んでいる。
「それじゃ、コスモスと紅葉、また田代さんを誘おう。いいね?」
「もちろんよ、みんなで楽しみましょう」