「――みなさん、おはようございます。本日、女性のお客様お一人から宿泊のご予約を頂いています。一週間ご滞在の予定です」
翌朝のミーティングで、わたしはサプライズとしてマイカ先生からの宿泊予約についてスタッフのみんなに打ち明けた。ここで知っているのは、今日も早番でシフトに入っているコンシェルジュの陸さんだけだ。
「えっ、一週間も……。そんなロングステイのお客様は珍しいですね。ですが、ご予約名簿には載っておりませんが?」
支配人の大森さんが首を傾げた。
「ごめんなさい。昨日、わたしの携帯に直接かかってきたもので。――お客様のお名前は柳井マイカ様。職業は小説家。わたしの同業者です」
「えっ、作家先生が一週間ご滞在って……。もしかしてカンヅメってやつですか?」
二十代後半の男性ベルスタッフの
「はい、そうです。当ホテルでそのような作家先生をお迎えするのは初めてですが、先生が心地よく滞在され、執筆を進められるよう、スタッフ一丸となって精一杯のおもてなしをしましょう」
「「「「「「はいっ」」」」」」
「チェックインは午後二時のご予定です。女性の一週間のロングステイですから、きっと荷物も多いと思います。そこで津田さん、彼女の担当ベルスタッフはあなたにお願いしたいんですけど。いいですか?」
通常、女性のお客様には女性のベルスタッフがつくことが望ましいのだけれど。長期滞在の場合は荷物が多く、女性には重労働となるので、例外的に男性が担当することもあるのだ。
「はい! 僕でよければ任せて下さい!」
「頼もしいですね。じゃあ、よろしくお願いします。お部屋は二一〇号室が空いていますね。そこへお通しします」
「分かりました」
というわけで、多分だけれど悩める女性作家・柳井マイカ先生をお迎えする体制は万全に整った。
* * * *
――午後二時。肩からパンパンに荷物の詰まったボストンバッグをかけ、大きなスーツケースを引いてマイカ先生が当ホテルへ到着された。まあ、一週間も滞在されるんだから荷物もそれなりに多くなるだろう。
フワリとしたシフォン素材のブルーのワンピース姿の彼女は、茶色に染めたセミロングの髪をなびかせ、整った顔立ちにはオレンジ系のメイクが施されている。……うん、やっぱり美人だ。子供っぽい顔立ちのわたしとは大違い。
「――マイカ先生、ようこそ、〈ホテルTEDDY〉へ!」
あたしは他のお客様同様、とびっきりの笑顔で彼女をお迎えした。マイカ先生とはよく知った間柄なので、いつもの堅苦しい自己紹介や挨拶は
「こんにちは、ハルヒちゃん。今日から一週間お世話になります。わぁ、やっぱりハルヒちゃんはスーツ姿がよく似合ってる♪」