突然だが、この世界の魔法について話をしたいと思う。
この世界に住む、おおよそ全ての人が魔法を使うことができる。ただし、魔法のみで生計を立てられるような人間は思いのほか少ない。
その原因は二つ。「魔力量」と「魔法適性」だ。
魔力量は読んで字のごとく、その人の持つ魔力の量である。魔力量の
身体の成長とともに多少増える可能性はあるが、大きく変わるものではないらしい。
それに対し、魔法適性はその人に適性のある魔法属性のことだ。適正外の魔法を使おうとすると、消費魔力が増えすぎて発動すら難しくなる。
ほとんどの人は四大属性と呼ばれる火・水・木・土のどれかだが、他にも光や闇などの希少属性が存在する。
この二つは貴族・平民問わず、七歳以上であれば誰でも教会で調べてもらうことができる。
もちろん公爵家の跡取りである
これがファンタジー小説のチート主人公なら「
水をゼロから創るのって意外と魔力消費が激しいのに、水の龍なんざ創れてたまるか。せいぜい、水の球をぶつけて相手をびしょ濡れにするくらいだ。
あ、そういえばゲームでもやってたなコイツ。
ちなみに『剣と魔法と
長々と語ったが、まぁ要するに俺は剣だけでなく魔法も才能がないということだ。
だが才能がなかったとしても、俺は強くならなければならない。剣も魔法も前世の知識さえも、使えるもの全てを組み合わせて何かできることがあるはず。ずっとそれを考えていた。
◇
「イアイ、ですか?」
「そう、居合」
修練場でヘリオトロープと向き合う。彼女の手には訓練用の木剣。俺の手には先ほどゲットした刀が握られている。
「
本家本元の居合とは色々異なるだろうが、重要なのは一つの動作を突き詰めることだ。
ただ速く抜き、ただ鋭く斬る。不器用な俺にできるのはそれしかない。「隙を生じぬ二段構え!!」など夢のまた夢だろう。
「それは……実戦に使えるとは思えないのですが」
ヘリオトロープの
イメージすら完全にフィクション任せ。専門家が見れば激怒間違いなしである。
「まぁまぁ。使えるかどうかは試してみればわかる。恐れずしてかかってこい!」
左手で
為せば成る為さねば成らぬ何事も、という言葉もある。この異世界に居合というものが(多分)ない以上、自分でやってみるしかないのだ。
迷わずカミナリ一閃、つまらぬものをおろろと斬るのみ!
「恐れなど毛ほどもありませんが……では、参ります」
メイド服(しかもロングスカート)とは思えない鋭い踏み込みで斬りかかってくる。上段からの振り下ろし!
グッと全身に力を込める。そして、
「「あ」」
水圧で一気に鞘から飛び出した刀身は……俺の手からも飛び出し、すっ飛んで行った。抜○斎も驚きの新感覚居合である。
「あべし!!」
そして脳天に強烈な一撃を食らい……そのまま意識がブラックアウトした。
後から思えば、なぜ練習もなしにいきなり実践しようと思ったのか。まぁ……初めて刀を持ってテンション上がってたんだろうなぁ。