ただ、俺と桐山は橋本を助けると決めたのは良いが、いったいなにからしたら良いのかという感じではあった。
闇金だからといって、いきなり事務所に乗り込んで叩きのめしたら良いということでもないように思う。
そんな乱暴なことができるような俺たちではない。
俺と桐山は良い方法がないものかと話し合ったが、なかなか答えが出なかった。
それと桜川を仲間に入れようとも言っていたので、桜川にその気があるか、まずは確認することにした。
俺が桜川に連絡をし、三人で会うことになった。
会って少し雑談をし、本題に入った。
「この前、タカシマンの話をしたと思うんだけど……」
俺が切り出した。
「そうね」
「俺と桐山でやってるんだけど、桜川も仲間にならないかなと思って」
「えっ、私も?」
桜川は予想外のことを言われたという感じであった。
「そうなんだ。俺と桐山だけでもできないことはないんだけど、桜川も仲間にいた方がより助かるからさ」
「やる。実は私、前にその話を聞いた時にやりたいって思ってたの」
桜川の声が弾んでいた。
「そうだったんだ。なんだ。じゃあ、一緒にやろう」
俺は嬉しかった。
これで今後桜川と会う理由もできた。
「よし、じゃあ、これから仲間としてよろしく」
と桐山が言った。
「うん。よろしくね」
桜川も仲間になれて嬉しそうだ。
桜川としても、日常になにか刺激が欲しかったのかもしれない。
「ところで、橋本君のことってどうなってるの?」
桜川は言った。
「ああ、そのことなら、ある程度状況はわかったよ」
桐山がここまでの流れを説明した。
「そうなんだ。じゃあ、橋本君はその女の子に騙されたんだね」
「そうだと思う。おそらくその女は初めからそのつもりでマッチングアプリで男を探していたんだろう」
「でも、闇金とつながりがあるってことは、その子もその世界の人ってことね」
「そうなるね。どの程度のつながりかはわからないけど、普通の女子なら闇金とつながりなんてないから」
「ただ、俺と桐山はこれからどうしたらいいか悩んでいるんだ。いくら闇金だっていっても、いきなり乗り込んでいくわけにもいかないし、それに乗り込んで行っても橋本から借金の取り立てをやめないと意味ないしね」
「それもそうね。じゃあ、まずはその女の子から調べるのがいいんじゃない?」
と桜川は言った。
「なんで?」
「だって、その子がそもそもの発端なんだし、その子がいなければ闇金だって出てこないわけでしょう」
「まぁ、そうだね」
「だから、まずはその子を調べるべきよ。そうしたら絶対解決策が見つかるはずよ」
桜川は自信があるようだった。
「それじゃあ、まずは女から調べるか。その女がどういう素性なのかわかれば、確かに今回のことはある程度先が見えるかも」
と桐山も言った。
「橋本はどれぐらい女ことを知ってるのかな?」
俺も桐山も橋本と会った時に、あまり女のことについては聞かなかった。
「あの感じだと、連絡先と住んでる場所ぐらいしか知らないかもな。それ以外になにか女から聞いてたとしても、嘘の可能性もあるしな。だいたい、親が病気っていうのもおそらく嘘だろうし」
と桐山。
「そうだな。じゃあ、橋本に女の住所とか確認してくれよ」
俺は桐山に言った。
「オッケー、訊いてみる」
桐山はその場ですぐに橋本に連絡して女の住所を訊いた。
「お、返信が来た」
桐山は俺と桜川にスマホの画面を見せた。そこには女の名前と住所が載っていた。
「アダチミヨか」
俺は書かれている名前を読んだ。画面にもカタカナで書かれている。
「これって、橋本君は彼女の名前がどんな字かも知らないってことかしら?」
桜川が言った。
「たぶんそういうことだろうな」
と桐山。
「そんなことあるのか? 自分の彼女の名前の漢字も知らないなんてさ」
「でも、女の子の方も初めから騙すつもりなら、できるだけ個人情報はわからないようにするんじゃないかしら」
「ってことは、この名前も本名かわからないな」
と桐山はボソッと言った。
「でも、この住所はたぶん本当でしょ?」
「そうだろうな。橋本も彼女の家ぐらいは知ってるだろ。一応それなりに付き合ってたことになってるんだし」
桐山は言った。
「じゃあ、またこの住所を見張るか?」
と俺は言った。
「そうだな。それがいいと思う。それで女の後をつけたらなにかわかるだろう」
「じゃあ、それは私がやるわ」
と桜川が言った。
「え、いいの?」
「いいわよ。それにずっと見張る必要もないでしょう。橋本君にどんな時間にいつも会ってたとか聞いたら、この女の子のだいたいの生活パターンがわかるでしょうし」
桜川はかなりやる気になっているようだ。