※文末にある「
第1回帝国議会
衆議院
本会議 第15号
明治23年12月20日
〔明治23年12月19日の議事の続き〕
○天春文衛君 (百一番)
私は長くは話しません。納期の改正については、発案者の意見に賛成します。しかし、この議事を決定するにあたって、今、発案者が述べているように数ヶ月に分けることが本当に適切かどうか、また、各地方においては状況も異なるでしょうから、確かに納期の変更程度であればあまり関係ないとは言えますが、納期によっては人民に大きな影響を及ぼす可能性があります。したがって、今日これを改正するにあたっては、慎重にすべきだと思います。そこで、委員を選出して、どの納期が最も適切かを審査したいと考えます。つきましては、各部で一人ずつ選んで、都合九名の委員を選びたいと思います。
(この時、「委員を選ぶのが良い」と発言する者が数名いた)
○佐々木政行君 (二百七十四番)
私も賛成する一人です。大体は修正することに賛成です。ちょうど今、委員を選出するという意見が出ましたので、これに賛成します。修正は委員が行うべきでしょう。
○小西甚之助君 (二百三番)
私は委員を選出することに反対です。この案は、ぜひ修正しなければならないものだと思います。そして、修正をするならば、二次会において委員を選出し、調査をする中で、修正条項なども出てくるでしょうから、それが便利です。一次会では、どうしても修正させようと思っていても、修正することはできません。修正させたいという精神でいますので、一次会では委員を選出すべきではありません。
(この時、「私は天春君の意見に賛成する」と発言する者があった。)
○議長 (中島信行君)
ただ今、これは特別の動議ですので、集会に諮ります。
(〓水粲藏君、「私は発言を予告していますので、賛成の意を述べさせてください」)
○議長 (中島信行君)
特別の動議は、集会の決議を得なければなりません。今、天春君より委員に付託するという意見が出ました。その委員は各部で一名ずつ、すなわち九名を選出するというものです。この意見に賛成の方は起立願います。
(起立者不明)
(植木枝盛君、一次会で可とも否とも決しないので、一次会の可否を採決し、可と決まったら委員を選出すべき。そうでなければ私はこのような起立には応じない)
○議長 (中島信行君)
皆様にお話ししますが、色々な意見があります。しかし、この法案について、一つ規則を定めておきたいと考えます。すなわち「議員より提出された議案は、大体について討論した後、第二読会を開くべきかどうかを決し、もし委員に付託する動議があって、これを可決したときは、その報告を待って第二読会を開くべきかどうかを決すべきである」とあるので、第一読会を開くべきと決まれば、この大体についての議論は必要ありません。ですから、今、委員を設けるという意見があるので、この委員を設けるという意見を、先に決を採らなければならないと考えます。
(「採決、採決」と叫ぶ議員があった)
決を採ります。天春君の委員を設けるという動議に賛成の諸君は起立ください。
(起立者多数)
○議長 (中島信行君)
多数です。委員を設けることに決定します。これでしばらく休憩し、委員の選挙結果をご報告いたします。
午後二時三十三分休憩
午後三時二十五分開議
○議長 (中島信行君)
委員選挙の結果をご報告します。地租徴収期限改正案調査委員当選者
第一部 西尾傳藏君
第二部 竹內綱君
第三部 佐藤昌藏君
第四部 〓水宗德君
第五部 楠本正隆君
第六部 天野若圓君
第七部 岡田良一郞君
第八部 湯淺治郞君
第九部 佐々木政行君
本日の議事日程は、これで終了しました。これから、衆議院規則改正案、予め皆様に配布しましたように緊急の問題ですので、今日はこれを決議したいと思います。これを集会に諮ります。
○濱野昇君 (八十七番)
もし、それをやるのならば、私はこんなものは廃案にするべきだと思います。
○木暮武太夫君 (百四十八番)
まだ時間も少し残っていますので、議論しても差し支えないと私は思います。
(濱野昇君、「それならば私は廃案…」)
○議長 (中島信行君)
衆議院規則第百三条および第百二十六条に関する緊急の動議は、本日議事を行うことに同意される諸君は起立願います。
(起立者多数)
○議長 (中島信行君)
多数ですので…
(濱野昇君、「私は反対論者です、そちらに行って言いましょうか?」)
衆議院規則第百三条及び第百二十六条に関する緊急動議案 (提出者:渡辺義恭君)
○議長 (中島信行君)
書記官に朗読させます。
(齋藤書記官、議案を朗読)
衆議院規則第百三条及び第百二十六条に関する緊急動議案
衆議院規則第百三条及び第百二十六条第一項中、氏名の下に「若しくは番號」の五字を挿入する。
同規則第百二十六条第二項及び第百三十条中、「氏名」の二字を削除する。
○議長 (中島信行君)
末廣重恭君
(末廣重恭君、演壇に登る)
○末廣重恭君 (二百六十二番)
諸君、私の今から発言することは、ただ今読み上げられました議題についてです。この事柄は、議院全体にとってはそれほど大事件とは思えませんが、議場のために便利なことだと考え、この案を提出した次第であります。そもそも世の中のことは、第一に便利を主とし、第二に習慣に基づいています。ですから、なるべく廃止せずに進める方が良いと考えます。前の衆議院規則の草案を見ますと、第百三条及び第百二十六条第一項の中に、氏名の下に「若しくは番號」とありました。起立して議長に発言を求め、また議長が点呼を命じる際、氏名または番號を用いることで、差し支えないことになっていました。それが議論の末、削除され、今では番號を使わずに氏名のみを用いることになりました。しかし、これは実際に不都合ではないでしょうか。不便な点があると思います。それは、議員の中に、加藤とか山田とかいう同じような名前の者が多くいるということです。その名前を呼ばれて起立を求められた時など、間違えることがあります。傍で聞いていると、多数が発言を求めて立ち、議長が名前を呼ぶ時に聞き取りにくく、今演壇に立っているのが誰であるかを見間違えることが十分あるでしょう。これを番號にすれば、席の場所がはっきりし、番號によって誰が今起立しているのかがすぐにわかります。第二に、これは表向きにはあまり公言できないことですが、議員の中には、いくら立っても議長が発言を許可してくれないと不満を言う人もいると聞いています。しかし、議長といえども、三百人もの議員をすぐに記憶するのは難しいでしょう。四、五人が一緒に立てば、誰が誰だかわからなくなった時に、議長が名前を覚えている人に発言を許可するという事態も起こりえると思います。したがって、番號を用いることは非常に便利ではないでしょうか。また、番號というものは、わが国では古くから用いられている習慣であり、前の元老院でも番號を用いていたことは、皆様ご存じのことと思います。決して、国会では番號を使うことはできないというわけではなく、不便であっても氏名を呼ばなければならないというのは、無理があると思います。そうすると、…この中に、人間に向かって番號を使うことは、牛馬に近いことであり、人間を呼ぶのに番號を使うことはできないという反対があるかもしれません。しかし、私は決してそうではないと考えます。料理屋などでは、「何十何番のお客さま」ということが多くあります。さらに言えば、観音様でも、人間より尊いものを、「何番の観音」と言うではありませんか。また、人皇何代とか、徳川の何代将軍というのも、まさに番號を用いるものです。秦の始皇帝とか、始皇帝より一世、二世、三世と言うのも、やはり番號を使っています。ですから、必ずしも番號を使うことができないとは言えません。番號を用いるのは牛馬に限ると言うのは偏見でしょう。ましてや、我々人間に番號を付けるわけではありません。席に付けるのであり、何十何番の席にいる人であるかを明確にするものなのですから、番號を付けたところで、不都合なことはないと存じます。皆様も、どうか私の発言に賛成して、便利のため、習慣のためにこの動議を採用していただきたいと願います。
(橋本久太郞君、「ただ今の発議は、討論をせず、終結とすることを建議します。」)
(「賛成々々」と叫ぶ者がいた)
(橋本久太郞君、「こんな簡単なことに議論していては、実に際限がありません。」)
(野口駿君、「一応私は弁じておかねばならないことがあります。」)
○議長 (中島信行君)
お控えなさい、まだ氏名を呼んでいません。お控えください。
○板倉中君 (百三十一番)
大変な混乱を避けるために便利になると思いますので述べさせていただきますが、この動議の第二項に「同規則第百二十六條第一項及第百三十條中氏名ノ二字ヲ削ル」とありますが、「氏名」の二字を削ると文が読めなくなる箇所があります。すなわち衆議院規則第百二十六条に「議長ハ書記官ニ命シ議員ノ氏名ヲ〓呼セシメ」とある所の「氏名」の字を削ると、「議員ノ点呼セシメ」という形になります。意味が通じなくなりますが、発議者の意図はいかがでしょうか?
○末廣重恭君 (二百六十二番)
残念ながら、ここに議事規則を持ってきていませんので、今、すぐにお答えすることは難しいようです。
○倉田準五郞君 (二百三十五番)
私は賛成です。
○末廣重恭君 (二百六十二番)
これは少しも差し支えないと考えます。(この時、末廣君は議院規則を見る)なるほど、第二項の氏名の「の」の上の「の」の字は、削った方が都合が良いので、「の」の字を削除するということで承知ください。
(濱野昇君、演壇に登る)
○濱野昇君 (八十七番)
番號に熱心な末廣重恭君には反対を申し上げます。今日、このような些細な番號であるとか氏名であるとかいうことで、一時間も二時間も時間を費やす時期ではない。氏名であろうと、番號であろうと、このようなことに対して、我々が日を費やすことは無用であるため、反対します。番號としても氏名としても同じことです。しかし、番號については、兵隊がやかましく文句を言っていたのを、私が牛小屋の二階で聞いていたのですが、ある人が番號で呼ばれたことで気を悪くしたと頻りに悪口を言っていました。番號を用いることは人の感情を害するようです。第一に、貴族院には番號がなく、衆議院に番號があるというのは、上下の違いで衆議院にだけ棒があるというのはおかしい。貴族院には棒なしであるのは都合が良い。衆議院は棒があるという状態ですから、決してそのようなものは要らないと考えます。ですから、私は大反対です。
(今井磯一郎君、「私はもちろん発議者に賛成ですが、このようなことは長々と演説をすることなく、速やかに採決されることを望みます。」)
(野口褧君、演壇に登る)
○野口褧君 (二百番)
末廣君の先程の演説は、実に彼らしくないと思いました。この番號を使うということは、第一に不都合であることを、私は述べておき、さらに末廣君の意見を攻撃しようと考えます。(簡潔に)(簡潔にお願いします)また、番號を呼ぶと氏名を呼ぶのとでは、どちらが良いかと問われれば、どうしても氏名を呼ばなければならないでしょう。議員同士の間でも顔を知っていても、名前を知らない人がいます。そういう時にどうすればよいか、名前を呼ぶ方が良いでしょう。番號を呼ぶのは早く、氏名を呼ぶのは実に面倒だと言うかもしれませんが、それは慣れの問題です。何度も何度も呼んでいれば自然に覚えるものです。ところで、先任の書記官長が呼ぶときに、三百番以上になりますと、「三百七十番だ」とか「三百七十二番だ」とか(笑いが起こる)言うことで煩わしい。名前を呼べばそのようなことはありません。また、傍聴人の方にも大変関係のあることで、わざわざ傍聴に来ても、今の人は誰が演壇に登って弁じたのか、誰が賛成したのかがわからないでしょう。それが氏名を呼べばすぐに分るという便宜があります。(分かった、分かった)(まだわからない、これから順に分かる)(無用、無用)無用ではありません、有用だから登壇しました。そこで、同姓の人がいるから、名前と氏名を呼ぶと人を間違えることがあるというけれど、そのような論拠では決して賛成を得られないと思う。また府縣會で番號を使うのではないか、それならば国会でも番號を使うべきだ、番號を使わなければならないと言っているけれど、それは府縣會で番號を用いることを良いと思っているからでしょう。国会ではその必要がないと思えば、この規則がある。我々が色々と考え、委員会に付託して、ここに辿り着いたのです。また、歴代の天子は何代何代というとか、秦の始皇帝が初代というような、そのような馬鹿らしいことは攻撃する価値がないでしょう。ところで衆議院規則なるものは、前にも申した通り、我々が大変な騒ぎをして作ったものなのです。それを改めるのを良しとしない。直ちに改めようというのは間違いでしょう。皆様は、政府を攻撃する時に、朝令暮改だとか何とか言って政府を攻撃したではありませんか。朝令暮改と言われて政府もさぞかし困ったでしょう。しかし、我々が朝令暮改をするというのは、政府に対して…(大きな笑い、「無用々々」)決して無用ではありません。つまり、自分が事を為す時に、このような事をしておきながら、以前の政府に倣うというのは間違っているということです。それゆえ我々は責任を重んじているので、どこまでもこの規則を実行しなければならないのです。つまり、このような末廣君のような議論には、到底賛成することはできません。
○山口千代作君 (二十七番)
討論終結の動議を提出します。(この時、賛成と叫ぶ者が数名いた)
○議長 (中島信行君)
末廣君に問いますが、百三條中に間違いがあったということですか?
