「……しつけぇなお前は。
俺は無職無収入のお前と違ってヒマじゃないんだがな」
俺はクソ兄貴、
なるべく連絡は取らないよう対応しているのだが―――
手を変え品を変え番号を変え、こうしてしつこくコンタクトを
取ってくる。
知らない番号は基本取らないようにしているのだが、職場の個人から
かかってくる場合もあるので避けられないのだ。
『おい、それが兄に向かって言う言葉か?』
「お前に取って弟ってのは、いつでも好きな時に命令したり
サンドバッグにしたり、勝手に物を売ってもいい奴隷の事か?
そんな兄はいらねぇんだが」
『……チッ、ったくよぉ、昔の事をいつまでもネチネチグチグチと』
「そういうのは加害者が言っていい言葉じゃねぇんだよゴミ」
相変わらず反省のはの字も無い態度だ。
適当にあしらった後、この番号も着信拒否にするかと思っていると、
『いやまあ待ってくれよぉ。俺ちょっと困っているんだ』
「俺の物を売ったり金を奪った時、やめてくれ、それは必要なんだって
言ったよな? そんな時お前は何て言った?
『オメーが困るのが俺に何の関係があるんだぁ?』だっけ?」
いくら情に訴えようと、返す過去の悪行に事欠かないからなコイツは。
さすがに電話の向こうでしばらく沈黙してたが、
『そーゆー事を言ってもいいのかなぁ~?
お前よぉ、そっちで老舗旅館と取引しているって話じゃん?』
妙な方向に話が飛び、興味が出た俺は先を聞いてみる。
「それがどうした?」
『個人売買でも税金ってかかるんじゃないのかなぁ~?
ちゃんと対策はしているかぁ~?
それにお前の会社、副業はOKなんだっけぇ~?』
なるほど。それで弱みを握ったと思い込んでいるわけか。
「言いたい事はそれだけか?」
俺が全く動揺しない事が予想外だったのだろう。
向こうから焦るような声が漏れ聞こえるが、
『強がってんじゃねぇよ!
後悔してからじゃ遅ぇからな!!』
と捨て台詞を残してガチャ切りされ―――
「ミツー?」
「ミツ様?」
「どうしたんだべ、ミツ」
倉ぼっこ・野狐・
「あぁゴミだゴミ。ゴミが電話かけて来たんだ」
そして俺の返答を聞いた3人組は、
「へー、最近のゴミって高性能なんだね。電話までかけてくるなんて」
「都会は進んでおりますのね」
「最近
と、裏事情を知ってか知らずか兄には触れず……
全員で笑い合った。