「じゃあ、行ってきまーす」
「おう、気を付けてな」
午後8時半を過ぎた頃―――
荷物を背負って手を振る
彼女……いや、彼が持って行くのは大量のネズミの天ぷらだ。
週一くらいの割合で大量にネズミを獲って来て、それを俺に調理して欲しいと
せがみ―――
それを『外で食べるから!』とどこかへ持っていく事が続き、
ある時『仲間がいるのか?』と聞くと、『どうしてわかったの!?』だと。
わからいでか。
そしてそれからは俺公認で、仲間に届けるようになったのである。
「野狐ちゃん行ったー?」
「仲間が30匹ほどいると言ってたっぺ。大変だっぺよぉ」
後ろから人間Verの倉ぼっこと
「お前たちには、野狐のような同じ仲間はいないのか?」
ふと気になって聞くと、
「僕は家の守り神みたいなものだし、友達は本来同じくらいの年齢の
子供たちだからねー」
「オラにもいるにはいるっぺが、みんな遠くの川や池に引っ越しちまったべ」
隣村の仲間もほとんどいないって言ってたしなあ。
まあ大量に来られても、それはそれで迷惑だけど。
「……野狐はどうして仲間たちを
俺がふと疑問を口に出すと、
「もう力を失っていて、ほとんど化けられないんだって」
「人間の姿ならともかく、狐にいっぱい来られても困るっぺ?」
確かにそれもそうか。
人家に近付く野生動物の群れなんて、下手したら駆除一直線だし。
「じゃあアイツが、今の野狐たちのボスってところか?」
次の疑問に対し倉ぼっこと川童は首を左右に振り、
「一応、長老みたいな者はいるらしいよ」
「まあそれほど主従関係が強いわけではねぇと思うっぺ。
人間の姿になれる野狐に、出来る事をお願いしているんだと
思うっぺよ」
ボスは別にいるけど、無理やりというわけでもないという事か。
まあ怒らせて群れから抜けられたら、困るのは群れの方だからな。
「それじゃーミツ、アレやってアレ。あの田舎が舞台のホラーゲーム」
「いやあ、最近の映像の進化は本当に怖いっぺよ」
「お前ら妖怪だよな? な?」
そんなくだらないやり取りをしながら、俺たちはゲーム機のある
倉へと向かった。