ピラミッドのごとく積み上げられた資料を読み、さらにはUSBやSDカードに収められた画像資料や動画資料を半ば義務感に駆られて観ていた実春の目に、急に「星川斎月」という名前が飛び込んできた。
書かれていたのは、雑誌第一編集部が刊行している『週刊弦悠』の小さい記事。辛うじて、プリンターで出力したような原稿だったが、印刷所による綺麗な印刷ではなく、インクだまりがここそこにできているようなあまり綺麗でないものだった。それに、ところどころに手書きの文字がある。朱入れもされているから、おそらく入稿する以前の、草稿段階のものだろう。校正でもしていたのかもしれない。
星川斎月。
実春にとっては、初めて見る名前だった。
星川斎月。その隣には、(16)という数字がある。名前の隣にある、括弧書きの数字。それが示すのは、年齢しかない。
16歳という年齢。それは確か、被害者の息子と同じだ。
そして、被害者と同じ苗字。
世間には一貫して、隠し通された名前。
それは疑いようもなく、事件の加害者である少年Aの名前だった。