「おねがいです。どうか中に入れてください。これからは心を入れ替えて、真面目に働きますから」
凍てつく寒さの中、キリギリスは必死に哀願して蟻の家のドアを叩きますが、応答はありません。やがて力尽きてその場にへたり込み、息絶えてしまいました。
「声が聞こえなくなったな」
「そろそろ死んだか?」
戸の反対側で聞き耳を立てていたアリたちは、待っていましたとばかりに鍵を開け、キリギリスの骸を家の中へと運び込みました。
「生肉なんて、ずいぶん久しぶりね」
「ママー、今夜はごちそうだね!」
思いがけない天の恵みに、巣内はわっと沸き返りました。
教訓:誰かに助けを求めるのは難しい。誰なら助けてくれるか見極めるのはもっと難しい。