警察に連行されたチンピラ3人組はそれぞれ別の取調室にいた。
その時点で警察庁から神奈川県警本部に連絡が行っていた。正男が地元署に行った場合と同様に、研究所の所長の意向が働いていたのだ。正男がロボットであることが世間に広まらないためだが、前回と違い、今回は3人組に対してしっかりお灸をすえる要求が出ていた。
正男を殴った犯人だが、取調室でも不貞腐れたような態度を取っていた。
「名前は?」
「・・・」
「フルネームで言うんだ」
「チっ、面倒くさいな。後藤文雄だよ」
取り調べの担当刑事である木村はその場にいる若い刑事に人物照会を頼んだ。
「お前な、殴るだけでなく、海中に放り込むなんて無茶したな。もし殴った時に気絶でもして、そのまま溺れてしまったら最悪、殺人だぞ。分かっているのか」
「殺すつもりなんてないよ。生意気だったら少し懲らしめてやろうとしただけだ」
「お前にそんなことをする権利はあるのか?」
「・・・」
そんなことを話している時、人物照会をした刑事が戻ってきた。
「木村さん、そいつ、傷害でマエがあります」
「ほう、お前、マエがあるのか。じゃあ、しばらく泊まってもらおうか。余罪があるかもしれないからな」
「木村さん、他の2人はどうします。後藤のようなマエはありません」
若い刑事が言った。
「そうか、だが今回の件は一緒にやっているからな。泊まってもらえ」
木村は若い刑事に耳打ちした後、後藤に向かって言った。
「ということで後藤、今回の件、ゆっくり話してもらおうか」
「・・・それはそうと、俺が殴った奴、どうなっているんですかね。とても硬くて、見て下さいよ。俺の拳、こんなに腫れています」
「お前、こんなになるくらいの力で殴ったのか。殺意があったのか?」
「とんでもない。俺は軽く、脅すつもりでした」
「脅すというレベルじゃないだろう。この拳は」
「本当ですよ。そんなに強く殴っていない。でも、やたら固かったんです。まるで鉄の塊を殴った感じでした」
「鉄の塊? ちょっとオーバーだろう」
「そんなことないです」
「まあそれは良い。海の中に投げ込んだのは殺意があってのことだろう?」
「子供でも背が立つ深さですよ。そんなことは無いです」
「お前な、20センチか30センチの深さでも溺れるんだ。被害者は殴られて気絶していたら死ぬかもしれない。そんなことは考えなかったのか?」
「俺、そんなこと知らないですよ」
「そう言っても、現実に被害者が死んだら容疑が切り替わるからな」
「脅かさないで下さいよ」
そういった感じで取り調べが続いたが、ある程度聴取すると、留置場へと移された。そこでは3人が一緒だった。