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俺の可愛い妹系ヒーラーが職場の鬼上司だってマジ!?
俺の可愛い妹系ヒーラーが職場の鬼上司だってマジ!?
橘まさと
恋愛オフィスラブ
2024年11月22日
公開日
1.9万字
連載中
 現代日本で、新人の派遣社員として動画制作会社で働いている主人公の近藤ユウ。
 彼の趣味はゲームであり、特にはまっているのがMMORPGの『Familia of Eden(通称FoE)』である。剣と魔法と使い魔を使う王道ファンタジーRPGで、派遣先の入社日の前日も勇者〈ユージン〉として活躍し、ロリ妹ヒーラーの〈アイン〉と楽しく過ごしていたのだ。
 そのせいで入社日に遅刻ギリギリで出社となり鬼部長と名高い斎藤カズエに眼を付けられてしまう。
 そんな中で、FoEのプロモーションイベントに斎藤と共に向かったときにFoEで使えるパートナー契約アイテム「エンゲージリング」をゲットして、〈アイン〉に渡したらそのアイテムを斎藤もつけていて……。
 ゲーム内アイテムの同デザインを課金で貰えるFoEでそんなことができるなんて、鬼部長がロリヒーラー!?
 オフィスとゲームで交わるラブストーリーがここに開幕!

第1話 Welcome Another World

■自宅


〈サガ〉『敵は食い止めた!』

〈アイン〉『お兄ちゃん! 回復は任せて一気に行ってぇぇ!』

〈ユージン〉『おう! オレに任せろぉっ!』


 岩でできた巨人——ゴーレム——を相手に3人のキャラクターと同じく3匹の動物や妖精が俺——近藤ユウ——の目の前のモニターで戦っていた。

 巨大なゴーレムの腕をこれまた巨大な盾で防いでいる金髪ロングの騎士の横を通り抜けた赤髪の戦士が派手な片手剣を振るう。

 魔法を武器にエンチャントして戦う勇者のユージンが俺の操作しているキャラだ。

 物理攻撃があまりきかないゴーレムだが、勇者であれば魔法を武器に付与することでダメージが通るようになる。

 派手な斬撃エフェクトと共にダメージがポップアップしていった。

 連撃と共に派手な音共に激しいエフェクトが出る光景は何度見ても気持ちいい。


 ——Vitctory——


 システムの表示がでたところで、俺はパソコンから離れて伸びをした。

 壁の上の方にかかっている時計が目に入る。

 23時を過ぎたところだ。

 俺は慌ててパソコンに戻り、チャットメッセージを入れていく。


〈ユージン〉『やっべ! 明日から新しい職場だから落ちなきゃ! じゃあ、また夜に!』

〈アイン〉『お兄ちゃん! お仕事頑張ってね♪』

〈サガ〉『じゃあ、今日はここで解散だな』


 俺は我先にとログアウトをして、パソコンテーブルの傍にあるベッドへとダイブする。

 一番ハマっているゲームである【Familia of Eden(通称:FoE)】はファミリアと呼ばれる【使い魔】と一緒に冒険するファンタジーRPGだ。

 パーティもファミリーと呼び、一緒に過ごす仲間たちとまさに家族のようになれるゲームで俺は楽しんでいる。

 もちろん、ゲーム内での結婚システムもあり、俺もいずれは相手を見つけたいと思っていた。

 だって、結婚したらステータス補正が上がるんだぜ? 最強を目指す俺にとってそれは避けては通れない道である。


「派遣先が見つかってよかったぜ」


 ベッドに寝転びながら、俺は天井を見てぼやく。

 前の派遣先が雇止めになって1か月、何とか次の派遣先が見つかったのでモヤシ生活ともおさらばだ。

 何より次の派遣先は【FoE】のCMとかも作っている広告会社である。

 面接を受けて、ゲームへの熱意を伝えたら採用されたので俺としては一安心だった。


「問題は……上司だよなぁ……」


 俺は前の派遣先のことを思い出して深くため息をつく。

 上司とそりが合わなかったためにやめざる負えなくなったのだ。

 大きな問題にならなかったので、厳重注意の元で新しい派遣先を探してくれたので派遣会社のマネージャーさんには感謝している。

 チッチッチッと時計の秒針が時間を刻むのが聞こえて来た。


「ね、眠れん……」


 俺は興奮しきっているのか布団で横になっていても眠れずにスマホを弄る。

【FoE】は珍しく、スマホアプリにメッセージ機能や生産、使い魔の育成を行う機能があり、家族として仲間との繋がりをより感じられる設計になっていた。

 攻略掲示板などを眺めていると1通のメッセージが俺に届く。

 さっきまで一緒にダンジョンボスのゴーレムと戦っていたヒーラーのアインだ。


〈アイン〉”もしかして、お兄ちゃん眠れてないですか? 楽しみなのは仕方ないですけど眠らなきゃダメですよ”


「スマホでもログイン状態になるの忘れてた……いい妹だ。俺には実の妹がいないから本当に可愛い奴だぜ」


 アインと出会ったのは1年ほど前で、動き方の分からないアインが男性プレイヤーに絡まれていたのを助けてからの仲だ。

 妹のように可愛いが、言うべきところはしっかり言ってくれるし甘えてくるときは甘えてくる可愛い子である。

 大学生と言っていた気がするが、実際のところはわからないし触れるつもりはなかった。

 ゲーム内にリアルを持ち込まないのは俺の主義でもある。


〈アイン〉”とっておきの魔法をかけますね、ねむくなーるねむくなーるねむくなーる♪”


 文字だけの情報だが、指をグルグル回している光景が目に浮かんだ。

 そうしていると、本当に俺の意識はまどろんできて、ゆっくり薄れていく……。


■MUGENLABO 入口


「ぜぇはぁ、ぜぇはぁ……ね、寝坊した……」


 俺は猛ダッシュでビルの中にあるMUGENLABOにつき、ギリギリ受付に向かう。


「まったく、腑抜けているな。5分前行動を徹底しろ。先が思いやられる」

「す、すみま、せん……」


 スーツで走り、息も絶え絶えになっている俺に名札を渡しながらツリ目のショートヘアの女性は鼻をフッとならした。

 先輩なのはわかるし、遅刻した俺も悪いのだが、あの態度はどうなんだと内心思うも腕を握って我慢する。

 張りのある胸につい名札には【斎藤】とあり、役職はだった。

 俺の配属される制作部の部長様が斎藤さんだった。


「俺の派遣人生終わった……更新までの3か月もてばいいなぁ……」


 受付から離れながら、俺は天を仰いで呟く。

 昨日の寝るまでは楽しかったのに……最悪な気分での仕事が始まった。


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