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第6話 登校と修羅場


 高校生活の中で、女の子と一緒に歩いて登校するなんて、普通の男の子なら一度は夢見る光景だよな。今、まさに俺はその夢を叶えている。


「な、なあ……椿芽」と、隣を歩く椿芽に声をかけると、「何かな……悟くん?」と、こちらを見ずにスタスタ歩く椿芽が返してきた。なんだかちょっと機嫌悪そうだな。


「こ、この状況って、何なのかな?」


「私に聞く?」


「ご、ごめんなさい……」

 この状況がなければ……俺たちの少し先を歩いてる2人組、1人は響、もう1人は金髪でショートボブの女の子。どういう経緯でこうなったのかはわからないけど、その金髪の子が響と腕を組んで歩いてるのを、椿芽が睨みつけてる。

 (これがハーレム主人公の実力か……)




  俺は今朝の待ち合わせのことを思い出す。学校の最寄り駅にちょっと早く着いて、2人が来るのを楽しみにしてたんだよな。

 (やっぱ友達ができるって嬉しいもんだ。)

 ぼんやり考えてると、背後から響の声が聞こえてきた。


「ご、ごめん悟!待たせた!」


「大丈夫、俺も今来たところだk……」

 振り返ると、言葉を失う。響の隣には知らない女の子が腕を組んでて、その様子をジトっと見てる椿芽がいた。

 (椿芽からすっごいどす黒いオーラを感じる……)



「なんだこの状況!?」


 思わずツッコむ。


「あなたが昨日響から聞いた悟ですね!」

 腕を組んでいた金髪の女の子が、キラキラした目でこっちを見てきた。

 (こりゃまた美少女がきたなあ)


「ああ……そうだけど……」


 思わず後ずさる。戸惑いが一気にやってくる。


「響から聞きました!あなた、すっごい変な人なんですよね!」


 (変な人……)

 ちょっとショックだ。変なキャラは作ってはいたけど。


「変じゃねーって、ちょっと面白い痛いやつなだけだよ!」

 それはそれで、ちょっと傷つく。


「よせやい……そんな褒められると照れるぜ。」

 痩せ我慢で耐える。


「おぉ……これで照れるとは変人だ。」

 泣いていいですか?泣いてもいいよね!


「おう、それより誰だい、このじょーちゃん?」

 俺は響に聞くと、その前に女の子が声を出す。


「ハッ!失礼しました!私棚木アリスたなきありすって言います!よろしくです、悟!」


 アリスはビシっと敬礼ポーズを取って、俺に挨拶してきた。

 すごい勢いで自己紹介してきたな。


「俺のいとこで、昨日からうちに居候してるんだ。」

 響は苦笑いしながら経緯を説明してくれた。

 (そんなバカな……)

 こりゃまたアニメみたいな展開だな。昨日の俺の認識の甘さに絶望した。

 (こりゃ予想以上に過酷な試練になるぞ……)


「で、でも昨日はいなかったじゃないか?」


「昨日もいましたよ!響たちとは別のクラスだったから、授業が終わってから響たちのクラスに向かったんですけど、その時にはもう居ませんでした……」

 アリスはしょんぼりしてる。


「私、大好きな響がいなくて寂しかったです。1人で響の家に帰って琴音さんと一緒に部屋の荷造りしてました……」

 琴音さん?響のお母さんだろうか……よくわからないけど、気になるところはある。


「アリス?だっけやたら響に懐いてるな……」

 そう聞くと、アリスは嬉しそうに笑った。


「はい!私は響のお嫁さんになるために神野の家に居候しにきたんです!」


「……は?」

 思わず驚きの声が漏れた


「なあ、椿芽さんやい……」

俺は再び勇気を振り絞って、椿芽に声をかける。


「何かな、悟くん?」

まだムスッとした感じで歩く椿芽。まるで、俺が何か余計なことを聞いてしまったかのようだ。


「君は彼女とは知り合いなのかい?」

そう聞くが、速攻で返ってきたのは—


「知らない。」


「さいですか……」

なんだその返事は。あっさりしすぎて、逆に悲しい。


もう俺から彼女に聞けるような根性はなく、高校生活2日目の登校をどんよりとした雰囲気で歩いた。



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