「……あれが
「このさらに奥の山に、鬼が住んでいるらしい。
つまりあの家に今、鬼はいない。
あそこを占拠してから、山奥にあるトレーラーハウスとやらに
突撃するぞ」
暗視スコープで確認しながら言葉を交わす男たち―――
襲撃に来た
彼らは慎重に距離を詰めて行き、
「まだ明かりが点いているな」
「人間も住んでいるという話だ。
だが油断はするなよ。
「田舎の家は出入り口が多い。
各所から一気に入り、制圧する。
全員囲め! 一ヶ所につき2人以上で突入を……」
そして彼らが、目白家の敷地内へと足を踏み入れた瞬間、
全員のトランシーバーから一斉に声が入って来た。
気付かれてはならないと、リーダー格の男が慌てて
その無線機を取って対応し、
「こちら『月』部隊。どうし―――」
『誰かいないか! こちらは失敗した!!
繰り返す、失敗した!!』
その声を聞いた彼らは顔を見合わせる。
しかし表情に動揺の色は無い。
実は彼らは、駅から今までの間……
続けていた。
それは襲撃を察知した彼らが逃げ、作戦自体が失敗に終わる事を願っての
ものであり、
「了解。『影』部隊は失敗したのだな?
となるとこちらも単一での作戦は実行不可能だ。
『影』部隊は直ちに撤退し―――」
『ちっ違う!!
こちら『影』部隊はもう逃げるどころじゃない!
味方は全員返り討ちにされた!!
お、俺もどこまで逃げられるか』
最悪の報告に、彼らは顔色を変える。
「どういう事だ!?
そちらの方に鬼がいたのか!?」
『違う! 見た事も無い化け物がいたんだ!!
そいつは角や牙こそ無かったが、目と耳が2つずつあり、
鼻と口が1つずつという恐ろしい見た目で―――』
「何だと!?
……っていやお前、そりゃ普通じゃねぇか?」
焦る口調につられたが、リーダー格の男は冷静になって聞き返す。
『あ、バレた?』
「っ!? 何者だ貴様!」
リーダー格の男が問い質すと同時に、
「くっ!!」
「ぬうっ!?」
と、他の『月』部隊メンバーの声が上がる。
見ると、
取り押さえていて、
「集まれ!!」
そこでリーダー格の男が距離を開け、捕まらなかったメンバーが彼の周囲を
囲むように円陣を組む。
訓練されたであろう動きで、その動作が終わるまで3秒もかからず、
「一ヶ所に固まってくれるとは好都合だっぺ」
その声と共に、3メートルほどの高い波が突然発生し―――