「ついにアエリアを見つけた。僕たちが見つけたんだ!」
タケルは興奮して叫んだ。アエリアの都市が目の前に広がっている。あの日、偶然目にした時とは、また違った感情が溢れ出てくる。
タケルとユウは歓喜に沸いた。しかし喜びも束の間、古代都市アエリアは、すーっと霧に溶けるように消えていった。辺りが暗闇に包まれていく。
「これは一体……?」
タケルとユウは不安げに顔を見合わせた。
暗闇の中に取り残された二人は、押しつぶされそうになる心を抑え込んだ。怖がる必要はない。アエリアは確かに存在する。
やがて暗闇に目が慣れ、ぼんやりと光が浮かび上がった。それは遠く、薄い霧の中に浮かぶ微かな灯りだった。タケルとユウはその光に向かって進んだ。
霧が晴れるにつれて、再びアエリアが姿を現した。今度は幻なんかではない。紛れもなく古代都市アエリアだ。
「ちょっと待って。何か変」
前に進もうとするユウをタケルが制した。
タケルは門の前に立ち、恐る恐る辺りを見渡した。確か、あの塔は崩れかかっていたはずだ。どうして完成しているのか……。
塔だけではない。アエリア全体が姿を変えている。この都市は生きているとでも言うのだろうか。
「本当にここ?」
ユウが不安そうに尋ねた。アエリアが静寂に包まれている。人の気配がまるで感じられない。
「そのはずだけど」
明滅していた地図の記号と同じ記号が門に刻まれている。ここで合っているはずだ。
二人は勇気をふり絞って、アエリアに足を踏み入れることにした。閉じられていた門が開いているのだ。僕らは拒絶されていない。
アエリアの内部は外の静寂とは対照的だった。石造りの建物や彫刻が立ち並んでおり、壮大な景色が広がっている。どれも長い年月を伺わせるものだ。
「タケル、これを見て。何か書いてある」
ユウが石板を眺めて言った。
「これが時を織り成す都市、アエリア……」
僕らが計画していた冒険の一幕が石板に刻まれている。それらはまだ経験していない出来事だ。
タケルとユウはアエリアの不思議な力に圧倒された。
崩れかけていた塔が元に戻り、閉じられていた門が開いた。そして今度は未来の出来事が刻まれた石板を目にしている。やはりアエリアはただの都市ではなかった。ここでは過去も未来も関係がない。時間を超越した都市なのだ。
アエリアの存在を受け入れるには、時の流れに身を委ね、未来への可能性を信じるしかない。どれだけ考えても答えには辿り着けないだろう。だが、この都市が教えてくれることがあると信じることができれば、新しい道を見つけることができるはずだ。
タケルとユウは互いにうなずき合い、アエリアの奥へと歩を進めた。足元に広がる幻想的な風景に心を奪われながら進んでいくと、朝焼けでオレンジ色に照らされた崖が視界に入った。崖には石窟らしきものが見える。
まるで何かが僕らを呼んでいるような気配が漂っている。そう感じながら、二人は石窟へと向かった。
石窟の中には台座と思われるものがあり、その上で光り輝いているものは水晶のようだった。ここはアエリアにとって重要な場所に違いない。
石窟の中に入ると、僕らは天井を見上げた。
太陽の光が結晶に当たって乱反射し、天井に星々を描いている。
タケルは星座の配置をじっと見つめ、その意味を探った。星座が描かれた理由が単に美的なものであるはずがない。アエリアの人たちも地球に住む人たちと同じように、星座に何らかの価値を見出したはずだ。きっと何かの想いが込められている。
僕らがこの場所に辿り着いたのも、きっと意味があるのだ。
タケルは惹きつけられるように結晶に手を伸ばした。表面に触れた瞬間、結晶が一層強く輝き始めた。星々がゆっくりと動き出し、周囲の空間に広がっていく。
これは、あの日見た光景と同じだ……。
しばらくの間、僕らは星々の動きを見つめた。見たことのない現象や理解できないパターンが数多く含まれている。
「これまでの宇宙の歴史を再現しているんじゃないかな」
ユウが言った。
アエリア人たちも星座を通して知識を記録し、宇宙の法則を知ろうとしたのだ。宇宙の記憶がここに刻まれている。
「これを理解するには時間がかかりそうだね。だけど、ここにある情報は、きっと僕たちの未来を豊かにしてくれるはずだ」
タケルは真剣な表情で言い、そして続けた。
「きっとアエリアは僕たちの過去と未来を繋ぐ鍵になる。僕たちがどこから来て、どこへ行こうとしているのかを教えてくれようとしているのだと思う」
石板には僕たちの未来の出来事が刻まれていた。だったら人類の、いや宇宙全体の未来のことが刻まれていてもおかしくはない。
タケルとユウは再び結晶に目を向け、その輝きの中に未来への希望を見出した。