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第293話・対応04


「その旅館、『源一げんいち』で……

 猫又ねこまた・一つ目小僧・唐傘からかさお化けがいたとな?」


「それはすでに情報にあったから驚く事ではないが―――

 その全員が人間の姿に化けられている、というのは」


その報告を聞いて、長老連中はざわつき始める。


「あ、これが彼らの人間の時の姿です。

 というかあっさりと、安武やすべさんのところにいた方々が

 話してくれまして」


「自分たちの正体があやかしという事をか!?」


そう聞き返されたおぼろの若者は、うなずいてスマホの画面を

彼らに向ける。その動画を見た老人たちは、


「何だ、これは」


「普通に働いているな……

 人間と何ら遜色そんしょくない」


「いや待て。

 どうして彼らはお前たちに正体を明かしたのだ?


 お前たちの事を見破っておったのか?」


その問いには、十六夜いざよいの若者が口を開き、


「そりゃあ、あんな電波も届かない田舎に行く若者3人なんて、

 不審者以外の何者でもないでしょう。


 それに鬼がおりましたからね。

 多分、最初から見破られていたと思います。


 その上で正体を明かしたかと」


そう―――実は彼らが介抱され、他の妖怪たちも集結した際、

それぞれが鬼である事、川童かわこや倉ぼっこである事は、

それとなく明かされていた。


ただその内容はというと、


『実はアタイは鬼でのう。

 嫁になったらそのまま鬼嫁になるのだ!』


『オラはこの頭の通り河童だべよ』


『ふっふっふ……

 それについてはこの家の座敷童ざしきわらしと呼ばれるボクから答えよう』


という具合に、普通の人間に取っては冗談にしか聞こえない感じで

彼らは情報提供していたのである。


「ただ彼らは、自分たちの事をしつこく聞いてきたりはしませんでした。


 鬼もいましたし、あんな田舎―――

 いくらでも闇に葬る事は出来たにも関わらず、です」


それを聞いていた司会役の男は少し考え、


「戦闘能力を考えれば、敵対するほどの事も無いと思われたか……

 だが調査しに来た事を不問とし、逆に情報を与えるとは?」


「何の狙いがあるのか―――」


「こちらがほっする情報をあえて与えて帰らせた? まさか……」


そこで老人たちは、また何やら話し続けた。




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