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八百万学園新聞部 ~ワトソン君の事件簿~
八月 猫
ミステリー推理・本格
2024年11月27日
公開日
39,194文字
連載中
私立八百万学園に通う「和徒村 英一(わとむら えいいち)」。
通称『ワトソン』。
全ての学生はどこかの部活に所属しなければいけないという学園の規則に従い、
仕方なく部員割れによって廃部寸前だった新聞部に入ることになった和徒村。

そんな彼の所属する新聞部に伝統として伝わっている部訓がある。
「百の特ダネより、一つの謎解き」
学園新聞を発行することよりも大事なことは、謎を解くことだという初代部長の信念である。
そんな新聞部としてあるまじき信念を持つ初代部長、ホームズの愛称で呼ばれる「片難 六駆(かたなだ ろっく)」と、
副部長のミス・マーブルこと、新聞部紅一点の「馬淵 純(まぶち じゅん)」。

そんな3人が学園で起こった事件に挑む学園ミステリー。

伝統といってもまだ誰にも受け継がれていない部訓に疑問を持ちながら、
先輩二人の迷推理に常日頃から振り回されているワトソン君。

そんなある日、片難は学園七不思議の一つである「見知らぬ女生徒」を見た生徒がいるという噂を聞きつけた。
招集される新聞部一同(3名)は、その噂の真相を調べるべく乗り出したのだったが……。

八百万学園を舞台に新聞部の面々が活躍(?)するオムニバス形式のミステリーです。

第1話 見知らぬ女生徒

 それは放課後になると現れるという謎の女生徒の話。

 廊下ですれ違うこともあれば、いつの間にか教室にいることもある。

 誰だろうと振り返った時には姿はなく、教室を出ていく姿を見つけて追いかけても、やはり廊下のどこにもその女生徒はいない。

 それは過去に学園で自殺をした生徒だと言う者や、病気で学園に通いたくても通えずに亡くなった女生徒だと言う者もいる。

 しかしその存在を実際に見たという人に、誰かが直接話を聞いたという話も聞かない。


 それでも――「見知らぬ女生徒」は実在し、放課後になれば学園内を徘徊している。

 そうまことしやかにささやかれていた。




「皆も知っての通り!八百万やおよろず学園七不思議の一つである『見知らぬ女生徒』を見た者がいるという噂が学園内に広まっている!これは我が新聞部として調査をしないわけにはいかないだろう!」

 昼休み。僕は新聞部の部室に集合するように連絡を受けた。

 僕たち部員を前に興奮気味に話をしているのが、この新聞部の部長である片難かたなだ六駆ろっく先輩だ。通称ホームズ先輩。自称八百万学園の頭脳。

 黙っていれば間違いなくイケメンなのに、一度口を開いてしまうとどこか性格が破綻していることが伝わってしまう……。


「知っての通りって、私はそんなの全然知らないけど?」

 この部で唯一、そんな部長にツッコミを入れられるのが、副部長である馬淵まぶちじゅん先輩。通称ミス・マーブル先輩。裏ではマーブルチョコと呼ばれている、身長142センチのチビッ子3年生。

 唯一とはいっても、部員はここにいる3人だけなんだけど。


「何?!こんな面白そうな話を知らないだと?!お前はそれでも新聞部か!」

「新聞部ならそんな面白そうな話を逆にこちらが広める側なんじゃない?完全に出遅れてるじゃない」

「違う!我々新聞部の目的は、その噂の真相を確かめ、そこに隠された真実を紐解き、最終的には難問難題、複雑怪奇な謎を解くことだ!」

 いや、そうじゃない。

 取材して記事にするのが新聞部だ。


「まあ、その目的には私も同意はするわ。その話自体には興味あるもの」

 同意しないで。

 興味はもっても、同意はしないで。


「で、その女生徒を見たっていう人が誰だか分かっているの?誰も見たという人から直接話を聞いたことが無いっていうのが、学園七不思議の「見知らぬ女生徒」だったんじゃなかったかしら?」

 ちなみに七不思議とはいっているが、実際に挙げていくともっとあるから不思議だ。

 「七不思議ではない七不思議」。これもその一つ。


「それに関して抜かりはない!すでに情報の発信源は突き留めている!」

「そうなの?じゃあ手間はかからなさそうね。ホームズにしては珍しい。明日くらい廃校になるんじゃないかしら?」

 なかなかに辛辣ー!

 部長の威厳はどこにもないな……。


「ああ!この噂を聞いてすぐ、迅速に調べはつけてある!なあ、ワトソン君!」

「あ、はい。情報の発信源は3-Cの内山田うちやまだ健介けんすけ先輩と、3-Dの桃鈴ももすず凛香りんか先輩でした」


 そう、調べたのは全部僕だけどね。



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