○末廣重恭君 (二百六十二番)
これは取り消した方が都合が悪くなると思いますので、やはり取り消しの取り消しをいたします。
○議長 (中島信行君)
皆様に申し上げます。この案については、もともと討論終結の動議もあります。ほとんど討論終結の賛成、あるいは反対の決議を採る必要もなく、直ちにこの案の決議を採るのが宜しいと思います。つきましては、この案は、一読会、二読会、三読会を用いずに確定といたします。(異議なし々々)つきましては、これは二箇条のようですが、連帯してすべてこの案について決議を採ります。この議案に賛成の方は起立してください。
(起立者多数)
○議長 (中島信行君)
すなわち、この案は可決します。明日の議事日程を…
○櫻井德太郞君 (二百九番)
至急を要する件で少しお尋ねいたします。今、議長が明日の議事日程を報告なさるということですが、まだ時間が早いので、私から一つ動議を提出します。昨日の版権法案と、保安条例廃止法案の第二読会を開かないことを建議します。
○議長 (中島信行君)
櫻井君の動議には、賛成者がいないので…
(賛成と叫ぶ者、または反対と叫ぶ者、数名いた)
(西尾傳藏君、「衆議院規則に「第二読会と第一読会を終えてから少なくとも二日を置いて開くべし」とありますから、今ここで第二読会を開くのは不都合と思います。)
(佐々木正藏君、「私は今出された動議には同意いたしません。これらの案は緊急問題として議事日程を変更するようなものではないので、このように変更することは、かえって不都合だと思います。」)
○議長 (中島信行君)
議事日程を変更するのは、議長が緊急の問題だと考える場合に、この集会に諮る規則です。今日は、議事整理上のため、保安条例に関する動議の決議は採りません。よって、明日の議事日程を御報告いたします。
第特別輸出港規則追加案、第一読会の続き
第二集会及び政社法改正案、第一読会
これで今日は終了します。
午後三時五十五分散会。
明治23年12月20日(土曜日) 午後1時53分開議
議事日程第16号 明治23年12月20日
午後1時開議
第特別輸出港規則追加案(政府提出)、第一読会の続き
第二集会及び政社法改正案(伊藤大八君提出)、第一読会
第特別輸出港規則追加案(政府提出)、第一読会の続き
○議長(中島信行君)
皆様にお知らせいたします。郡の分合に関する法律案が、政府から提出されました。今日は、請願委員の加藤平四郞君より報告をしていただきます。その報告が済んだ後に、議事日程の会議を開きます。
(加藤平四郞君、演壇に登る)
○加藤平四郞君(二百七十五番)
先週に請願が出された件と、今週に出されました請願の文書一覧を今日ご報告します。まず、前回の議会で第二号まで受け付け、第三号で受け継ぎましたのは、地租全廃の請願です(笑い声が起こる)。宮城浩藏君の紹介によって、山形県の佐藤伊之吉から提出されたものです。その要点は、地租というものを全てやめて、その代わりに公債証書を別に発行し、それをもって日本全国の土地を買い上げ、その買い上げた土地をさらに人民に貸し与えて、地租の代わりに借地料を取り、政費をまかなおうという意見であります。これが第三号です。
その次に出ましたのは第四号で、貧しい人々の税金を免除しようという請願であります。これは山田東次君の紹介で、東京府の弁護士、井上榮太郞氏より出されました。これは、貧しい人々に納税義務を負わせるということは、まるで貧乏人の皮を剥いで肉を奪うようなものなので、全ての貧しい人々、あるいは車夫であるとか労働者であるとか、その種類や条項は細かく分けて書かれていますが、とにかく生活の困難な、下層の人々から、一切税金を取らないようにしようという請願であります。
それから、第五号は群馬県の篠原叶から出され、関矢孫左衞門君の紹介であります。これは、群馬県の上州と越後を結ぶ鉄道敷設についての請願でありまして、その趣旨は、群馬県の前橋から越後の亀田町という場所まで鉄道を敷き、そこからさらに二手に分かれて、別の場所にも敷設したいということです。実はこれについては、以前から発起人より政府に請願していたところですが、まだ許可が出ていません。今は議院の請願からしか方法がないため、議院に請願するということになりました。いったん請願書が出された後に、政府から返事が来て、その返事には請願の趣旨は認められないとありますので、困っています。これはぜひ殖産興業上必要な路線であるので、必ず許可してほしい、さらにこの事は決して空想で始めたものではなく、今日まで十分力を尽くし、技師などを雇って測量をしたこともあり、多くの費用もかけてきました。それが今止められた時には、これまで使ってきたお金を無駄にし、迷惑することになるということでございます。
第六号は衆議院議員選挙法を改正して普通選挙法とする請願であります。これは兵庫県の吉田字吉より提出され、同県選出の改野耕三君外一名の紹介です。その大要は、衆議院議員の選挙法を改正して、現在のように人を制限せず、老若男女の区別なく一般に議員の選挙権を与え、その上で弊害を避けるために、これを二種類に分けて、一つを上級とし、一つを下級とします。上級は、納税義務を負う者、下級は、納税義務のない者を下級として、それぞれの級から各一名ずつ出すことになれば、選挙権がないと不満を言う人がいなくなり、選挙権が一般に行き渡って都合が良いだろうという請願です。
第七号は商法施行延期を求めるという請願であります。これは東京府の高羽總兵衞より出され、青木匡君外二名の紹介であります。これは、二十三年二月二十七日に公布された商法は、条項の中に現実に適合しないところがあり、またわが国古来からの習慣や風俗を尊重せずに、軽率に制定したと思われるため、これを延期し、適切な修正を加えたいという趣旨でございます。
第八号は菓子税則廃止の件についての請願です。これは栃木県の福田富次郞外九十五名による請願であります(前の七号の方は高羽總兵衞外四十九名でした)。これは同県選出の新井章吾君の紹介であります。その趣旨は、菓子に関する営業税は、少ない資本で小さな商売をしている人を困らせる状況である。製造税は、酒の製造税とは性質が異なり、課税の基準もはっきりしないし、間接税とはいえ、酒税のように誰が負担しているかが明らかにならないものです。さらに調査方法が厳しく、悪徳商人を利益を与え、善良な経営者を苦しめているという弊害が多くあります。それゆえ、この税則をすべて廃止してもらいたいという請願です。
第九号はまた、商法施行延期及び修正の請願です。これは東京の横山源太郎外九十八名の請願で、太田實君外一名のご紹介です。この請願も、商法の規定はわが国固有の風俗習慣を考慮して作られたものではなく、公布されている条文と注意書きに矛盾があったり、民法と重複しているなど、欠点の多いものです。このようなものを、来年の一月一日から施行するということは、一般の方々を迷惑させることですので、延期し、修正を加えたいという請願です。
第十号はまた、商法施行延期及び修正の請願です。これは東京府の高野藤吉外六十六名より提出され、紹介者は同じく太田實君です。こちらもその趣旨はほとんど同じですので省略します。また、第十一号は菓子税則廃止の請願で、これは大阪府の齋藤彌七外百八十一名から提出され、同府の菊池侃二君の紹介であります。この請願は、現行の菓子税則は業者を困らせ迷惑にする点が多く、その法律をよく見ても良くない箇所が多い。また、世間の議論を聞いても、またヨーロッパ諸国の状況を聞いても、お菓子のようなものに税金を課せられる制度は少なく、現在の状況では税は少なく、手間ばかりがかかり政府も得るものがない、しかしお菓子業者は非常に迷惑をしているということで、これを廃止して、現在の菓子業者を救っていただきたいという請願です。
第十二号はまた、商法実施延期の請願であります。これは愛媛県の近藤治三郞外七十七名から出され、島田孝之君外二名の紹介です。これも前の請願と大体同じですので、省略します。
第十三号はまた、商法実施延期の請願であります。これは愛知県の片野東四郞外五名の出したもので、同県の堀部勝四郞君外一名の紹介です。これも大要は前の請願と同じ趣旨ですが、商法を公布してから日が浅いため、直ちに実行するということは大変で、準備をする暇もなく、また様々な不便があり、さらにそれを良く知らないまま実行に移すことで、知らず知らずのうちに法を犯し、罪を犯す人が多く出てしまうという恐れがあるため、とにかく延期して準備の余裕を与えたいという趣旨です。
第十四号もまた、商法実施延期の請願で、愛媛県の長坂由次郎外三十一名による請願で、島田孝之君外二名の紹介であります。これも前と同様の趣旨なので省略します。
第十五号もまた、商法延期の請願で、愛媛県の紀伊安太郎外三十三名の提出で、有友正親君外二名の紹介であります。これも前とほぼ同様なので省略します。
第十六号は特赦を求める上奏請願です。これは新潟県諸橋浅三郎外八名の提出で、同県の松村文次郞君外四名の紹介であります。その趣旨は、今日、この議会が開かれたことは、誠に古今未曾有の大典である。このような機会には、特に天皇陛下の恩恵を一般に与えたいと思う。昨年憲法を発布された時に、全ての汚名をすすぎ、国事犯や条例犯などの者は、全て大赦で釈放されました。これに類似した、日頃から志を立てて国を憂う人が、国事犯もしくは言論上の犯罪を犯したために、つまり加波山事件、埼玉県事件、名古屋事件、静岡事件、大阪事件などに加担し、罪の一部が強盗に関わるものだったりして昨年の大赦からもれた人が多くいます。これらの人達は、実情からすると、まことに哀れむべきところがあります。したがって、この大典を迎えるにあたって、特に特赦の恩典を受けられるようにしてほしいという請願であります。
それから第十七号は庄川河身改築の件に関する請願で、富山県の谷内與十郞外百三名の提出で、同県の島田孝之君の紹介であります。富山県には川が多くありますが、庄川はその中で最大であり、この川の被害は県内全体に及び、治水費用も多額になるため、地方税の負担ではどうにもならない状態です。そこで利根川、信濃川、木曾川、筑後川など、他の県の大河川と同じ例に倣い、毎年国費を以って修築費の支出を受けたいという願いです。
第十八号は府縣制、郡制実施延期の請願です。これは新潟県の萩野左門外三千二百四十一名からで、同県加藤勝彌君外一名よりのご紹介です。この請願は、明治23年の法律第35号及び第36号により発布された府縣制、郡制は自治の実態がなく、ただ郡務を滞らせ、町村会が郡会議員を選び、郡会議員が府縣会議員を選ぶ仕組みは、人民の参政権を妨害し、大地主が権力を握ることで、権力が不均衡になる、などの弊害があるため、施行を延期し、適切な改善、改正を加えたいという請願です。
第十九号は、教育に関する公会設立の請願です。これは千葉県の池田音外一名より出され、板倉中君の紹介であります。この請願は、これまで、教育の方針を、大学、中学はともかく、小学校の教育の方針を頻繁に変えるのは良くないとして、普通の教育の方針を定めて、世相や民情に合わない旧来の教育法をなくし、教育に関する公会を開いて、地方の教育などはその公会で協議して、教育の在り方を定めるようにしたいという趣旨です。教科書なども頻繁に変更されることのないようにしたいという請願です。
