目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報
2章 第4話 Side.嶽丸

すべての答えが見つかった。

美亜と同居して、触れあうようになってすぐ、他の女に反応しなくなった理由。


好きだったんだな。美亜のこと。

健に言われたときはそんな意識はなくて驚いたけど、きっと深層心理のどっかで美亜を思っていたんだ。


…それを見抜く健が不気味だが。

まぁ、きっかけをくれたからいいとしよう。


それになんだ?…この体の軽やかさ。


好きな女を抱くっていうのは、こんなに気持ちいいのか…今まで、どれほどアホな遊びを繰り返していたのかと思う。


美亜を知ったら、もう他の女なんていらないとすら感じる。

同じ女というカテゴリーの中で、美亜とそれ以外に分かれると言ってもいいくらい。


俺はこの先の人生、女は美亜だけでいい。



結ばれた日、俺は本当に美亜を離せなかった。


今までなら、どんなに可愛くて好みのタイプのナイスバディの女でも、1回で十分満足したのに。


美亜は全然ダメだった。

何度抱いても愛しさと切なさが湧き上がってきて、それが体にダイレクトに伝わって…。


…さすがの俺も体力を使ったと感じるんだから、美亜も相当疲れたと思う。


最後の方はもう失神するように眠ってしまって…さすがにやりすぎたと反省した。


相手が変わるだけで、自分の欲がこんなに深くて強くなるなんて、初めて知った。


ホッとしたのは…予告しておいたからか、翌日休みを取っていたこと。


抱き潰されて眠った美亜が目を覚ましたのは、もう昼過ぎで…いつもみたいにポワン…とした顔で抱きついてきた。



今まで関係を持った子だって、どの子も可愛いと思ってたし好きだと思ってたはずだけど、その時の好きって気持ちとは全然違ったんだと今さら感じる。



だから、心からの気持ちを伝えようと決めたんだ。


ちゃんと身辺整理してから。






「本当に、ごめんね」




それなのに。

あの日俺は、どうして謝罪されたんだ?


………


その意味がわかったのは、翌日の夕食時だった。



「嶽丸…携帯鳴ってるよ?」


食事中、俺の携帯が振動して、先に気づいた美亜が声をかけてくれた。


断って出てみると…たまに連絡を取り合っていた女から。


チラッと美亜を見て、さりげなくベランダに出る。



「わり。多分もう会えないと思うから、俺の連絡先消して」


「え…なんで?…私、なんかやらかした?」



ゴチャゴチャ言う女を上手になだめて電話を切って部屋に戻ると、美亜が明らかに気にしてる様子。



ふふん…!



「…なに?遊びのお誘い?」


「気になる?」


「え?うん…まぁ」


やっぱり美亜も女だな…と、こういうとき思う。


やっぱり体の関係になると、隠しきれない本音。

そりゃ…好きな相手は独占したいもんだ。



「俺を束縛したいなら…」

「たまには遊んだ方がいいよ」



は?


束縛したいなら、素直にそう言いな…と言おうした。


なに遊べって…そんなおススメ、女の子に言われたことない。


関係を持てばどの子も皆、俺を束縛したがった。独占したくてしたくて、俺をぎゅうぎゅうに縛りつけようとするのに。



「俺を遊びに行かせていいの…?」



つい。真顔で聞いてしまう。



「うん…私は…この先、っていうか…しょ、将来的な約束はできないから…」



なんだそれ。

この先も2人の関係を続けることができるかは保証できないってことか?



「…ヤリ捨て…?」


「違うよ!…その、嶽丸に癒されたいとは思う。…っていうか、私を癒せるのは嶽丸だけだよ。今のところ」


癒すってのは、体の関係のことだとして……今のところってなんだ?


そして、2人のこの先を保証できないって…


もしかして、俺はアレか?!



「セフレ…ってことか」



初めて真剣交際を望む女にセフレ認定、セフレのお誘いを受けるってなんだこれ。


ため息をつく俺に、美亜は上目使いで小さく「ゴメン」と言う。



はぁ…可愛い。



「…女の方から先に、セフレ認定されるのは初めてで戸惑いますが、それじゃそういう事でOKです」


「…うん」


考えてみれば、こんな風にお互い同意のもと、セフレとしての関係を築くなんて初めてだわ。


でもまぁ、これが美亜の誠意なのだとしたら、俺もある程度ハッキリさせておこう。



「俺はいつでも美亜を甘やかして癒やしてあげる。縛られたくないなら縛らないし、俺も自由でいられるなんてラッキーだわ」



…ほんとはちょっとがっかりだけどな。



「ただし…1つだけ、約束して欲しい」



これだけは譲れないこと。

…でもこれを呑んだら、付き合ってるのとそんなに変わらないんだけど。



「美亜を癒すのは俺だけ。他の男に癒されたくなったら、関係は解消」



俺の言葉を聞いて、美亜はふいに視線を上げた。


「わかった。私は…嶽丸だけに癒してもらう。でも…先の約束ができない関係を長く続けるのもよくないよね」


「…え?」


…なんだよ…また斜め上に来たよ。


「私の誕生日までにしよう。12月22日。その日でこの関係は解消。…ここから、出て行って欲しい」


「…っ?!」


期限をつけてくるとは…完全に想定外…。


そんな風に、簡単に切れるくらいにしか…俺のことを見ていないってことかよ。



「本当にごめん」って…そういう意味か。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?