「めちゃくちゃ可愛い! それに絵うますぎ! 林太郎はできない事とかあるの?」
「あるよ。人の気持ちが分からないところかな。人の気持ちが分かる人になりたい⋯⋯」
彼は兄嫁を傷つけたことを気にしているようだ。
彼は見た目とは異なり繊細な人なんだろう。
そして、他人を傷つけたくいと願う優しい人だ。
「林太郎、ほとんどの人が人の気持ちを分かった気になってるだけだよ。それに人をわざと傷つける人もいるのに、そんな風に考えられるあなたは十分素敵な人」
私は雅紀が私の考えていることは手に取るようにわかると、私の理解者を気取りながら裏切ったのを思い出した。
「んんぅ」
気がつけば私の隣に回り込んだ林太郎にまたキスをされていた。
彼のキスが私の知っているものとは違くて、気持ち良すぎて訳がわからなくなる。
(クラクラして何も考えられなくなりそう⋯⋯)
私は怖くなって思い切り彼を突き放した。
「何でキスするの? アメリカではそれが普通?」
「きらり、元彼のこと考えてたでしょ。これから、きらりが元彼のことを考える度にキスすることに決めたから」
恐ろしい決定事項を発表されて動揺した。
「人の心分からないとか言いながら、実は心を読めるの?」
私は林太郎の気持ちこそ知りたい。
彼は私の今まで生きてきた常識では理解できない人だ。
「心なんて読めないよ。きらりの気持ちいつも知りたいと思ってる。きらり、アメリカをどんな国だと思ってるんだよ。行ったことないの?」
「グアムには行ったことあるよ。友達の結婚式で⋯⋯ハワイには行きそびれたかな」
私は雅紀にハワイのアロハチャペルで結婚式を挙げるのが夢だと伝えてたのを思い出した。
それなのに、彼はそこでルナさんと結婚式を挙げた。
私は気がつくとまた林太郎にディープキスをされていた。
私はそっと彼を引き剥がしながら、震える声で伝えた。
「確かに今元彼のこと思い出したのは認めるけど、ディープキスはダメだよ。せめて軽いキスにして」
「気持ちいいから、ダメなんだよね」
彼はそういうと軽いキスをして私から離れた。
(どうしよう、これも気持ちいい⋯⋯)
彼に全てを見透かされているようで、私は恥ずかしくて仕方がなかった。
「じゃあ、俺と結婚してハワイで挙式しよっか。ハワイで結婚式したいんでしょ」
冗談のような提案に困惑した。
(私のこと好きじゃなくなったって、告白を撤回したばかりじゃない!)
「結婚式なんて一生に一度のものは、本当に好きな人とするべきだよ」
私の言葉に明らかに彼が不機嫌になるのが分かった。
私の方こそ彼の心が読めれば良いと思った。