それから第二十号は官吏の出務時間(勤務時間)を改正したいという請願です。これは神奈川県の犬飼與助から出され、島田三郞君の紹介です。その要旨は、現在の官吏の勤務時間は、日本全体の人民の職業、営業時間などと比較してみると、あまりにも短すぎます。例えば、午前8時に出勤して暑い時間には昼までで終わり、また午前9時から出勤して午後3時に帰るというように、平均してみると、今の勤務時間は七時間しかありません。さらに夏期休暇のようなものもあるため、勤務時間は一般の人々の仕事の時間と比べて大きく隔たりがあるのです。そこでそのやり方を変えて、今後、夏期休暇をなくし、通常、10月から3月までは午前8時に出勤し、午後3時に退勤、4月から9月までは午前7時に出勤し、午後4時に退勤。七時間の時もあれば九時間の時もあり、平均すると1日の勤務時間は8時間…その内1時間だけは休憩…食事の時間も兼ねて1時間休憩を取るというものであります。つまり現在の官吏の勤務時間を変更してほしいという請願です。以上が今週中に受理いたしました請願書ですのでご報告致します。
○議長(中島信行君)
松村君…
○松村文次郞君(二百十九番)
少しお尋ねしたいのですが、今議院にご報告になりました全ての請願書は、すべて会議に付するということでよろしいでしょうか?
○加藤平四郞君(二百七十五番)
まだそれは委員会の方で討議しておりません。ただ、受け取ったという書類の目録をご報告しただけです。これらを採用するかどうかは、後日、委員会を開いた上でご報告することになると思います。
○佐藤忠望君(二百二十六番)
ただ今委員長よりご報告がありました件ですが、これは毎週一回配布することになったというご報告でしょうか。それとも、ただ今の報告だけで、各議員には配布しないということでしょうか。
○議長(中島信行君)
後から配布いたします。
○議長(中島信行君)
この特別輸出港規則追加案は、すなわち第一読会の続きですので、別に朗読はしません。また、委員より提出された報告書は、すでに皆様に配布されている通りであります。もし発議があれば発議をどうぞ。
○太田實君(五十四番)
本案は極めて単純な問題ですので、議院法第二十七条によって三読会の順序を経ずに、この場で直ちに確定議決を行う動議を提案いたします。
○赤川靈巖君(百十一番)
ただいまのご意見に賛成します。
○濱野昇君(八十七番)
私も賛成です。
○木下助之君(八十四番)
私も賛成です。
○堀内忠司君(十二番)
賛成
○堀部勝四郞君(十八番)
私も同じく賛成です。
○眞中忠直君(二百三十九番)
賛成
○淺野順平君(百六十四番)
私も賛成です。
○西村甚右衞門君(二百三十三番)
私には少し意見があります。
○議長(中島信行君)
しばらくお待ちください。
○豐田文三郞君(八十番)
太田君に賛成
○川眞田德三郞君(七十二番)
私も賛成です。
○議長(中島信行君)
只今、太田君より動議が出されました。所定の賛成者がいますので、問題として扱います。この問題は、出席議員の三分の二以上で決議すべき事柄であります。すなわち、これから決議を採ろうと思います。太田君の三読会を省略して直ちに確定議決をするという動議に賛成の諸君は起立ください。
(起立者多数)
○議長(中島信行君)
三分の二以上と認められました。
○西村甚右衞門君(二百三十三番)
ただ今、太田君の意見によって、議論もなしに直ちに決議を採るということですか?(笑い声が起こる)
○太田實君(五十四番)
本員の動議は、ただ手順について述べただけです。
○議長(中島信行君)
そうです。西村君、何かご意見がありますか?
○西村甚右衞門君(二百三十三番)
そうです、この案について提案があります。
○議長(中島信行君)
西村君。
(西村甚右衞門君、演壇に登る)
○西村甚右衞門君(二百三十三番)
この特別輸出港規則追加案につきましては、昨日、特別輸出港規則追加案特別委員長の鈴木重遠君が、この席でご説明されました。ですが、私からも再度、お尋ねしたいことがあります。お尋ねしますのは、昨日、鈴木君がこの席でご説明下さった内容と、昨日印刷され配布されました報告書の他に、委員会で調査されたことはございますでしょうか。それだけのことでしょうか?お伺いします。
(鈴木重遠君、演壇に登る)
○鈴木重遠君(二百七十番)
ただ今、二百三十三番の方からのご質問であります。昨日、本員から報告した内容と、報告書の内容以外に、調査したことがあるのか無いのか、というお尋ねですが、質問がありましたのでお答えいたします。調査したこととしましては、釧路を特別輸出港とする件について、昨年、特別輸出港となりました九港との物産の出荷金額等を調査いたしました。その中でも、北海道の中では小樽港がすでに昨年特別輸出港になりましたが、その小樽港について、21年の中の石炭の産出量を北海道庁で調査した結果、7万トンで、1トンあたり3円と見積もりますと21万円程度であります。しかるに、釧路港は昨日、ご報告した通り、22万円程度の産出高があり、釧路から直接積み出すことで25万円位の額になると思われます。昨年、特別輸出港になった小樽港と比較しましても、今回の釧路を追加輸出港にすることは、決して不適切ではないと言えます。これがご報告以外に調査した一つです。
それから、釧路港を特別輸出港としたときに、船舶の碇泊に適しているかどうかの懸念についてですが、その点は北海道庁から大蔵省に提出されている文書の中に、次のようにあります。つまり、「釧路港は函館のような良港とは言えませんが、大小の船舶が停泊できるだけの利便性があることは、昔から日本の船舶も難破せずに停泊していることから明らかである。しかも本港は函館に比べれば航路も近い。」ということが述べられています。報告書では、硫黄の輸出先はアメリカとだけ簡単に書きましたが、詳しく述べますと、ニューヨークに9万トン、サンフランシスコに6千トン、南アメリカに5千トン、カナダに3千トンという内容でございます。昨日ご報告したこと以外に調査したことでございますが、まだ調査漏れがあるかもしれません。差し当たってご報告以外に調べたことは右のようなことであります。もし、何かご不明な点がありましたら、審査委員会で調べて回答いたしますし、もし不十分で、調査の行き届いていない点があれば政府委員から説明していただければよろしいかと思います。以上が今のお尋ねに対する回答です。
(西村甚右衛門君、演壇に登る)
○西村甚右衞門君(二百三十三番)
私は、この特別輸出港追加案について、もう一度委員による調査をしっかりと行っていただきたいという考えを持っています。なぜそのような考えを持っているかといいますと、どうも実際と議論とには多くの違いがあるからです。今、政府から出された説明書を見ましても、また委員会で調査されたことを見ましても、確かに釧路の港を開港することが、北海道に一つの利益をもたらすということでは皆様も賛同するところでしょうし、それは容易に理解できる道理でありまして、もちろん不利であると見る者はいません。しかし、これは表面的に現れている理屈であって、内面的な部分に踏み込むと、さまざまな関係があるということです。一体、なぜそうなるかと申し上げますと、皆様もご案内の通り、貿易上のことでいいますと、わが国の商権に関する事は、完全に確立したとは言えないと思います。多くの部分はわが国の工業や商業が、外国人から注目されたり、手を入れられたりしていると感じているのではないかと思います。この案も、なるほど1年間で何万も輸出額が増え、それを釧路から出せる港がないために函館に回送して、それによって5万数千円余分にかかるというだけであり、この無駄を省けば、国内の輸出業者が利益を得ることができます。しかしながら、この貿易の関係についてさらに深く調べてみないならば、本当に利益を得られるかどうかは全くわからないことです。というのも、外国人が北海道の事業に注目して、これを日本の商人に相談したとします。そうすると、国内の商人が政府に土地の借用などを願い出て、この硫黄を採って製錬するとします。それを外国に輸出するときに、函館港から輸出する方が都合が良いということになるかもしれません。そうすると、国内の商人に本当にこの事業が適していて、どれほどの便宜性があり、どれほどの価値のあるものを、硫黄を輸出することによってどのような利益があるのかという事を、外国の事情までも踏み込んで調べるべきではないかと思います。単に、外国人が買うから売るというだけに過ぎません。その時に、釧路から回漕して函館で積むときにかかる五万数千円という利益が、北海道の人民の収入となります。しかし、もし西洋人がそれを嫌い、この釧路港を開くことをあなたがたがどうにかしてくれるように願うというような状況に対応して、政府に業者が願い出たとしたならば、本来ならば五万数千円北海道人民の懐に入るはずのお金が、西洋人の懐に入ることになります。故に、この商業の成立ちは、誰がそれを精錬して利益をを得るのか、直輸出か、それとも委託販売か、函館港で何トン積めば幾らで買い取るのかという契約があるのかなどについて、委員会で調査をお願いしたいのです。もし理論上では、北海道の富源として評価したならば、後で後悔することがないでしょう。これは少々のことのように見えるかもしれませんが、重大な事柄なのです。
そもそもこのようなことは、人民より政府に要望が出され、政府が職務として調査をするのが役目ではありますが、これまでの政府の成立を見ていますと、多くは情実(私情)に傾いていて、表面的な理屈により、一般の方針を決めておりません。ですから、表面上の理論は良いように見えても、その実情は不完全であることが多いということは、今日、耳にすることが多いです。したがって、委員会でもう一度、正確な調査を行ってもらいたいという思いを持っているのです。また、委員会が調査するとなれば、このような浅い調査結果にはならないと、当初から信じておりました。ですので、このような状態ならば、敢えて委員会による調査がなくても、既に政府から提出された説明書を見れば明らかであるとも思っておりましたが、委員会が提出した報告書を見ると、政府が提出した説明書を元に、少し政府委員に質問をされただけであります。太田君の、この税関を設置するために費用はどの程度かかるのか、という質問に対して、五百数十円程度で済む、と答えているだけなのです。全く軽率な説明だと考えられます。そもそも、我々が委員を選出するのは、我々には思いつかない点まで、委員会に調査してもらうためであります。ですので、どの人がこの道に通じているのか、誰が経験者であるかを考えた上で委員会を選出しました。それにもかかわらず、政府の提出した説明書や、政府委員の言うことに一項目を付け加える程度で、十分だというのでは、私たちが信頼することができません。私は、自分自身でもこの件について、多少は調べておりますので、演壇に立って、原案を攻撃することを考えていますが、それは正しくない行為ですので、委員会に正確な調査を行ってもらいたいと願っています。衆議院規則第六十五条には「議院ハ特別委員ノ報告ヲ受クルノ後更ニ其事件ヲ同一委員ニ付託シ又ハ他ノ委員ニ付託スルコトヲ得」とあります。…この第六十五条の規則もありますので、私はこの規則に基づいて、もう一度商業上の仕組みについて、果たして我々はこれを良いと認めることができるか。北海道で得られるはずの五万数千円の利益を西洋人に奪われることはないか、どうかもう一度調べていただきたい。聞くところによれば、この硫黄はアメリカに輸出されて売れるということですが、さらに掘り下げれば、もし値段が安ければ、オーストラリア産の硫黄と競争して、ニューヨークでも売れるという話を耳にしました。海外の硫黄との競争になった場合に、さらに値段を安くして競争しようとすることはできないのか、そして、釧路の港を開いて、そこから直輸できるようになれば、函館までの輸送費としていたお金が外国人に奪われてしまうという心配はないのか、という点も曖昧なので調べて頂きたい。ところが報告書を見れば、釧路港を開ければ、北海道に富をもたらすということだけが書かれており、それは自明のことではないかと思えます。委員による調査をせずとも、政府はそういう趣旨で提出されたわけですから、政府の仕事はこれまで、情実に流されることも多くありましたので、私達は政府の仕事に感服することは出来ません。幸いなことに、この機会に委員を選んで調査をすると言うことは大変結構な事だと思います。委員会が慎重に調査をすることは私ももちろん信じていましたが、政府が提出したものと同じようなものでは、十分信ずることはできませんので、第六十五条の動議を提出する次第であります。
