すべての答えが見つかった。
美亜と同居して、触れあうようになってすぐ、他の女に反応しなくなった理由。
好きだったんだな。美亜のこと。
健に言われたときはそんな意識はなくて驚いたけど、きっと深層心理のどっかで美亜を思っていたんだ。
…それを見抜く健が不気味だが。
まぁ、きっかけをくれたからいいとしよう。
それになんだ?…この体の軽やかさ。
好きな女を抱くっていうのは、こんなに気持ちいいのか…今まで、どれほどアホな遊びを繰り返していたのかと思う。
美亜を知ったら、もう他の女なんていらないとすら感じる。
同じ女というカテゴリーの中で、美亜とそれ以外に分かれると言ってもいいくらい。
俺はこの先の人生、女は美亜だけでいい。
結ばれた日、俺は本当に美亜を離せなかった。
今までなら、どんなに可愛くて好みのタイプのナイスバディの女でも、1回で十分満足したのに。
美亜は全然ダメだった。
何度抱いても愛しさと切なさが湧き上がってきて、それが体にダイレクトに伝わって…。
…さすがの俺も体力を使ったと感じるんだから、美亜も相当疲れたと思う。
最後の方はもう失神するように眠ってしまって…さすがにやりすぎたと反省した。
相手が変わるだけで、自分の欲がこんなに深くて強くなるなんて、初めて知った。
ホッとしたのは…予告しておいたからか、翌日休みを取っていたこと。
抱き潰されて眠った美亜が目を覚ましたのは、もう昼過ぎで…いつもみたいにポワン…とした顔で抱きついてきた。
今まで関係を持った子だって、どの子も可愛いと思ってたし好きだと思ってたはずだけど、その時の好きって気持ちとは全然違ったんだと今さら感じる。
だから、心からの気持ちを伝えようと決めたんだ。
ちゃんと身辺整理してから。
「本当に、ごめんね」
それなのに。
あの日俺は、どうして謝罪されたんだ?
………
その意味がわかったのは、翌日の夕食時だった。
「嶽丸…携帯鳴ってるよ?」
食事中、俺の携帯が振動して、先に気づいた美亜が声をかけてくれた。
断って出てみると…たまに連絡を取り合っていた女から。
チラッと美亜を見て、さりげなくベランダに出る。
「わり。多分もう会えないと思うから、俺の連絡先消して」
「え…なんで?…私、なんかやらかした?」
ゴチャゴチャ言う女を上手になだめて電話を切って部屋に戻ると、美亜が明らかに気にしてる様子。
ふふん…!
「…なに?遊びのお誘い?」
「気になる?」
「え?うん…まぁ」
やっぱり美亜も女だな…と、こういうとき思う。
やっぱり体の関係になると、隠しきれない本音。
そりゃ…好きな相手は独占したいもんだ。
「俺を束縛したいなら…」
「たまには遊んだ方がいいよ」
は?
束縛したいなら、素直にそう言いな…と言おうした。
なに遊べって…そんなおススメ、女の子に言われたことない。
関係を持てばどの子も皆、俺を束縛したがった。独占したくてしたくて、俺をぎゅうぎゅうに縛りつけようとするのに。
「俺を遊びに行かせていいの…?」
つい。真顔で聞いてしまう。
「うん…私は…この先、っていうか…しょ、将来的な約束はできないから…」
なんだそれ。
この先も2人の関係を続けることができるかは保証できないってことか?
「…ヤリ捨て…?」
「違うよ!…その、嶽丸に癒されたいとは思う。…っていうか、私を癒せるのは嶽丸だけだよ。今のところ」
癒すってのは、体の関係のことだとして……今のところってなんだ?
そして、2人のこの先を保証できないって…
もしかして、俺はアレか?!
「セフレ…ってことか」
初めて真剣交際を望む女にセフレ認定、セフレのお誘いを受けるってなんだこれ。
ため息をつく俺に、美亜は上目使いで小さく「ゴメン」と言う。
はぁ…可愛い。
「…女の方から先に、セフレ認定されるのは初めてで戸惑いますが、それじゃそういう事でOKです」
「…うん」
考えてみれば、こんな風にお互い同意のもと、セフレとしての関係を築くなんて初めてだわ。
でもまぁ、これが美亜の誠意なのだとしたら、俺もある程度ハッキリさせておこう。
「俺はいつでも美亜を甘やかして癒やしてあげる。縛られたくないなら縛らないし、俺も自由でいられるなんてラッキーだわ」
…ほんとはちょっとがっかりだけどな。
「ただし…1つだけ、約束して欲しい」
これだけは譲れないこと。
…でもこれを呑んだら、付き合ってるのとそんなに変わらないんだけど。
「美亜を癒すのは俺だけ。他の男に癒されたくなったら、関係は解消」
俺の言葉を聞いて、美亜はふいに視線を上げた。
「わかった。私は…嶽丸だけに癒してもらう。でも…先の約束ができない関係を長く続けるのもよくないよね」
「…え?」
…なんだよ…また斜め上に来たよ。
「私の誕生日までにしよう。12月22日。その日でこの関係は解消。…ここから、出て行って欲しい」
「…っ?!」
期限をつけてくるとは…完全に想定外…。
そんな風に、簡単に切れるくらいにしか…俺のことを見ていないってことかよ。
「本当にごめん」って…そういう意味か。