「夏休みの宿題やってる?」
「全部終わった」
「マジかよすげえなお前」
「みんな大体終わってると思う」
「やっぱり計画的にやってたの?」
「そういうわけじゃないけど」
「俺結構やばいんだよね……間に合うかなあ」
「無理だと思う」
「おま、なんでそんなこと言うんだよ!まだ分かんねえじゃねえか」
「だってこの校長の話終わったら始業式終わりだよ」
「そんなことねえよ。始業式終わって家に帰るまでが夏休みだろ」
「始業式始まるまでが夏休みだよ」
「クソ……こんなに焦ることになるならちゃんと毎日やっておけばよかった!」
「その手の嘆きは昨日済ましとくんだよ普通」
「あともう少しだったのに」
「どれくらい進んでるの?」
「算数ドリル20ページと漢字ドリル15ページと読書感想文とプリント」
「が?」
「終わってない」
「何も終わってないねすごいね」
「絵日記はちゃんと毎日つけてたから全部終わってるし」
「どうしてその几帳面さがあってこんな事態に」
「あと自由研究も終わった」
「なにやったの」
「土星の公転周期が及ぼす地球への影響について調べた」
「なにやってんの」
「夏休み浮かれて夜遅くまで遊んじゃったからなあ」
「日が長いからね。外で遊んでるといつの間にか夜になってるよね」
「クラブにハマりすぎた」
「なにガチ夜遊びしてんの」
「最近ハコのオーナー主催のイベでよく皿回してっからさ」
「なに言ってんの」
「なあどうしよう……俺このままだと夏休みの宿題終わらないまま新学期を迎えることになっちゃうよ」
「もう迎えてんだよ」
「俺捕まっちゃうのかな」
「むしろ夏休み中よく補導されなかったね」
「なあ協力してくれないか?」
「どうしたらいいの?」
「お前の力で俺の夏休みを引き延ばしてくれ」
「そんな概念を捻じ曲げるような力は持ってないよ」
「こんなに頼んでもダメか?」
「さじ加減で断ってるわけじゃないから」
「クッ……お前が頼みの綱だったのに」
「過大評価だよ」
「こうなれば俺一人で夏休みを伸ばしてみせる!」
「どうやって?」
「土星の公転周期を調べてる時に気づいたんだけどさ、重力と時間には面白い関係性があって、それを自在に操れば時間を縮めたり伸ばしたりも多分可能なんだよ。この始業式が終わるまでにその方法を見つけ出せば……!」
「そう。頑張ってね」
「よし!やるぞ!」
「校長の話終わったよ」