○鈴木重遠君(二百七十番)
議長、もう少しだけ、調べている事を述べさせて下さい。
○議長(中島信行君)
鈴木君、少しお待ち下さい。…少し申し上げる事があります。
○立入奇一君(百七十四番)
私は先程の西村君の話には感銘を受けました。…それで、委員会を責めるつもりはありませんが、出来れば再調査をお願いしたいと考えております。
○重城保君(二百六十五番)
西村君に賛成
○關口八兵衞君(二百十八番)
西村君に賛成
○議長(中島信行君)
只今、西村君より第六十五条の規則に従って、再びこの案を委員に付託する動議が出されました。賛成者もいます。これを衆議に問います。西村君の再び委員に…
○高橋久太郞君(百九十一番)
説明が足りないところがあって、委員会で報告があがっているというのに、さらに委員で十分に説明していたら、このような動議を起こす必要はないはずです。説明が十分なのかどうか、まず調べて委員の中から説明をして、この動議について決議するようにしたいと思います。
○議長(中島信行君)
しかし、すでに動議が提出されていて、賛成者もおります。議長としての職務として、この動議について可否を決しないわけにはいきません。動議を提出される前に説明を求めるのであればよかったのですが、すでに動議が提出され賛成者もおりますので、議長はそれを置いて別の事をやるわけにはいきません。故に、これを衆議に諮ります。再び委員に付託するという動議に賛成される方は起立ください。
(起立者少数)
○議長(中島信行君)
少数です。それでこの動議は消滅します…
○今井磯一郞君(二百十八番)
すでに再々び委員に付託するという件は…消滅しましたが、ただ今、この委員が今説明の残りを、もう一度演壇に登って説明しようという意向もありますので、それはやはりその説明を求めてから決めた方がよろしいのではないかと思います。
○議長(中島信行君)
鈴木君、まだ説明があれば、決議の前に説明をしていただいてよろしい。
○加藤六藏君(二百四十七番)
私も委員の一人ですが、只今、ご質問がありました。委員はもう少し何か他に調べたことはないのか、というご質問がありましたが、それでは大変困ります。どういう箇条か、何々の箇条についてとお尋ね下さればお答えできます。まだ、他に調べた事もありますが、あれだけの報告で十分だろうと思って報告をしたのであります。質問によってはお答えできることもあると思いますので、その箇所を具体的に質問するように希望いたします。
○早川龍介君(百四十六番)
只今のご質問について申し上げます。多くはどこへ送るかというお話がありましたが、もちろんヨーロッパへ行くことも考えられますが、どうしても運賃が高くつくのでうまくいきません。重に南北アメリカに行くことになります。ヨーロッパへは、ご存知の通り、運賃が高くつくため利益を上げることができないでしょう。
○山田泰造君(二百六十三番)
少し皆様にお尋ねしますが、実は単純なことだろうと思いますので、このようなことに多弁を弄する必要はないと私は思っております。このことに関して質問があったり、何かを言われる必要はないと思います。聞くところによると、これは立法者が関わる事ではなく、事業者が話し合う事柄であると思われます。その事柄は、多くの事実や詳細を必要とする場合があります。しかし、外国人が資本家となり、鉱山を開くとしても、これはお互いに便宜を考えてする事なのであります。例えば、横浜において、ある外国の商人が数百万の資金を元手に、わが国の商人を手代として使っているような状況も否定できないわけで、これはまさに同じことです。これを阻止しようとしてもできることではありませんし、資本については決して法律で支えるものではないとも思えます。ここには日本の鉱業法というものもありますから、決してそれらについて心配するべきことではないと思います。このようなことは、立法者が言うべきことではないと考えます。ですから、この件については簡単に決定してしまいたいと思います。ご質問がありましたら、質問がなければなるべく早く決議したいと思いますが、どうでしょうか。
○議長(中島信行君)
本案について決議を採ります。本案に賛成の諸君は起立ください。
(起立者多数)
○議長(中島信行君)
多数です。本案に決定いたします。
集会及び政社法改正案(伊藤大八君)、第一読会提出
○議長(中島信行君)
これから、本日の議事日程にあげました集会及び政社法改正案の第一読会を開きます。念のために申し上げますが、朗読を省略いたしますので、その旨ご承知おきください。
(以下の議案は朗読を経ませんでしたが、参考のためにここに掲載します。)
政談集会及び政社法
第一条 この法律において、政談集会とは、政治に関する事項を講談、議論するため公衆を会同するものをいう。政社とは、政治に関する事項を目的として団体を組織するものをいう。
第二条 政談集会には、発起人を定めなければならない。
政談集会を開くときは、発起人より、開会二十四時間前に、集会の場所、日時を、開催場所を管轄する警察署に届け出なければならない。
前項の届出があったときには、警察署は直ちにその領収証を交付しなければならない。
法律によって組織された議会の議員選挙の準備のために開かれる集会については、投票日の五十日前から第二項の届け出を必要としない。
届け出に記載した時刻から三時間を経過しても集会を開始しない時は届け出の効果は失われるものとする。
第三条 屋外において政談集会を開く時は、第二条第二項の手続きを行い、かつ、許可を受けなければならない。
第四条 日本臣民で成年に達した者でなければ、政談集会の発起人になることができない。
第五条 現役及び召集中にある予備役・後備役の陸海軍人、警察官は、政談集会に参加することができない。
法律によって組織された議会の議員選挙の準備のために開かれる集会については、投票日の五十日前から、選挙権を持つ者に限り本条の制限を受けない。
第六条 政談集会においては、外国人に講演や議論をさせることができない。
第七条 警察署は、制服を着た警察官を派遣して、政談集会を監視することができる。
発起人は、監視する警察官に、その求める場所を提供し、また集会に関する事項について質問があった時にはこれに答えなければならない。
第八条 集会においては、武器または兇器を携行して参加することができない。ただし、規則に従い武器を携行する者はこの限りではない。
第九条 会場においてわざと騒ぎ立てたり、暴力をふるう者がいたときは、警察官はこれを制止し、その命令に従わない時は会場から退去させることができる。
第十条 警察官は、次の各号の場合においては、政談集会の解散を命じることができる。
一、政談集会の成立が、この法律に違反していた時。
二、治安を乱す恐れがあると認めた時。
三、警察官の立ち入りを拒んだり、その求める場所を提供しない時。
四、または質問に対して答えなかった時。
五、集会で騒ぎがひどく、警察官が制止しても鎮静しないとき。
六、第五条、第八条の違反者が多数いて、警察官が退場を命じても従わない時。
第十一条 治安を乱す恐れがあると認めるときは、警察官は、その講演や議論を停止させることができる。
第十二条 第二条の届出をしないで政談集会を開催した場合は、発起人を2円以上20円以下の罰金に処する。
第十三条 第二条の届出をしても、実際とは異なっていた時は発起人は、前条と同様に罰する。
第十四条 第三条の許可を得ないで政談集会を開催した場合は、発起人を3円以上30円以下の罰金に処する。
第十五条 第四条に違反した者、及び、第五条に違反し集会に参加した者を、2円以上20円以下の罰金に処する。
第十六条 第六条に違反した発起人を前項と同じ罰に処す。
第十七条 第八条に違反した者を5円以上50円以下の罰金に処す。
第十八条 警察官より解散を命じられた後にも、なお立ち退かない者、及び立ち退きを命じられてなおも立ち退かない者を、2円以上20円以下の罰金に処す。
第十九条 政社には、役員を置かなければならない。
政社は、組織してから三日以内に、役員より、その社名、社則、事務所、役員の氏名を、その事務所所在地の管轄警察署に届け出なければならない。その届け出た事項に変更があった時も同様とする。
前項の届け出があったときには、警察署は直ちにその領収書を交付しなければならない。
役員は、その政社に関する事項について、警察官から尋問があった場合にはこれに答えなければならない。
第二十条 政社が集会を開催する時は、第二条の手続きを行わなければならない。但し、会場を予め定め定期的に集会をする場合は、初回開催二十四時間以前に届出し、その後は届出を必要としない。その届出事項に変更があった場合は第二条の手続きによらなければならない。
第二十一条 現役及び召集中にある予備役・後備役の陸海軍人、警察官、未成年者は政社に加入することができない。
第二十二条 政社においては、外国人を加入させることはできない。
第二十三条 政社が治安を乱すと認めたときは、内務大臣はそれを停止することができる。
第二十四条 第十八条に違反して、政社設立の届け出をしなかったり、警察官の尋問に答えなかった場合は、その役員を五円以上五十円以下の罰金に処する。
第十八条の届出をしても事実と異なるときや、質問に詐欺の答をした場合は、前項同様の罰則を科す。
第二十五条 第二十条に違反し、入社した者を、2円以上20円以下の罰金に処する。
第二十六条 第二十一条に違反した役員は、前項と同様に罰する。
第二十七条 第二十二条の停止命令に従わないで結社した場合、10円以上100円以下の罰金に処する。
第二十八条 この法律に違反した場合、再犯加重数罪併合の例を用いる。
第二十九条 この法律に関する公訴の期限は、六ヶ月とする。
発議者:伊藤大八
賛成者:
末廣重恭、胡赤四木篤、奈須川光寶、野三二次郎、山崎友親、野口朝江、小天鈴里頼永、鈴木重遠、宇都宮平、中一子、一聚助郞、橋厚、山口左七郞、橫堀三長愼三、山田泰造、栗原亮、菊池侃二、鈴木昌司、河野廣
○議長(中島信行君)
この案を提出した伊藤大八君は、病気のため欠席されています。ご報告いたします。
