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第25話 学園へ


ライグリードを部屋から追い出し、時刻を見ると起床時間の三十分前だった。怜はこのまま起きようと決め、学校へ行く準備をする。



〈学校には図書館があるはず。そこで調べてやるんだから〉



ライグリードに抱きしめられた感覚がまだ残っており、怜は赤くなりそうになった自分の両頬を叩いた。



〈あいつは、女たらしでナルシストで変態よ。あいつの雰囲気に流されたら身を滅ぼすに決まってる〉



怜は自分の好きな服装に着替えて、血を少しだけ飲む。


登校時間になり、怜はヘブンと馬車へ乗り込んだ。


ヘブンも軍服とは違い、灰色のVネックの厚手のシャツに、黒いピッチリとしたパンツと黒いブーツを履いている。



「私たち大学デビューみたいな感じね!」



笑う怜に、ヘブンは腕を組んだまま外を眺めた。



「魔界はそう甘くない。人間族は特にな。気を付けて過ごすんだ」


「わかってる。覚悟してるわ」



ウァプラ学園に着くと二人は学園の広さに驚いた。


黒と金を基調とした石で出来たゴシック調の重苦しい建物がいつも聳え立っている。グランドも広く、生徒たちはがやがやと賑わっていた。



「まるで学園都市ね……お城みたい」



二人は金色の城門をくぐり、理事室へと向かう。理事室は一番高い塔の最上階にあり、二人は学園にいる魔族たちにチラチラと見られながら、部屋へ向かう。


ヘブンが重苦しいドアをノックした。ドアノブを見ると、骸骨の形をしている。



「はいはいどーぞー」



鼻の抜けたような返事が聞こえ、二人が部屋に入ると、理事長は机にすがって、読んでいた本を閉じた。



「先週入学式を終えたばかりだから間に合って良かったね。すぐに追い付くはずだよ。あぁ、紹介が先だよね。私はこの学校の理事長のメイシスだ」



理事長は人間の姿をしているが、耳は大きく尖っていた。ヘブンよりもつり目で目が開いているのか閉じているのかわからない。


そして何より、腕が以上に長く、足元まで手が伸びていた。ヘブンがお辞儀をする。



「ヘブンです。こちらは日比谷怜」



怜も挨拶をする。



「日比谷怜です。よろしくお願いします」


「君が怜ちゃんね。うちは人間族でも大歓迎だから大丈夫だよ。命の保証はするけど、耐えられるかは別だがね」



メイシスはにこやかに振る舞うと、二人に紙を渡す。



「今から君たちはそれぞれのクラスで勉強してもらうよ。逆ピラミッド型になってるよね。貴族クラスが一番上で、気の毒だけど人間族が一番下なんだ。人数が少ないのもあるが、知識の幅や強さのせいもあってね。でも優秀な成績で卒業する人もいたから大丈夫だよ」



怜は苦笑いで返事をする。



「それに、君のその逆十字からは素晴らしいオーラがでているね」



メイシスは目を光らせると、怜の腕が共鳴するように赤くゆっくり点滅した。



「まだその力を充分発揮できてないんだろう?ここなら発揮できる授業があるから、ぜひ勉学に励んでほしい。よぉし、話は以上だ。出てよろし」



二人はお辞儀をして、部屋を後にする。点滅が消え、怜は自分の腕を擦った。



「私は落ちこぼれクラスね。ヘブンはどこなの?」


「武道派クラスだよ。武道だけ秀でてる魔族たちのクラスだ。授業が終わったら、昼休みにまた会おう。何かあったらライグリード様に殺されるからな」



怜はわかったと言うと、二人はその場から別れ、地図を見てそれぞれの教室を探した。



***



「まずいなぁ。道に迷っちゃったよぉ」



異形な魔族たちが自分を見てくる。怜はひとりぼっちになった気持ちになり、涙目で広い学園をさ迷う。



「聞いてみるとか? でも、人間族だってばれたらまずいよね……どうしよう」


「あなた新入りの人間族?」



あるはずの腕に大きい翼が生えており、足は人間の足ではなく、鳥の足でできていた。そんなグラマラスな女性三人が、怜を取り囲んだ。


怜はこの三人がハーピーだとわかった。



「あ、あの……そうです。道に迷ってしまって」



ハーピーの一人が怜から地図を引ったくると、それをビリビリに引き裂いた。



「これでわかるんじゃなぁい?」


「やだぁ。意地悪なんだからさ」



三人はゲラゲラと笑い出す。



「あんたの場所はここじゃないわ。さっさと道を開けなさいよ邪魔」



ハーピーが怜を突き飛ばすと、後ろにいた魔族に当たってしまう。


尻餅をつきそうになるが、後ろにいた魔族が怜の右腕を掴んで支えた。



「大丈夫?」



その魔族は人間の姿をしていた。


異形な部分は特になく、ただとても端正な顔立ちをした男性だ。怜は目が合うと、たじたじになって、体勢を整えた。



「ご、ごめんなさい」



彼は爽やかに微笑むと、風が舞った。



「大丈夫だよ。それよりも君道に迷ったんだよね」


「そうなの……地図も破かれちゃって、人間族のクラスってどこかわかる?」


「良かったら、案内するよ。ちなみにここは逆方向さ」



怜は恥ずかしくなり頬を赤らめる。彼はこっちと怜を誘導した。






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