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サプライズ
さらだ
現実世界現代ドラマ
2024年11月24日
公開日
1,625文字
完結
「笑い」の短編小説コンテストに応募しています。

彼氏と公園で休憩することになった。
彼氏がトイレに走った後、驚くべきことが起こる。

サプライズ

2年付き合ってる彼氏と展覧会へ行った後、会場がある建物のちょっとした公園で休憩することになった。

「ちょっとトイレに行きたくなった。ついでにコーヒー買ってくる。待ってて、ごめん!」

と焦りながら建物の方へ走っていった。


「時間かかるかな・・・」

私は空いていたベンチで待つことにした。


暖かく天気のいい日で、待たされる時間も悪くないなとぼーっと空を見ていたら、歩いていたサラリーマンがいきなり踊りだした。

ビックリしていたら、仕事の休憩中らしきお姉さんも踊りだし、日光浴していたおじさんも踊りだし、ビニールシートでまどろんでいた親子も踊りだした。

いつの間にか音楽も流れてて、20人くらいの人が踊っている。


何かの撮影かと思い、端に移動しようとベンチを立つと、きれいなお姉さんが出現し、手を広げて、立たないで座っててとジェスチャーで伝えてきた。

その通りに座って前を見ると、20人くらいの集団がモーセのように左右に割れ、いつの間にか敷かれてたレッドカーペットの先に、スーツ姿の彼氏が花束を持って立っていた。


私は心臓が止まるかと思うぐらい驚いて、同時にああそういうことかと覚悟を決めた。


彼氏は緊張した顔でレッドカーペットの上を歩いてきて、私の目の前で花束を差し出した。

「こんなことになってごめん。君の笑顔が好きだ。バラの花束を受け取ってほしい。できたら笑顔で」

強張った顔だったのだろう、言われて私は笑顔にしたつもりだけど、引きつった笑顔になっていたかもしれない。

「ありがとう」

私は花束を受け取った。


彼氏は胸の内ポケットから小箱を取り出し片膝をついた。

「君の笑顔が大好きだ。君の笑顔を守りたい。君を一生守らせてくれないか。結婚してください!」

彼氏は小箱の蓋を開けた。

キラリとした指輪が見えた。

「はい!」

彼氏は震える手でたどたどしくなってたけど、私の左手薬指に指輪をはめてくれた。


どうやら、彼氏の職場の同期達が協力してくれて、このプロポーズを決行したそう。

最初に踊りだしたサラリーマンは、元演劇部の同期らしい。

会場の公園を借りて、音響を整え、同期の知り合いに声をかけて、何度か練習したようだ。


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あれから数年。

今日は結婚式。

彼氏は旦那になりました。


旦那の同期(最初に踊りだしたサラリーマン)も出席するので、サプライズの覚悟をしていたら、やっぱり踊りだした。

旦那の友人は6人しか招待できなかったのだけど、その6人が時間差で踊りだした。

プロポーズの時の音楽が流れ、式場のモニター画面にはプロポーズの場面を編集した映像が映し出された。

私は驚いてしまったけど、途中からはサプライズを楽しんで眺めていたと思う。


やっと終了した、と思ったら、プロポーズの時の音楽のサビが再び流れ出し、急に全員が踊りだした。

車いすの祖母も踊っている。

腕を動かすだけの簡単な踊りだけど、結婚式に参加した全員が照れた顔で踊ってくれている。

隣にいる旦那も笑顔で踊っている。


少しして、旦那が立ち上がり、私のそばまできて片膝をついた。

「こんなことになってごめん。君の笑顔が大好きだ。俺を選んでくれてありがとう。一生大切にするね!」

「はい!」

彼氏の右手が差し出されたので、恐る恐る私の左手をのせた。

泣き笑いになって化粧もとれてしまっただろうけど、ちゃんと笑顔でいられたと思う。


どうやら、旦那の友人と結婚式場の人も協力して、サプライズを決行したそう。

結婚式が始まる前、出席者全員で少し練習したそうだ。

もともと出席者全員に小さい役割をお願いする予定で、招待状に役割依頼の付箋を入れておいたので、出席者は踊ること(サプライズ)を了承してもらえたようだった。


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それから数年経った本日、私の妊娠がわかった。


旦那にどう伝えようか。

旦那が行った今までのサプライズを考えると、踊りながら伝えるのがよいか。

でも、転んだら大変なので、私は言葉だけで伝えようと思う。


プロポーズの時の音楽をBGMに、旦那の帰りを笑顔で待つつもりだ。



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