○末廣重恭君(二百六十二番)
この案の発議者である伊藤君は出席しておりませんが、私も賛成者のひとりですので、代わりにこの議案について弁明したいと思います。
○議長(中島信行君)
末廣君、お願いします。
(末廣重恭君、演壇に登る)
○末廣重恭君(二百六十二番)
皆様、この議案を提出されました伊藤大八君は、病気のために、この議案の趣旨を説明することができません。つきましては、本員は賛成者の一人でありますので、本案の趣旨について述べたいと思います。本来、本案の調査に尽力されました伊藤君には、きっと素晴らしい議論や卓越した見解があったと思われますが、私が代わりに述べたのでは、要点を欠くと思われます。しかし、議事日程にもありますので、仕方なく説明をさせていただきます。このことにつきましては、皆様にご了承いただきたいと思います。この改正案について、詳細については細々と説明するまでもないと思います。一箇条一箇条に説明がありますので、それを読んでいただければ理解していただけると思います。しかし、この法案の要点と思われます点を、かいつまんでお話ししなければなりません。
この改正案の第一の要点は、現行法の第二条において、政談集会を届け出るのに48時間前となっているのを24時間前に短縮することです。これは最も必要と思われる改正です。政談集会を届け出る必要があるのは今の社会においては仕方のないことでしょうが、24時間前に届け出れば十分だと思います。ヨーロッパでもその例があります。それを48時間、すなわち2日前までに届け出なければならないとなると、政談集会を開く者は大変不便を感じるでしょう。これは24時間としても警察の警戒には差し支えないと思いますので、24時間とします。これが第一の改正の要点です。
次に、法律によって組織された議会の議員選挙準備のために開く集会は、特別であると思います。この規則に従って、届け出を必要としないというのは、政談集会の改正の重要な点です。確かに、普段の政談集会ならば、24時間前に届け出て、翌日、集会を開けば良いですが、議員選挙の時、反対党が演説をすれば、我々も進んで演説をし、向こうが演説をすれば、我々も進んで演説をしようとするのは必要な事です。ヨーロッパでは電車の窓から頭を出して演説したというような事もあるほどです。ですから、これも議員選挙の準備の為にいちいち届け出をするというのは不便であります。これが第二の改正点です。
次に、現行の集会及び政社法では、政談というものは屋内で行われるべきとされています。つまり、野外や公園で集まって政談をすることは禁止されているのです。これは全く自由がない状態です。段々立憲政治が基礎を固めて、政治の面で複雑になっていくにつれて、何千、何万もの人を集めて演説するようなことが必要になります。イギリスの政治家などは、このような大会を屋外で行っています。ですから、政談を屋内で行わなければならないというのは狭い考え方です。よって、屋外での演説を認めたいというのが第三の要点です。
次に、現行法では、条令の及ぶ範囲が、政談集会にとどまらず、他でも多くの人が集まる所までにも、法律により、色々と立ち入り調査や届け出をさせていることは大変不都合です。本来、この法律は、政談を規制することを目的とするものであるべきで、その他の集まりにまでその規定が適用されています。そのため、十数人が集まって宴会をしていたところを巡査が訪れたり、懇親会でお酒を飲んでいたところに警部が入って来るようなことがあり、これは本当に不都合です。これまで何人以上が集まれば集会になるのか、という定義を設けずに、政治的な集会を規制する法律を使って他の集まりにまで適用するのは、いささか集会の安全を得る事ができなくなります。ですから、改正案においては、どうしてもこの政社以外のものを取り締まるという事は削除しなければなりません。そうすると、論者がこう言います。この条項を削ってしまうと、屋外でデモ運動が行われるようになり、多くの人々が帝国議会の周りを囲み騒いだりするようになった場合、どうすることもできない。また、屋外での集会において治安を妨げる者がいても制止することができなくなってしまう。また、政談以外の集会に武器や兇器を携行する事もできなくなると。確かにこのような取締は必要です。しかし、それらは別途、集会取締法のようなものを制定すれば全く問題ありません。一旦この法律から除き、別の法律として定めた方が良いと思います。これが改正の第四の要点です。
第五に、これは最も重要な箇所ですが、現行法によると「現役及び召集中に係わる予備後備の陸海軍人、警察官、官立、公立、私立学校の教員、学生、生徒、未成年者、及び女性は政談集会に集会することはできない」とされています。しかし私は、官立、公立、私立学校の教員、学生、生徒、未成年者、及び女子については、決して政談集会に集会することを禁止する理由は無いと考えています。第一に、この教員や生徒という観点から見ますと、これらの人が政談集会に参加することを禁じるとすれば、教員や生徒が、政治に関係して何か騒動を起こすことを危惧しているのだと思います。ですが、教員や生徒が政治に関わることは何か差し支えがあるのでしょうか。むしろ、これらの人の中には選挙権や被選挙権を持つものも多くいます。これら政治的な権利を持つ人が、政談集会に参加できないというのは全く意味が分かりません。ある意見からすると、生徒を政談集会に参加させることは、政治熱によって学問を疎かにすると言います。もしそのような心配をするのであれば、教員や生徒は帝国議会の傍聴にも行けませんし、新聞を読んで政治について学ぶことも出来なくなってしまうでしょう。それに政治は学問の中の一分野でもあります。それなの実際に見て聞くことを禁ずるとなれば、文学科を専攻している生徒は講義以外の場所を見ることも出来ない事になります。理学科の教員生徒は文学集会に行くことができなくなります。なぜなら、専門外のことに興味を持つことはよくないからです。このような議論を続けていくと大変な事になると思います。
第二に、未成年者であります。20歳未満の人の政談集会参加を許可しない理由は、まだ思想が定まっていないから、不用意に政治の事を聴かせるべきではないという議論ではないかと思っていますが、少年は、政治の舞台に立って談論させることは良くないでしょうが、小さいときから政治に対する考えを養わせることが、社会にとって必要ではないのでしょうか? ヨーロッパで有名なロバートピールという人は、子供の時から両親がよく政治集会に連れて行って、そこで教育をして政治家として育てたそうです。我が国において将来有望な政治家を作るためには、未成年者が政談集会に参加することを禁ずるような狭量な考えは捨てるべきです。
第三は女子であります。これまでの集会に関する条令をみると、女性が政談集会に参加することを禁じていました。今年7月に頒布した集会および政社法で女性を新たに禁じたのは、なぜでしょうか?おそらく、婦人は政治に不適切であり、それゆえに政治に関する事を聴かせてもいけない、という議論から来ているのでしょうが、そもそも女性が政治に適当でないと言うのは、長年政治に関わる習慣を持たなかったことに基く遺伝によるものです。将来世の中が発達したならば、女性が政治で重要な資格を持つことになるかもしれません。女性が政治に不適当なのであれば、政治に関する意見を育てることのできる機会を与えるべきではないでしょうか。一方、女性が政談集会に参加することを禁止するのは、もともと女性は選挙権や被選挙権をもっていない、国家において政治的な権限を与えていないという理由も考えられるでしょう。そうすると、政談集会に参加できるのは選挙権や被選挙権を持つ者のみということになりますし、そうでないものは政治的な集会に参加できないという決まりにでもなるようで、世の中が狭苦しいものになってしまうと思います。本来、世の中の女性が十分に政治思想を養って、その夫を助けることになれば、社会にとって大きな利益になるのではないでしょうか。今日、西洋諸国において政治が発達し、円滑に政治が動いているのは、西洋の女性たちが政治思想を持っていたことであり、それが男性を助ける力になったからです。もし、西洋の女性が政治に関する考え方をもっていなかったら、今日の議会のありようも現在の水準に達することは無かったでしょう。確かにヨーロッパの人の中にも、女性を政治的な集会に出させるのは良くないとか、議会の傍聴席などに女性が出ると男性は気を取られて説を曲げると言う人がいるかもしれませんが、これは女性を崇拝する文化を持つ西洋での話で、日本においては女性が何十人も政治集会に出席したところで、そのせいで男性の議論が変わってしまうようなことはまずないでしょうから、そういったものは全く考慮する必要はないと思います。そもそも、政府の方も女性に交際を促すべきだとして、舞踏会などを開いて交際を勧めながら、一方では政治集会に参加することを禁ずるというのは、矛盾も甚だしいと言わざるを得ません。つまり、これまで述べてきましたように、陸海軍の人や警察官、あるいは未成年者を除いて、その他すべての政談集会への参加を禁ずる理由はありません。これが、最も重要である第五の改正点です。
第六に、政社については、未成年者を政治に関与させることはあまり良いことではないと思います。まだ思想も定まっていない、経験も不足している未成年者に政治を論議させることはあまり良くないと思います。そのため、政社については、前の政治集会とは違い、まだ成年になっていない者が加入することは禁止するようにしました。これが第六番目の重要な改正です。
第七には、現行法に「政社は、委員を派遣し文書を発行して公衆を誘導し、あるいは支社を置いたり、他の政社と連絡、通信したりすることはできない」とあります。この規定によって、7月以降、世間は大騒ぎとなり、皆様もご承知のとおりです。これについては、今更論ずるまでもありませんが、もともと文書を発行したり、公衆を誘導したりすること、あるいは他の政社と通信したりすることが悪いと言うのは、社会党や虚無党のような有害な党派を抑える必要性から来ているのかもしれませんが、そのために今年法律を制定して、すぐに政党の動きを妨げようとしたことは、大間違いです。この法律のために、政党というものが非常に大きくなるか、文書を出すことも出来ず、地方に人を送ることも出来ず、連絡通信も出来ず、堂々とした政党がまるで監獄に閉じ込められたのと同じようになってしまうか、の二択しか無くなるといっても良いでしょう。このような条項が必要だという論者の主張によれば、政党が結びつくと民間に第二の政府が出来てしまい、それは社会の平和を妨げると言います。しかし、そもそも政党が一つになるということは、歴史的にもありえませんし、現実的にもあり得ません。仮に政党が大きくなっても、民間政府などできるわけがないのです。政党がみずから法律を作ったり、命令を発令し、財政を動かす権力など持ち合わせていません。政党が軍隊を養うなどということは、決してできるはずがありません。ですので、民間でどんなに大きな政党が、互いに連絡、通信し一つになったとしても、それが民間政府になってしまうなどというのは考えられないのです。万が一、そのような政党が出来たのならば、それは全国民の意見が一致したことを意味します。それは、世論が賛成したという証拠なのですから、もはやその時に反対しても意味がないし、その意見に沿って政権を譲り渡す必要があります。そして、全国民の賛成を得た政府が成立するので、何の心配も必要ないと私は考えます。私が申し上げました点が第七の要点になります。細部においては、皆様の中でも議論があるかと思いますし、私もこの案に全て賛成している訳ではありませんので、皆さまは、まずは大意にご賛成いただき、その詳細な部分においては十分な調査を加えた上で、完全にすることを願います。
