第8話 収穫祭まで、1週間
“収穫祭”まで、あと1週間ほど。
街の中では“収穫祭”の準備をしているからなのか、いつも以上に賑わっていて騒がしい感じになっている。
そんな中、シュヴァートに呼ばれたロゼッタはシュヴァートの執務室に入ってみればシュヴァートと共にレイヴンとフランが部屋の中に居た。
「急に呼んですまない、ロゼッタさん」
「いえいえ~、父さんに伝書鳩を出した所だったので!それで、話ってのは……?」
「あと少しで“収穫祭”ってのは、ロゼッタさんも知っているよな?」
「あ、はい!3日間開催される年に2回の最大イベント!ってのは、いつもの事なので知っています」
「実は色々とあって中央広場に飾る予定の“大きなカボチャ”が、南の都市から運ばれる予定だったんだが……どうやら、何かしら起きたのか中々到着しないんだ」
「え!?」
いつもなら、この一週間前には到着してはギルド国家の皆で切り抜いて大きなジャック・オ・ランタンを作っては中央広場にて飾っていた。
どうやら何かの事件が起きたのかわからないが、大きなカボチャが届いていないという。
「そこで、だ」
「あ、はい?」
「ロゼッタさんと其処の“討伐士”の2人で、南の都市へと出向いて何が起きたのかを確認して代わりにカボチャを運んで欲しい」
「え!?あ、アタシも!?」
「余程の事にはならないだろう、其処の二人なら」
シュヴァートはレイヴンとフランを見れば、レイヴンは気まずそうにしながらも笑みを浮かべていてフランはシュヴァートを気にしながらも小さく頷いていた。
「まぁまぁ、南の都市でしょ?それなら、半日もあれば行ける距離だし付近は“自警団”が管理しているから大丈夫だろ?」
「一応、近くの管轄は“シキ”辺りが警備に行っている筈だ」
「なら、大丈夫でしょ」
レイヴンは満面な笑みを浮かべながらも、不安そうなロゼッタの頭を優しく撫でてロゼッタの不安を軽くさせようとしていた。
「………まぁ、レイヴンさんが言うなら」
「うふふっ、可愛い事を言ってくれるじゃんか!こうなったら、ロゼッタちゃんのために頑張らないとな!よしっ、さっさと準備して行こうぜ!フランくん」
「あ、うん!そ、そうだね!」
レイヴンがフランとロゼッタを連れて部屋を退室すると、シュヴァートは先程のフランの態度などを思い出しては苦笑いを浮かべていた。
「まだまだ、という事か………程遠いな、仲良くなるには」
シュヴァートの執務室から出たロゼッタ達は、地図を開いて場所の確認を行ってからギルド国家の都市の南の門へと向かった。
そこからは、南の都市へと向かうために魔導馬車を借りてフランが操縦する事になった。
「あの“魔力”とかは、大丈夫なの?」
「え、ボク??ボクなら、全然これぐらいの距離は大丈夫だよ!雪だるまくんか居るし」
「雪だるま??」
フランが言うと同時にロゼッタの頭に突如として、小さな水色の雪だるまが乗っては嬉しそうな表情を浮かべていた。
「つ、冷たっ!?」
「ふふっ、雪だるまくんロゼッタさんを気に入ったみたいだね!珍しい!“討伐士”の皆にしか、雪だるまくんは頭には乗らないから」
「そ、そうなの??」
「♪」
「あ、喜んでるのかな??」
ロゼッタが上を見上げて雪だるまに話しかけると、話しかけられた雪だるまは嬉しそうにしては頷いていた。
「んじゃ、準備は大丈夫か?なら、フランくん頼むぜ!」
「おう!任せておけ!」
ロゼッタとレイヴンが馬車の中へと入ると、フランは魔導馬車を操縦し始めて魔導馬車は動き出す。
「そういえば、レイヴンさん」
「んー、何ーロゼッタちゃん?」
「レイヴンさんって、“討伐士”の中でも年長さんですよね?」
「あー、そうだなぁーそれどころか“ギルド国家”の中で1番の年長だな」
「あ、そうなんです?」
「おうー、レヴァンと知り合ってから“ギルドキャラバン”ってのを作ってな?それからは、沢山の仲間と知り合ってから“旧帝国”へ革命を起こして“ギルド国家”を創設したってわけだ」
「へぇー、そんな歴史が……」
