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第74話 中学の思い出④

 翌日から桐山は橋本にいろいろと話を聞いた。

 そして数日後、桐山は俺を家に呼んだ。

「いろいろと事情はわかったよ」

 桐山が言った。

「どんなだった?」

「まず借金をしているのは本当だ。借りている先も闇金らしい」

「そうか。大変なのは事実なんだ」

「そういうことだ。それで、女にお金を盗られたって話だけど、それに関しては少し複雑だ」

「複雑?」

「うん。まず、女と知り合ったのはマッチングアプリということだ」

「またアプリか。いまはアプリで知り合うってことが多いんだな」

「それはあるだろうな。それで、橋本は知り合った相手と何度か会っているうちに、相手の女が親が病気で困っているって話し出したらしいんだ」

「ああ、なるほど。それで橋本はお金を貢いだってことか。まるで昭和のドラマみたいな話だな」

「それだったら簡単なんだけど、そうじゃないんだ」

「そうじゃない?」

「橋本はそれを聞いて、ヤバいと思ってその女と距離を取ったらしいよ」

「へぇ、やるじゃん。あいつも成長したな」

「まぁ、女の方もお金を直接的に要求してきたわけじゃないみたいで、結局はつながりは保ったままだったらしいけどな」

「ほう、それで?」

「それで、ある時、女が投資をするって話をしだしたらしい」

「じゃあ、その投資に橋本も誘ったとか?」

「いや、誘ってないんだ」

「ええっ、いったいどうなってるんだよ」

「まぁ、聞いてくれ。橋本が言うには、その投資っていうのがボートレースに関するものらしくて、それを確実に当てる方法があるってことだ」

「胡散臭すぎるだろ。ボートレースって競艇だろ? 確実に当てる方法なんてあるわけないだろ」

「そう。あるわけない。橋本もギャンブル好きでもないし、興味はなかったそうなんだ」

「じゃあ、なんなの?」

「その女がその投資をするってことらしい」

「ふーん。まぁ、親が病気でお金がいるってことなんだろうしな。でも、それは勝手にやらせておけばいいんじゃないの?」

「まぁ、そうなんだけど、女が競艇場に一人で行くのが怖いから一緒に来てと言われて、ついて行ったらしい」

「まぁ、女子一人で競艇場は怖いか」

「その女はどこかでボートレースに関する情報を買っているようで、かなり当てたらしいんだ」

「さっき言ってた確実に当てる方法ってことか」

「そうだ。女があまりに当てるんで、橋本も舟券を買ってみたんだって。そしたら本当に当たって結構儲けたらしい。そこからどんどんボートレースにはまって行って、借金をするようになったってことだ」

「うん? ちょっと待てよ。まず、その確実に当てる方法ってのはやっぱり嘘だったってことか?」

「当然な。初め行った時に当たったのはなにか細工がしてあったのか、たまたまなんだろう」

「じゃあ、女にお金を盗られたっていうのは? その話だと単に博打で借金をしたってことだけに思えるけど」

「橋本はお金が必要で、初めはテレビでも宣伝してるような消費者金融で借りてたけど、それでも足りなくなって闇金にいくことになるんだ。それで橋本が言うには、その女がその闇金とつながっているって言うんだよ」

「ふーん。でもそれってホントなのか?」

「俺にはわからんけど、橋本はそう思っているみたいだ。根拠はイマイチわからないけどな」

「でも、なんでそう思うか橋本に訊いたんだろ?」

「訊いたけど、話がぼんやりしててよくわからなかった」

 桐山は首をかしげていた。

「うーん。でもそれだとなにがどうなってるのかわからないな。橋本が闇金でお金を借りていて困っているのは事実だとしても、原因が博打だとなぁ。女が関係しているようにも思えるけど、闇金と女がつながってるっていうのは無理がないか?」

「だから複雑だって言っただろ。とにかくその闇金とか女を調べないとなにもわからないよ」

「そうだな」

 桐山の言うとおりだ。

 この状態ではなにもわからない。

「ところで、桜川のことだけど……」

「なに?」

「桜川を俺たちの仲間に入れたらどうだ?」

 桐山は突然そんなことを言いだした。

「桜川を仲間に?」

「そう。俺たちのやっていることも知ってるわけだし、いっそ仲間にした方がいいんじゃないかって思うんだ」

「ま、まぁ、そんな気もするけど……」

 俺は桜川を仲間にすることは歓迎ではあった。しかし、桜川がこんなことを一緒にしたがると思えなかった。

「女の仲間がいた方が、なにかと便利なこともあるように思うんだ」

「そ、そうか」

「俺一人で調べるのって限界があるしな」

 確かに桐山が一人で調べているから、大変ではあるだろう。

「でも、あいつ、やるって言うかな?」

「たぶん言うと思うよ。この前話してた時にかなり興味があるような目をしてたし」

 桐山はかなり自信があるようだった。

「じゃあ、誘ってみるか」

「そうしよう」

 俺たちは桜川を仲間にすることにした。

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