(濱野昇君、演壇に登る)
○濱野昇君 (八十七番)
この政談集会や政社法について…私は元々、千葉県の藪医者なのですが、自由党の仲間入りをして、弥生倶楽部あたりで政治調査などをしていたところ、伊藤大八という者が賢ぶってこのようなものを持ってきたのです。そもそも末廣君のようなものは、著作権(版権)のような、必要ないことを行っています。自分は新聞記者であり、このようなことに無駄に時間を使うのは、きっと末廣重恭というものが東洋の新聞記者としてヨーロッパでも名前を売ろうというつもりなのでしょう。
○議長 (中島信行君)
濱野君にお話しします。
決して私は人身攻撃はいたしません。私は、この政談集会と政社法というのは、今日のような文明社会では必要ないと思います。これは立憲政治になる以前の話であって、このような束縛する法律は、日本にはもう必要ないはずです。私は、このようなことを協議するために集まって議論をしているのも無用だと思います。国会が開かれている以上、政治演説や屋外での演説を取り締まる必要もないと思います。私は、何も言うつもりはありませんが、このような案についてあれこれ議論するのは無駄であると思います。こんなことを話すのが政治家だということなのかもしれませんが、藪医者の目からすれば随分おかしいと思います…。一言申し上げておきます(笑いがおこる)。
(木暮武太夫君、「発議者に質問をしたいのですが、発議者が欠席していますので、賛成者にむけて質問したいと思います。それによって、この……」)
○議長 (中島信行君)
木暮君、しばらくお待ちください…
(塩田奧造君、演壇に登る)
○塩田奧造君 (八十二番)
塩田奧造はこの改正案である政談集会及び政社法に賛成のひとりですので、私はこの第一読会において、円満に通過されることを望みます。その上で、この改正を求めることについての簡単な理由を述べてみたいと思います。まずこの理由は、大きく分けて二つあります。
一つ目は、現行(今、行われている)の集会及び政社法は、もはや改正をしなければならないということです。
二つ目は、現行の集会及び政社法は、社会の進歩や発展を阻害するものであるので、改正をしなければならないということです。
第一の理由は何かといいますと、今まで行われてきた法律は不十分、不完全であり不便であるので、度々民心を傷つけており、そのことを、全てあげる必要がないほど、皆さまはご存じだと思います。顕著な例を一つ挙げますと、刑罰を例に取り上げると分かりやすいです。体罰などの過酷な罰則を設けて、大変な処分が行われてきました。私はこの様なことを申し上げるのは辛いのですが、この災害にあった者も数えるときりがないほどであり、その為に受ける害も非常に多くあります。この不肖の奧造もその経験者でありますので、その厳しさや不便さを身に染みて感じております。このような法案はいずれ改正されると思ってはおりましたが、今日まで機会がなかったので、ここまで時間を使ってきました。しかし今日に至っては改正をしなければならない時だと感じましたので、この法案を発議する次第でございます。
第二に、社会の進歩を阻害するとはどういうことかといいますと、初めて集会や政社に関する法律が日本に出てきたときには、集会条例と言ったと記憶しています。この集会条例が発布されたときには、人々を驚かせました。そこから徐々に世論の刺激も激しくなり、物事に触れてはより激しくなるかのように、その後の改正ではより厳しく、細かくなり、ついに社会の進歩を阻害するまでに至りました。結局それはどういうことかというと、現行の集会法は言論を封殺する機械そのものなのです。集会を抑制するために作られたものです。これではどれほど機械を作ったとしても目的を達することはできないでしょう。その証拠に、改正の度により厳しくなっています。そもそも政治的なものを規制するために作られたものが、今では通常の集会にも規制をかけるようになったので、これは社会の進歩を妨害していると言わず何と言いましょうか?このような事になった責任や原因は何でしょうか。今さらそれを言うのは野暮というものでしょう。結局それは時代の流れによるものです。ですが、今、立憲の時代になったので、ぜひとも改善をしなければなりません。改善をするのは我々責任だと思います。それをせずに置いておけば、文明の発展を妨げているようなものです。上記に述べました二つの理由によって、この第一読会に賛成意見を述べる次第です。
終わりに臨みもう一言付け加えます。ある人は、現在でも使用するにあたり、そこまで悪いわけではない。このまま放置した方が良いのでは、法律そのものが悪いのではなく、使用するものが悪いだけ、法律はただの道具だから、使用する人さえ正しければ、道具が少々悪くてもよいではないかと主張する人がいますが、それは実に一時しのぎの論拠だと思います。道具が悪いのであれば、なおさら良いものに変える必要があるでしょう。ですので私は、その道具を作る責任が我々にある以上は、私達はその道具をより良いものとし、使う上で過ちがないように努力すべきだと思います。以上をもって、私の第一と第二の意見を述べさせていただきます。
○木暮武太夫君(百四十八番)
この政談集会及び政社法の中で、発議者が欠席なので賛成者に質問したいのですが…どなたか…。
○議長(中島信行君)
誰も代わって説明してくれる方がいないので、しばらくお待ち下さい。
○木暮武太夫君(百四十八番)
賛成者の中で、どなたかお答えをお願いいたします。
○加藤平四郞君(二百七十五番)
今、末廣君がおられないのですが、賛成者でよろしければ、私がお答えいたします。
○議長(中島信行君)
木暮君にお話しますが、加藤君が説明なさると言う事です。
○木暮武太夫君(百四十八番)
今現存している集会及び政社法というものを、政談集会及び政社法というように、政談の二文字を加えられたということですが、それを政談集会だけに用いることについて、少し質問しておかなければならないことがあります。これについて見てみると、政談集会にだけ相当な制裁を加えて、その他の集会については……現存している集会及び政社法の第七条や八条にあるような、屋外で多数の人が集まり運動をすること、つまり時事的政治集会(デモ活動)のようなものについては、対象としていないのはどういうことでしょうか。政談集会には治安を妨害する要素があったとしても、時事的政治集会のようなものでは、治安を妨害する事はないというお考えなのでしょうか?
また、この説明書を見てみますと、現行法の第七条、八条を削除したのは、政治以外に集会を拘束する理由がないため削除したというように書かれているのですが、私が思うに、現行法の第七条や八条は政治集会について定めたもののはずです。すなわち、「屋外に於て公衆を会同し、又ハ多数運動セントスルトキハ云々」、ただし書きで「祭葬講社學生生徒ノ体育運動及其他慣例ノ許ス所ニ係ルモノハ此限ニアラズ」となっています。つまり、現行法の七条や八条も、政治運動について規定したものだと考えられます。ところが屋外の運動は、政治集会以外だと思われたのでしょうか。なぜ発議者や賛成者は、政治以外の集会と判断したのか、その点をお尋ねしたいです。
○末廣重恭君(二百六十二番)
お答えします。
○議長(中島信行君)
末廣君…自席でも構いません。
○末廣重恭君(二百六十二番)
木暮君にお伺いしますが、私は今、欠席していましたが、ただ今、ご質問があった点は、単に政談集会だけを取り締まり、政談以外には取り締まりをしないという箇条以外にも、何か質問があったということでしょうか。
○木暮武太夫君(百四十八番)
加藤君がお答えするとおっしゃっていたのですが、やはり末廣君がお答えすることになるのですか。
○議長(中島信行君)
先ほどは、末廣君が欠席していたため、加藤君が答えられるとおっしゃっていたので、末廣君がお出になったので、末廣君がお答えいただいても構わないと思います。
○木暮武太夫君(百四十八番)
第七条、第八条を削除した理由は、政治以外の集会を拘束する理由がないためだと書かれています。しかし第七条には「およそ屋外に於いて公衆を集め又は多衆で運動しようとするときは」とあり、そのただし書きには、「祭、葬式、講、会社、学生や生徒の体育運動、その他慣習で許容されるものには当てはまらない」とあります。これらは、政治運動について定めたものだと思っています。なぜ発議者は第七条と第八条を、政治以外の集会に関するものと認めたのでしょうか?その点に疑いがあるので、どなたかお答え願います。また、発議された方はあまり退席なさらないで下さい。説明を求めるときに大変困るので一言申し添えます。
○末廣重恭君(二百六十二番)
これについてお答えしますが、実に簡単なことであります。現行法第六条には、「政談集会は、屋外で開くことができない」と明記されています。つまり、政談のために開かれる集会は、現行法では屋外で行うことはできません。ですから、「屋外で多数で運動をしようとするときは」というのは、政治的な集会ではないと発議者が断定したものと考えて良いと思います。
○赤川靈巖君(百十一番)
私からも説明をお願い申し上げます。第二条第四項には「法律で組織した議会の議員選挙準備のために開く集会は、投票日の五十日前からは第二項の届け出を必要としない」となっていますが、実際に考えると、選挙準備のために開かれる集会こそ届け出を必要とするはずです。それはどういうことかというと、集会法は集会での乱暴を未然に防ぐもので…
○議長(中島信行君)
それは赤川君に申し上げますが、説明だけにとどめておきたい。
○赤川靈巖君(百十一番)
少しご意見をお聞かせ願いたいのですが。
○議長(中島信行君)
今は説明だけでお願いします。
○赤川靈巖君(百十一番)
それならば反対の意見を述べる時に申し上げます。指示に従い控えさせていただきます。
○小西甚之助君(二百三番)
私は大意については特に質問をする必要はないと思っておりますが、いくつかの条項については質問をしておかねばならないことがあります。これは後日、修正の意見を提出する上で大変便宜になることですので、今、説明をお手間をとらせるものでございます。第五条の二項に「法律で組織された議会の議員選挙準備のために開く集会は、選挙権をもつ者に限り本条の制限に従う必要はない」とありますが…。
○議長(中島信行君)
小西君に申し上げますが…
○小西甚之助君(二百三番)
はい。
○議長(中島信行君)
今日は一読会ですので、大体のことにとどめ、逐条に関する質問は、二読会の際になさってください。
○小西甚之助君(二百三番)
なるほど、そうですね…
○議長(中島信行君)
まだ大体の賛否も決まっていません。
○小西甚之助君(二百三番)
ですが、二読会に提出すべき修正案の準備のため、今お尋ねしておけば大変便利だと思いますが、いけないでしょうか?
