朝起きると、目覚まし時計の秒針がぐるぐる好き勝手に回っていた。
「どうしたんだい?」
「かっ飛ばすぜい」
会話にならない。
短針も長針も正しい時間を指しているのでさほど問題はない。
捨てるほどでもないか。
俺はそのまま会社に行った。
帰ってくると、ものすごい勢いで回っている。
こちらの目も回りそうだ。
これはいかん。
俺は正座し、秒針に説教をした。
「いいか。お前は秒針だ、1分間に1回転するのが仕事だ。分かったな?」
秒針はふて腐れて聞いていた。
次の日の朝起きると、秒針はさらにすごいスピードで回っていた。
「パラリラーパラリラー」ご機嫌だ。
よく見ると右方向に100回転した後、左方向に99回転している。
「1分間に1回転してるぜ。最高だろ? パラリラー」
……うん、やっぱり捨てよう。