「ねえねえ見た?放課後の教室に忍び込んで泥棒してた人が捕まったってニュース」
「見た見た!昨日の夜にニュースでやってたやつでしょ?わざわざ制服着て長い髪のかつらをつけて変装してたっていう。キモイよねえ」
「そうそう!あのね、学園側は公表してないけど、うちも何件か被害にあった生徒がいるらしいよ」
「マジで?!」
「だからあ、もしかしたら「見知らぬ女生徒」を見たって噂も……」
「あーね。そうかもしれないわ」
「おいおい!結局ただの不審者だったってことか?」
「不審者じゃないわ。泥棒よ」
「似たようなもんだ!まったくつまらん!」
「その意見には同意するわ。謎も何もなかったじゃない」
ここ数日学生たちの間で噂になっていた「見知らぬ女生徒」は、校内に窃盗目的で侵入していた奴だったという話になって、それまでの熱は一気に冷めていった。
「犯人は捕まったし、「見知らぬ女生徒」の謎も解けたんだから良いじゃないですか」
「しかしただの窃盗犯というのは面白みにかける!」
「七不思議なんてそんなもんですよ。先輩たちだって本当に「見知らぬ女生徒」なんて怪現象があるとは思ってなかったでしょ?無い前提で謎を解こうと推理してたじゃないですか。だったらこれがその答えで、オカルトの
「ワトソンはそういうところクールよね……」
「現実主義だと言ってください」
「ああー!!つまらん!!どこかで連続大量密室殺人でも起きないものか!!」
そんなものが起きたとしたら、その建物の構造に問題があるとしか思えない。
そしてその場に居合わせたのなら、事件を推理する前に結構な確率で自分たちもその被害者に含まれることになりそうだし。
「また他の七不思議が起こるのを待つしかな……男女の痴情のもつれ的な七不思議ってあったかしら?」
そんなものが学園の七不思議にあってたまるか。
「じゃあ僕は先に帰りますよ。部室の戸締りお願いします」
まだ17時だったが、気が抜けてしまっている先輩二人を残して先に帰ることにした。
どうせ残っていても新聞を作るわけでもないし、この後も愚痴を延々と聞くだけだろうから。
こうして『八百万学園七不思議「見知らぬ女生徒」事件』は解決した。
あれから校舎の違う内山田先輩とは会っていない。
向こうも僕の顔を見たくないだろうからそれは良いんだけど、桃鈴先輩とは偶然学食の前で会うことがあった。
その時に桃鈴先輩が気になることを言っていた。
「ねえ、あなたたちが話を訊きに来た時に、私と一緒に話していた子が誰なのか知らないかな?涼と部長のことを口止めしようと思ってたら姿が見えなくなっちゃって。あ、短い髪の方はクラスメイトだったんだけど、もう一人いた長い髪の子が誰だったのか、誰に聞いても見たことないって言うのよ……」
へえ……。
「どこかで見かけたら連絡しますよ」
もう見知らぬ女生徒じゃなくなったんでね。
― 完 ―