○赤川靈巖君(百十一番)
私は一つ動議を提出したいと思います。この説明をしてもよろしいでしょうか。
○議長(中島信行君)
よろしいですよ。
○赤川靈巖君(百十一番)
ええと、私のような立場から見ると、これは随分と肝要な問題であると考えます。今後政治思想の発達に伴い、言論は社会にとってなくてはならないものになるでしょう。集会や政社の規則が良いかどうかで、わが国の政治やその他の面で、進歩していくかどうか大きな差が生まれると思います。有名とされる発議者の皆さまや、賛成される方が、立派な改正案を出されたことは素晴らしいことですが、詳細に見ると色々な欠点があると思います。そのような欠点を細かく議論をしても、いたずらに時間を費やすだけで効果は少ないでしょう。ですから議院規則の何条かにもとづきまして、審査委員を選出して、審査委員を通してさらに完全なものを作成して、それから議会に提案すれば、議論する上でより便利だと思います。皆さまも私のつたない説明ではございますが、その意味をご理解いただき、ご賛同頂ければ幸いです。
(山田泰造君、賛成……)
(鈴木万次郞君、「私も賛成でございます」)
(永井松右衛門君、「私も賛成です」)
○堀内忠司君(十二番)
ただ今、百十一番の方(赤川靈巖君)が、議院規則の何条かに従って委員を設けようという動議を出されましたが、それはどのような委員のことでしょうか? 特別委員なら規則にありますが、審査委員とかは何委員のことか分かりませんので、詳しくお答えいただけませんか?
○赤川靈巖君(百十一番)
ご説明申し上げます。条文を正確には覚えておりませんでしたのでこのように申し上げたのですが、もちろんご理解いただけていると思いますが、特別委員を任命するという意味で申し上げました。
○堀内忠司君(十二番)
分かりました。
(影山秀樹君、「今、百十一番の方の意見がありましたが、少し順序が違うと思います。討論終結の動議を提出します。」)
(松野新九郞君、「発案者が欠席なので、末廣君にお尋ねしたいのですが、先ほど議長は小西君に、逐条的な質問は第二読会でするようにと言われましたが、私は、議案について質問がある場合には、議場秩序を妨げない範囲で質問してもいいのではないかと思います。そのように考えて、末廣君に質問いたします。」)
○議長(中島信行君)
二百二十二番、少々お待ち下さい。申し上げることがあります。
○松野新九郞君(二百二十二番)
承知いたしました。
○議長(中島信行君)
つまり赤川靈嚴君が、一つの動議を出し、特別委員に付託するという動議です。これに賛成者がいますので、この採決を取りたいと思います。赤川君の動議に賛成の諸君は起立ください。
(起立者多数)
○議長(中島信行君)
多数ですので赤川君の動議を可決いたします。
これから…
○加藤六藏君(二百四十七番)
我々は、衆議院規則第六十三条の二項に基づいて、各部ごとに連記投票を行うことを…
○倉田準五郞君(二百三十五番)
委員を置くことには同意しますが、各部で選ぶ委員を選ぶとなると、きちんと選出しないと委員からの報告が不十分になるような問題も起こると思います。昨日のように、委員会を選ぶとなると、三十名ほどの中からでは適切な人もいるでしょうが、その部の中で選ばなければならないとなると、候補者も少なくなり、この間、青木匡君が動議を出した時に、委員会を各部から選んだように、選出は各部で行うとしても、選出される委員は、議員全体の中から選出するようにしたいのです。
○議長(中島信行君)
加藤君の意見はそのことですか。
○立入奇一君(百七十四番)
加藤君の意見に賛成いたします。
○松野新九郞君(二百二十二番)
しばらくお待ち下さいと言われたので、待ちました。発言をお許しいただきたく存じます。
○議長(中島信行君)
一読会が終わってしまっています。
○松野新九郞君(二百二十二番)
もう質疑は出来ないのでしょうか?
○議長(中島信行君)
質疑はもう特に必要ないかと思います。なぜなら委員会を設けて委員から報告があれば、その報告についての質疑がありますから。
○高梨哲四郞君(九十四番)
特別委員の選出方法は、面倒な事を取りやめて、時間を無駄にせず、先例に従って各部で一人ずつ選ぶように、あまり先例を変えないようにしたいです。
○議長(中島信行君)
九十四番に申し上げますが、各部で連記投票をして…
○高梨哲四郞君(九十四番)
いいえ、各部で1名ずつ出せばそれで十分です。
○議長(中島信行君)
ですが、加藤君から動議が出ておりますので、決を採ります。
○折田兼至君(三十番)
九十四番に賛成いたします。
○川眞田德太郞君(七十二番)
私も九十四番に賛成します。
○議長(中島信行君)
今、動議が二つありますが、九十四番の動議を先に採ります。すなわち、各部で1名選ぶというのは、連記投票を行わないという案でございます。九十四番の動議に賛成の方は起立ください。
(起立者多数)
○議長(中島信行君)
多数ですので、九十四番の案を可決いたします。
これから委員の選挙をして、ご報告をお願いいたします。その間、休憩いたします。
午後三時四十四分、休憩。
午後四時四十五分、開議。
○議長(中島信行君)
皆様にお知らせいたします。委員選出の結果、第一部:香月恕經君、第二部:宮崎榮治君、第三部:堀越寛介君、第四部:高田早苗君、第五部:二位景暢君、第六部:栗原亮一君、第七部:柴原政太郞君、第八部:末廣重恭君、第九部:加藤平四郞君。
(高梨哲四郞君、「少々緊急の動議があります、用事が終わったら如何ですか?」)
(奈須川光寶君、「緊急の動議があります、ここで述べてもよろしいでしょうか」)
○議長(中島信行君)
よろしいですよ。
○奈須川光寶君(百五十一番)
今、八十二条に基づいて緊急の動議として提出したいのですが、この本会議において、赤松、二田両君の資格審査のために委員会を設置いたしました。その資格審査は議院法第七十八条によって、期限を決めて審査しなければならないと定められておりますが、当時、この資格審査委員を決める際に、期限が定められませんでした。現在、年も暮れに差し迫ってきています。もしこの期限を定めていなかったならば、来年まで持ち越すことになりかねません。これは資格審査について議院法で定められていることだけでなく、衆議院規則においても第六十七条や第六十八条でも期限を定めることは明記されています。それだけでなく、期日を決めないで年を越してしまうということは、この審査委員の皆さんにとっても、本会議にとっても、資格を決定できない状況というのは、大変不都合であると思います。そこで、本員の意見としては、今月24日を期日として審査をさせ、その上で報告を求めて終了させたいと思います。ただし、この件については第六十七条や第六十八条によって進めてられていることかもしれないので、場合によっては、期日を延期する必要性も出てくるかもしれません。しかし、本員の意見では、まずは審査期限を24日と定めたいと思います。
○高梨哲四郞君(九十四番)
緊急の動議ですので、あちらに参りまして発言をしましょうか?
○議長(中島信行君)
こちらで…
(堀越寛介君、「奈須川君の意見に賛成します」)
○松野新九郞君(二百二十二番)
奈須川君の意見に賛成の意見がありましたが、これは衆議院規則第六十八条によって、議長から定めることですので、議員の意見は考慮しないはずです。
○議長(中島信行君)
九十四番にすでに発言を与えてありますので…
(高梨哲四郞君、演壇に登る)
○高梨哲四郞君(九十四番)
私は本議員の法律改正案を出したいと思っております。そのことについて、賛同を求めたいと思います。前例に則って、決定案と理由を簡潔に説明いたします。私が提出する法律修正案は、すなわち、議院法第十九条の修正案です。その決定案は、議院法第十九条を「各議院の議長は歳費として1,200円、副議長は600円、貴族院の被選及勅任議員と衆議院の議員は300円」と改め、その以下は議院法第十九条のままとします。このような法律修正案を提出しようと思っています。その理由は、今日からは見栄や虚飾ではなく、質素倹約に務めるためで、人民の人気を得るためではなく、出来るだけ節約しなければならないことだと思います。
(植木枝盛君、「緊急の動議とは見なせません」)
本院からこのようなことを提案することがよろしいのではないかと思います。予算案は既に出来るとのことですので、緊急のことだと思います。なにとぞご賛同くださいますようお願いいたします。
(東尾平太郞君、「緊急のことではないと思います。」)
(大江卓君、演壇に登る)
(奈須川光寶君、「緊急の動議を、決定をお願いします」)
○大江卓君(百五十七番)
皆様、私は予算委員会の結果についてご報告するつもりなのですが、その結果とは、予算委員は十分な審査を終え、皆様にご報告しなければならないところですが、議院法の規定により定められた時間内で、私達委員の審査を終えることができませんでした。それはとても残念なことです。しかしながら、今年は初期の国会でありまして、予算の審査において、慣れていないところがあるかもしれません。また私たちが政府委員に質問をした事項に対して、期限内に答えを頂けなかったこともありました。色々な事が重なったため、定められた期限内に報告を行うことが出来ませんでした。私たち予算委員は、当月六日をもって予算委員会を成立させました。それから分科会を分け、第六分科を置きました。第一分科は、大蔵省の所管で、内閣、枢密院、貴族院、衆議院、会計検査院、行政裁判所、官報局について審査し、第二分科では、外務省、司法省の所管を調査しました。第一分科の委員を9人とし、第二分科の委員も9人とする。第三分科は、委員が11名で内務省と文部省の所管を調査いたしました。第四分科は委員13人、大蔵省所管のうち第一分科に属するものを除いた、大蔵省の所管を調査いたしました。第五分科は委員が10名で海軍省、陸軍省を調査しました。第六分科は、委員が11名で、農商務省と逓信省の所管を調査し、その他に、特別会計に属するものもその管轄に準じて調査を致しました。しかし、先程申し上げました通り十分な調査を行うことが出来ず、期限内にご報告をすることができなかった理由は、分科会ごとの調査を進めていく内に、一昨日に至りまして…昨日まで分科会で調査した内容を総会に諮る手筈となりました。ところが分科会より提出された調査案はまだ印刷を終えていないものがあったり、筆写も出来ていないものがあったりで、全員の手元に配布することが出来ませんでした。ようやく今朝になって、一部配布をする事ができましたが、全てを配ることはできませんでした。今日の午後になってようやく全員に配布が終わったというところもある状態です。その様な状態で、今日の夕方まで協議をしましたが、この協議を終えたものは、わずかに第一分科の内容を大体審査をしただけという有様で、充分な審査をしたとは言えません。よって、この委員会の結果として、予算委員の審査を終了して皆様にご報告するという事が出来ませんでした。その事を、皆様にご報告することにとどまりまして、この予算委員が調査をした内容については、ご説明できませんことをご了承いただきたいと思います。このことを皆様にご報告いたしまして、再度このことについてご考慮をお願いしたいと考えています。
○島田三郞君(二百四十六番)
ただいまご報告にありました、予算委員長にお尋ねしたいことがあります。少し長くなりますので、そちらに参って申し上げた方がよろしいかと思います。
○議長(中島信行君)
演壇に来て質問するとおっしゃるのであれば構いません。
○島田三郞君(二百四十六番)
