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コンビニ強盗
梅野飴
文芸・その他ショートショート
2024年11月30日
公開日
1,283字
連載中
強盗とバイトの一大スペクタクル大サスペンス

第1話

強盗「動くな。強盗だ」


バイト「店員です。動きます」


強盗「張り合うな」


バイト「そしてあちらに見えますのが店長です」


強盗「紹介しなくていい」


バイト「どのようなご用件ですか?」


強盗「金を出せ」


バイト「今月あまりシフトにはいれてなくて」


強盗「お前の金じゃねえよ」


バイト「店長だって貧乏人ですよ?」


強盗「店の金をよこせって言ってんだよ」


バイト「すみません。僕、まだ大学生なのでこういうの慣れてなくて」


強盗「強盗され慣れてる方が怖いよ」


バイト「この場合、マナー的にいくらくらい包むものなんですか?」


強盗「強盗相手にマナーいらないから」


バイト「非常識だと笑われてしまいませんか」


強盗「どう考えても非常識なのはこっちだからいいんだよ」


バイト「お強盗様、そんなに自分を卑下しないでください」


強盗「強盗を持ち上げるな」


バイト「とにかくお金が必要なんですね」


強盗「そうだ。このカバンに詰めろ」


バイト「エコポイント付けときますね」


強盗「マイバックじゃない」


バイト「お箸は一膳ですか」


強盗「いらない」


バイト「スプーンは」


強盗「いらない」


バイト「せめておしぼりくらい貰って行ってくださいよ」


強盗「なぜそんなにサービスがいい」


バイト「僕の死んだおばあちゃんも強盗だったんです」


強盗「嘘だろ」


バイト「あっ、そのナイフおばあちゃんのと一緒だぁ」


強盗「おいやめろ。凶器にノスタルジーを感じるな」


バイト「これ仏壇にお供えしてもいいです?」


強盗「いいわけないだろ」


バイト「すみません。強盗さんの気持ちも考えずにはしゃいじゃって」


強盗「おばあちゃんの気持ちを考えろよ」


バイト「お詫びにレジのお金いくらか持って行ってください」


強盗「最初からそのつもりで来てんだよ」


バイト「いくら欲しいです?」


強盗「全部よこせ」


バイト「分け前折半にしませんか?」


強盗「なんでお前も取ろうとしてんだよ」


バイト「ごめんなさい。血が騒いじゃって」


強盗「遺伝なんだな」


バイト「今レジには2千万くらいしかないんですけど」


強盗「大当たりじゃねえかこの店」


バイト「あ、ごめんなさい2千円の間違いでした」


強盗「おい大丈夫かこの店」


バイト「どうします?潰れかけの店のなけなしの2千円持っていきます?」


強盗「強盗に罪悪感で攻めるな」


バイト「店長の今月の食費なんで気にしなくていいですよ」


強盗「店長本当に貧乏なんだな」


バイト「独身で酒もタバコもやらない真面目なギャンブル狂なのにどうしてなんでしょうね」


強盗「理由明白だろ」


バイト「そんな可哀想な店長の最後のお金を奪って行きますか?それとも人間やめますか?」


強盗「なんで強盗やめた方に地獄ルートが待ってんだよ」


バイト「早く決めないとマッポが来ちまいますよ」


強盗「またおばあちゃんの悪い影響が出てるぞ」


バイト「この店長の食費……いや、軍資金を奪う覚悟があなたにはありますか?」


強盗「ちょっと迷ってたけど軍資金なら気兼ねなく奪うわ。早くよこせ」


バイト「あっ……ごめんなさいやっぱり千円でいいですか?」


強盗「なんでだよ」


バイト「割り切れるのって縁起悪いって言いますよね」


強盗「強盗相手にマナーはいらないから」


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