「……し、心拍103、血圧135の97。GCS、5点。反転感情、急速に減少中。脳波はデルタ優位」
「了解。ワタシのデータとも一致します。レジデント・リエリー、このバイタルから推測されるレンジャー・マロカの容態は?」
「ロカ……レンジャー・マロカは意識がない。けど、すぐ命にかかわる状態じゃない」
状況を言葉にしていくうち、少しずつ思考がクリアになってくる。同時に、マロカの状態が、客観的に見られるようになっていた。
(しっかりしろ、あたし! さっき、一瞬だけマロカは“爆発”した。けど、意識をシャットダウンして自分で抑えこんだんだ。でなきゃ、クレーターができてる。だから、まだ、だいじょうぶ)
導き出した結論は、楽観視できるものではなかった。
が、訳もわからず慌てるのと、冷静に受け止めるのとでは、雲泥の差がある。少なくとも、今のマロカは、直ちに処置が必要な状態にはなかった。
(……もうちょっとがんばって、ロカ。ドクんとこに連れてくから)
あいにく、この場でマロカにできることは、あまりに少なかった。ここから先は、
(いまは救命活動中。こんなとき、ロカならどうする?)
徐々に周囲の音が戻り、いくつもの咆哮や破壊の音が、切迫した状況を伝えてきていた。
それは間近でも同じだった。
「――――」
「ルー」
「了解。〈レンジャー・コード〉9条6項に基づき、レジデント・リエリー・セオークの限定的威療行為を承認します」
浅かった呼吸を、意識的に鼻から深く吸い込み、口からゆっくり吐き出す。
思考はとうにフル回転を取り戻し、威療士としてすべきことの長大なリストを己に突き付けていた。あとは、それを実行するだけだ。
「ルー。ロカを〈ハレーラ〉に運んで。いちおう、“
「了解。しっかり見張っておくわね」
「よろしく。んじゃ、あたしはいつもどおり、“
「もぅ、その呼び方はいけませんっ。……気をつけてね、エリーちゃん」
マロカの巨体を、4本の
息こそあれ、微動だにしない養父のことは気がかりだ。が、自分には今、やるべきことがある。
(ここで救命活動を放りだしたら、ロカに会わせる顔がないし)
落ち着かせた呼吸を全身へ回すイメージを描き、そこに
ほとんど同時に手首へ装着したダイヤルを限界まで捻じきると、【〈ユニフォーム〉身体強化モード出力最大】という通知が〈ギア〉に返った。
「――――」
「
ホバリングしている救助艇へと戻っていく
まさか、天敵に等しいマロカのユニーカを警戒したうえでの行動ではないだろうが、どちらにせよ、自分の目が黒いうちは指一本、触れさせるつもりはなかった。
「さあてと。――