予算委員の皆様を代表しまして、今、委員長よりご報告にありましたことについて、大変進退に困る場合になってしまったと感じています。本員自身の規律と、今後どのように対応すべきかの方向性を定めるため、事実関係を委員長にお尋ねしたいと思います。当然のことながら報告委員が報告を行う事が出来なかったというお話については、誠に残念であります。委員の皆様も同様の気持ちだと思います。このようになった理由は、15日以内に報告をしなければならないという議院法第四十条に重なる理由があったと思われますが、皆様は当然、この条文についてご存知だったと思います。ですからこの制限のため報告が出来ないという報告は、不誠実であったと言わざるを得ないと考えています。しかしながら、この条文は報告できない場合に、どうすべきかを定めておらず、そのため今回の様な報告となってしまいましたが、今後どの様な対応をすべきかを決定するためには、なぜ今回このような報告となったのかという事実を明確にしなければ、私が信頼して、この重大な案件をお任せした皆様を再雇用することが正しいのか、それとも見限り別の方法を探るべきか判断できないと思っています。そこでその事実関係について説明していただきたいのです。
様々な原因があったと思いますが、先ほど、委員長からは政府委員に質問しても適切な回答を得られなかったことや、その他もろもろのことを言われておりましたが、それについて詳細を教えていただきたいです。もし委員会が、この期限内に報告をできなかった理由が委員の皆さまではなく、他に避けられない理由があるのであれば、それをもって委員各位への信頼を失うということにはならないと考えております。しかしもし他に避けられない事情などではなく委員の怠慢が原因でこの様な報告をされるのであれば、委員会にはこの委員会全体を裏切ったとして相応の対応をしなければなりませんし、その場合には、再度皆様にご尽力いただき、この重大な案件を再委託しようとは考えません。私は改めてこのような労力を費やしていただくべきなのか、あるいは別の方法を採用すべきなのかを決定したいと思っておりますので、そのために、事実について委員会がどうしてこのような結論になったかを、委員会委員長に、この場にて詳しく報告していただく必要があると考えておりますので、そのことを委員長にお尋ねします。
○議長(中島信行君)
委員長は説明がありますか? どうですか。
○大江卓君(百五十七番)
説明を致します。
(大江卓君、演壇に登る)
○大江卓君(百五十七番)
今、島田君からご質問いただきました。このご質問に対し、私がお答えしてもおそらく島田君にご満足いただけるようなご回答をすることは出来ないと思います。しかし、その中でも一つ、二つの点、つまり本日まで報告が出来なかった原因について、島田君にご説明したいと思います。まず、今回の報告について、今日まで委員の皆様が努められた点は、非常に勤勉であります。議場に来ない時間にも、朝9時からあるいは夜は11時ごろまで、ほとんど昼夜問わず熱心に調査をされておりました。この点においては、私は、怠けた方はおらず、全力を尽くしてくださったと信じております。それにも関わらず、今日、皆様にご満足いただける報告が出来なかったということは、夜を日につぎ調査をしたとしても、15日間という期間で定められた事項をすべて調査することはどう頑張っても無理だった、というのが大きな理由であり、先程、私が申し上げたことにもありますが、「いろいろな」という言葉に過剰に反応なさったようですが、この細部については申し上げることはできません。
また、それぞれの分科において、それぞれの理由があるため、すべて把握しきれていないこともあります。ただ、先ほど申し述べたように、この15日間は初期の国会で、私たちも未熟である中で勉励したとしても、目的を達成することができなかったことを以てご報告させて頂くしかありません。詳細については、申し上げる事が出来ません。
(この時、山田泰造君が質問を起こしたため、大江卓君は演壇にとどまる。)
○山田泰造君(二百六十三番)
今、調査委員長から説明がありましたので、大意は理解できました。このような予算については、帝国議会にとって非常に重要でありますので、15日の猶予があるという事ではないでしょうか。今回の件は初めてのことなので、審査は充分に行えないと思います。ですが、この期日が来て、調査できなかったという報告は少し納得できないところがあります。島田君がどうして出来なかったのかと質問するのは最もなことです。審査にも種類があるでしょう。深いものから浅いものまで。大体のものから細かなものまで。今回の件は、細部までの報告はできなくとも、大まかな事柄なら報告できないこともなかったはずです。委員会が、大要についてでも報告をして、その説明の際にお答えすることができないのであれば、再度調査をすることになったと思います。今日の状況では、概要も、詳細も分からず、調査出来なかったというのでは、責任を果たせないのではないでしょうか。そこで詳細については伝えられないのであれば、大綱についてだけでも報告をお願いします。それも不可能なのでしょうか? それについて質問をさせてください。
○大江卓君(百五十七番)
今、山田君からのお尋ねについてお答えをいたします。最初に申し上げたとおり、それぞれの分科において調査は完了しております。しかしそれぞれの分科から委員会全体の会議で審査が通っていない以上は、調査が終わったということにして報告をすることができないのです。六つの分科で調べたものが、その委員長たちから、それぞれの担当の幹事の手元まで差し出されたところまでは完了しました。先ほども申し上げましたように、昨日にかけて会議をする予定でしたが、それができず、今朝になってからやっと会議を開いて、一分科が調べた内容だけ、大体の内容で審査が終わっている程度で、委員会全体の審査を終わったわけではありません。
○山田泰造君(二百六十三番)
良く分かりました。そうすると、審査が出来上がったということではない。つまり分科では調べたが、委員会として手続きを終えていない状態であり、それをもって議員に関係はないという状態であるということなのですね。であれば分科で終わっているものでも結構なので、ご報告してはいかがでしょう。それを尋ねています。それもやはりできないという事でしょうか。それについて、お尋ねしています。
(この時大江卓君、「答える必要はない」と発言、以後、議長とやり取りがありましたが、聞き取ることができませんでした。)
○議長(中島信行君)
楠本正隆君より先に発言の通告があったので、それを終えてから…楠本正隆君。
○島田三郞君(二百四十六番)
今一つ、質問を続けたいのですが、ただいま楠本君の動議がどういったものなのかはわかりかねますが、必ず何らかの打開策についてご説明があるだろうと思います。そのことを踏まえた上で事実を明確にしておかないと賛同や反対をすることができないため、再度質問をさせていただきたいのです。
○議長(中島信行君)
構いません。
○島田三郞君(二百四十六番)
今の委員長の言葉を聞いても、私は納得することができません。今の状態を考えると過去のことについて問い詰めても仕方がないことだと思いますし、委員の怠慢であるとか責めるという意図で質問をしているのではありません。私は、ただ、皆様を信用するべきなのかという点を判断するために質問をしております。
各分科に分かれて手続きが円滑に運んでいる点も、委員会をまとめようとしていた点で時間を十分に取れなかったのだということを述べられていましたので、委員会は各分科で力を尽くした、ということは理解しています。それにも関わらず今回のような結果になったのは、やはり委員長が述べられたように、時間が足りなかった、法律で決められている期限が原因であります。委員会としてどのような報告をすべきかという点を考えると、結果が出せなかったとしても経過報告はしなければならないということになりますので、委員会としても出来る限りのことは行ったはずです。この報告をしたことにより、議会としてもこの事を理解できるかと思っています。であるならば、委員会として、今まで調べられていた大まかな部分だけでも報告をして頂き、それから改めて議会がどのような方向に進むか検討するために、現状を示していただくことが重要ではないかと、私は思っています。
(藤田茂吉君「議長、よろしいでしょうか?」)
(以下、未完)
この議事録は、明治23年(1890年)12月20日に行われた第一回帝国議会衆議院の本会議の様子を記録したものです。議論は時に白熱し、議員たちは互いに意見をぶつけ合っています。
全体としては、以下の3つの大きな議題がありました。
地租徴収期限改正案の審議:議論は、納税期限の改正にあたって、各地域の実情を踏まえ、より適切な時期を定めるため、委員会を設置するかに焦点を当てました。最終的には委員会を設置することが決定しました。
衆議院規則の一部改正案:この議題は、議場における発言者を識別しやすくするためのルール改正に関するものです。具体的には、氏名に加え「番号」も併用すること、それに関する規定の修正案を巡って議論がありました。この議論では、効率化と個人識別という実用的な観点だけでなく、氏名を尊重するという人間の尊厳に関わる部分まで議論されています。最終的に修正案は可決されましたが、その過程では議員間で意見の対立も見られました。
集会及び政社法改正案:この改正案では、政談集会と政治団体の規制について、時代に合わせた変更を行うことや、政治活動の自由度を上げることが議論されました。しかし議員間の意見が対立したため、最終的には特別委員会を設置し、さらに審議を行うことになりました。
各議論のポイントと当時の社会状況
地租徴収期限改正案:明治時代の日本では、地租が国家財政の大きな部分を占めていました。しかし、地域によって農作物の収穫時期が異なるため、一律の納税期限が農民にとって負担になることが問題視されていました。この改正案は、地域ごとの状況を考慮した合理的な税制を求める当時の動きを示すものと言えます。
衆議院規則の一部改正案:この議題では、議員間の識別問題から議論が始まりましたが、議論が進むにつれて、「名前」で呼び合うべきか、「番号」を使うのか、という個人認識、人権に関わる議論にもなりました。当時の議会では議員の数が多く、混乱が生じやすい状況であったと読み取れます。また、西洋化の進む中、日本固有の慣習をどこまで取り入れていくかという思想的な部分が見られます。
集会及び政社法改正案:この議題は、政府による政治活動への規制を緩和し、集会や結社の自由を広げようとする試みです。当時の日本では、言論や集会の自由に対して一定の制限が加えられていたことが分かります。改正案の発案者は、思想、信条、性別に関係なく、集会に参加できるような、自由で闊達な社会の実現を目指していたと考えられます。この法案について、賛否を巡る白熱した議論は、国民の権利、自由とは何かを、当時の議員たちが真剣に議論していた証でしょう。
議事録から見えてくること
議員たちの個性:議員一人一人の個性や主張が感じられます。議論に対する姿勢、発言の仕方も、個性的です。例えば、濱野昇議員は「やぶ医者」という言葉で自らを表現し、皮肉を込めて意見を述べることが多かったようです。
手続き重視:議会での決定には、所定の手続きをきちんと踏まえることが重視されており、議長の進行、議院規則の遵守などにもこだわっている様子がわかります。
未熟さ:この議事は初期の帝国議会で行われているため、会議の進め方などに未熟な面が見られます。例えば、議事進行における混乱や、発言者が重複してしまう場面などがあります。しかしそれも、民主主義を始めたばかりの初期の混乱と言えます。
言葉遣い:当時の議事録は文語体(候文)で書かれています。議員の発言も、現代の言葉とは異なる言葉遣いで行われています。
まとめ
議員たちの情熱、葛藤、当時の社会の様々な問題点、そして何より民主主義を創り上げていく、その熱意をうかがい知ることができます。