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ロボット哀歌
藤堂慎人
SFSFコレクション
2024年11月30日
公開日
7,848文字
連載中
人間とロボットの共生のために作られたAMK1号(人間名:正男)。人間の生活を学ぶため辺見家に1年間預けられることになった。父母と5歳の娘、犬と猫が暮らす平和な家庭だ。平凡な日常を経験する中で成長する正男を期待するが、世の中の偏見もある。そこには悲しい現実もある。一つ一つ乗り越え、娘と共に人間らしい感情を学ぶ。そしてそのことが正男の人工知能に影響を与え、衝撃の結末につながる。
単なるSF小説ではなく、将来訪れる可能性が高い世界でのことを考える作品のつもりで執筆しました。

プロローグ

 無機質な空間。その中央には大きなベッドがあり、コードが繋がれたロボットが横たわっている。金属でできた躯体が鈍い光を放っている。

 まだ通電されておらず、ピクリとも動かない。

 複数の白衣を着た人物たちがその周囲で会話している。

「今度の試作品だが、我々の社会に適合するかどうか・・・」

「躯体はともかく、ソフトの性能が関係してくるだろうが、それは試してみなければ分からない。学習機能もあるので、経験によりいろいろ成長していくことになるはずだが、それが良い結果になるかは何を学ぶかにも関係する。感情ソフトもインストールしてあるので、人間のような喜怒哀楽まで学んでもらえれば良いが・・・」

「だからリアルタイムでモニターに反映されるようになっている。必要に応じて我々でもコントロールできる」

「ただ、今回の場合、ロボットが自立して人間社会とうまく溶け込めるかが課題だ。パソコン上での会話のみというわけではなく、行動を共にする。暴走してしまった場合、人間よりも力が強い分、制御不能になれば危険だ」

「だから、過剰な力が発揮できないようなリミッターが付けてある」

「作業用に開発されたものではないので、人間の情緒の理解と共感をメインに設計してある。力の暴走で人間を傷付けるようなことにはならないはずだ」

「では、人間らしく成長する様に、信頼できる人間に預けることが必要だな。定期的な報告を受けながら改善していく、というのはどうだろう」

「そうなると、預ける人の条件を考えなければならない。なるべく一般的なことが学べる環境で、ロボットにも理解がある家庭、ということになるかな」

「具体的には?」

「このロボットの場合、見た目の設定は20代の男性だが、表に出す時には人間社会の経験は皆無だ。事前にデータを入力するとしても子供が成長する様子を前提に体験させることになると思うので、幼児クラスの設定で出そうと考えている」

「では5歳くらいの子供がいて、動物も飼っている家庭というのはどうだろう。人間だけでなく、動物に対する愛情をどう育めるかもポイントだ」

「人間社会でのことを考えると条件はそれが良いだろう。無垢の状態だから、どんなことを学んでいくかで場合によっては脅威にもなり得る。私たちは人間の良き隣人としての存在を期待しているので、良い性格に育って欲しいものだな」

「こういった会話をしていると、この試作品、何だか自分の子どもの様に思えてきたよ」

「そういう感情が私たちに芽生えたのなら、少なくとも今時点では成功なのかも・・・」

 そういう会話をしながら、全員、別室に移動した。


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