レイヴンはロゼッタと世間話をしながらも、フランの様子は横目で確認しながら周りへの警戒は解いていない。
特に、このギルド国家と南の都市へと繋ぐ街道ってのは盗賊などが出やすいからだ。
「レイヴンさん」
「どうしたー、フランくん」
「雪だるまくんが少し警戒しているので、一応すぐに対応が出来るようにお願いします!」
「おう、わかった………いや、丁度良いタイミングだぜ……俺が仕掛けた“魔導トラップ”に沼ったみたいだな」
「流石だなぁー、レイヴンさん!」
ロゼッタはレイヴンとフランの会話に首を傾げては、何となくだが“何かあった”という事だけは察しては無駄に動かない事にした。
「安心しな、ロゼッタちゃん」
「へ?」
「盗賊からの“襲撃”ってのは、“来ないぜ”」
「どういう事??」
「オレが仕掛けた“魔導トラップ”ってのは、この辺の“自警団”に連絡が行くようにしてあるんだぜ」
魔導馬車が止まるのと扉が開いて、開けた本人は見知ったシキと金色の髪色をしたハネっ毛のあるウルフカットにしており、薄めの空色の瞳色をした切れ長なキツめの目をしている。
軽装な感じの剣士のような服装をしては、両手には小手を身に着けている背の高い青年である。
「よぉ、ご苦労様だな!レイヴンさんよぉ!」
「アレックスじゃん」
「話は聞いてるぜ、アンタらの泊まる宿も用意してある」
「それは、サンキュー!んで、困っている案件ってのは?」
「それについても、話をしたいから“調所棟”に来てくれ」
「おう!フランくんは、ロゼッタちゃんと街の中を見てくるといい」
「あ、はーい!行こう、ロゼッタさん!」
フランは満面な笑みを浮かべては、ロゼッタの手を掴んでは街の中へと走っていく。
それをレイヴンは優しい笑みを浮かべてから、アレックスの方を見る。
「アイツが、シキが言ってた女か?」
「あー、そうっすよ」
「ふーん……」
「なんだ、気に食わなそうな顔じゃん?アレックス」
「……ヴェテルさんの娘さんじゃなければ、俺は受け入れたりしてねぇーよ」
「へえ?それ、カルマくんの目の前で言わないようにーな」
「は?」
レイヴンはシキから煙草を受け取っては口に咥えながらも、ライターで火をつけてから口から煙草を離しては煙を吐く。
「どうやら、すげぇー懐いているって話だ」
「……面倒くせぇーな、ソレは」
「カルマに勝てるのは、“No.1”であるアイツしか勝てないだろ?」
「………アンタなら、“アレ”使えば勝てるんじゃないのか?」
「ははっ、有り得るけど……“アレ”で働きたくないんでね」
「……」
「それより、情報だ」
レイヴンがアレックスとシキから最近の南の都市に起きている異変などについて話を聞いている間、フランはロゼッタと共に都市の中に入り商店街区を見て周っていた。
「ロゼッタちゃんは、この街初めてだったりする?」
「あー、一度だけなら」
「そうなんだ?」
「お母さんと共に、父さんの忘れ物だったかな?ソレを届けに行ったのは、3年前だったと思うよ」
「じゃあ、久々に南の都市にきたって感じだね!此処の人達、凄く優しいでしょ?」
「そういえば……」
“ギルド国家”の住民は優しいしお人好しなのは知っている事だが、この“南の都市”も同じような感じな事には今まで気にしたりしてなかった。
「6年前に此処では、大規模な飢餓があったんだよ」
「え!?」
「だけどねー、レヴァンさんとレイヴンさんの提案を受けて此処は大規模な飢餓から逃れたんだよ!あの二人、本当に凄いなぁーって思ってる!」
「レヴァンさん達が……」
活気が溢れている街並みと人々の声を聞いていると、本当に此処の南の都市の人々は幸せそうにしているんだってわかる程である。
「よしっ、ちょっとした出店で食料確保しようっか!レイヴンさんの分もっ」
「あ、はいっ」
(フランさん、レイヴンさんの事を尊敬しているし大好きなんだろうなー)
ロゼッタはフランの後ろを歩きながらも、フランの横顔を見てみればフランは凄く嬉しそうにしており目を輝かせていた。
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