『高嶺の花』
遠くから見れるだけで。
──自分の手には、納められないもの。
勝手に憧れられるだけで。
──自分には、ほど遠いもの。
◆◆◆
校舎の廊下から、鹿児島特有の桜島からの噴煙が見える、2060年7月中旬
そんな見慣れた普遍的な景色を見ながらトイレから帰っている途中、中庭から男女の声が聞こえた
「お、おれ……
「ごめんなさい、私には、一生を共にする人がいるんです……すいません…」
「そ、そうですか、ははっ……柳田さんの幸せをいのっています」
「ありがとうございます、そちらこそ、一生を共にする、愛人が見つかるといいですね」
ふられた少年は俯きながら、辿々しい足取りで、校舎の中へと入って行った。
振られて、相当ショックだったんだろうな―、まぁ、おれには関係ないけど
6月の終盤に突如、先生達からの連絡もなく転校生として、おれの学校に来た。
なぜ、こんな中途半端な時に転校してきたんだろうと、多分全員思ったんだが……
人間離れした肌の白さに、全国の女性が羨ましがるような、艶がある、美しい漆黒の黒髪で、癖つない綺麗なロングヘアー、瞳の色は、淡い青色で、その青色は 、氷で一面を覆われた湖のように澄んでいる、そんな瞳には、穏やかで冷たさを感じさせながらも、どこか優しさげな温もりも秘めていて、見つめられると心が奪われそうになるを思わせるような神秘的な輝きを放っている。この瞳の色は彼女の存在を一層際立たせ、黒髪とのコントラストが、圧倒的な美しさを引き立てる。
これらの特徴のせいで、学校でもいい意味で少し浮いた存在であり、その美しさとオーラは誰もが認める特別なものだ。そして、俺が通う
◆◆◆
「おまえら、どうせ出席番号順だと思うだろから、今回は珍しく、逆から行こうと思う
別にどうでもよくね、大事なのは点数なんだ
おれは答案返却の順番なんて、心底どうでもいいと思いながら、外の風景を見たいた
「柊」
「はい」
おれの心拍数はきもいことになっていつだろ、それもそのはず、この国語の点数で課金できるかできないかが決まるから
「おい蒼、まだ見るなよ」
「はいはい」
内容は、事前にテストの予想点を書き、予想点が実際の点数とのプラマイの値が大きい方が何か奢る、というのだ
ごめんよ、康太郎、おれは推しをお迎えしなければならないんだ
この勝負、なんとしてでも勝たなければならない——不正をしてでもね
おれはこっそりと、答案用紙を持ち上げ、点数を見た。
68
ラッキー、不正しなくても良かったじゃん
おれは消しゴムを音が立たないようにファスナーを開け、筆箱に直した
てか、普通に400いって嬉しいな
おれは不正をしてようとしていると思われないように、適当に考え事をしているように見せ、康太郎の答案を待った
「蒼、いくぞ」
「いいだろう」
康太郎の点数は…92……まぁ、いつも通り、大差で負けた
「相変わらず、文系科目クソ雑魚だな」
「普通に傷つくからやめろ」
「ごめんごめん…で、プラマイ何点だ」
「ふ、ふ、ふははははぁ、ごめんなぁ―、康太郎……おれの勝ちのようだ」
「なん…だと」
おれは、引き出しの中から、クリアファイルを取り出し、そこから、自分の予想点を書いた紙を出した
「この紙を見るが良い…おれの誤差は、数学のマイナス2、化学の0、社会のプラス4、国語の0、英語のマイナス10…よって、誤差16点、康太郎の誤差は国語のせいでプラス2点になり、誤差12……よって、おれの勝ちが証明された」
「……参りました…1500円でいいよな?」
「いいよ」
無事、賭け事にも勝ち、400点も超えれたので、気分が高くなりながら、おれは帰ろうとした。
しかし、神様は、おれを面倒事に付き合わせたいらしい
午後2:50、体育館裏に来てください
いらねー、まじでいらん、せっかくのイベランの時間がぁ―
おれは、気分が下がったが、おれはカス男では無いので、そのまま下校せず待った、勇気を出してくれた、この書き出し人に失礼だからな
まぁ、その告白の答えは既に確定しているんだけど…てか、これ以外の言葉を言ったら、殺されそうだし
午後2:50
「私は、柊君のことが…」
残りは、好きです、この4文字を聞けば告白が終わるはずだった。
そう、
何故終わらないのか……答え、目の前の彼女からしたら、今、一番来ないで欲しい、邪魔者が入ってしまったから