第6話 お仕事をさせよう作戦!
ロゼッタは悩んで出た言葉を聞いたカルマは嬉しそうな顔をしていて、シャルルは“あー、これは大変そうだなぁー”っと呑気に思っていた。
「ほ、本当に???」
「はい、アタシが出来る範囲でしかできませんけど……“お仕事”を頑張ってくれるなら、“お願い事を1つだけ聞きます”!!」
「わ、わかった………ちゃんと、約束を守ってくれるんやろ?」
「はいっ!」
「じゃあ、…………がんばる」
カルマを宥めてから3日が経った頃に、シャルルからカルマの近況報告をロゼッタに話をしに来ていた。
「ほら、3日前にカルマに仕事をするように言ってたでしょー?」
「あ、はい」
「ロゼッタちゃんの言った事は、守っているのは確かなんどけどねー」
「???」
(守っているなら、それはそれで良いのでは???)
ロゼッタが疑問を感じて軽く首を傾げていると、シャルルは苦笑いを浮かべてカルマの3日間について話をしていた。
「アイツ、ロゼッタちゃんとの約束を守りだしたのは凄く良いことなんだけどね?訓練の時とか、任務の時とか………無言で行うせいか、部下とか他の上位の同期とかがカルマの無言で作業する姿に畏怖を感じていて……」
「わおっ」
どうやら、確実に約束を果たすためにカルマは集中するために無言で敢えてやっていたようだ。
その反動なのか、周りの人達は色々と大変だったんだという。
「あ、うん………なんか、悪い事した気分になってきた」
「あははっ、まぁー仕事はしていたから退院したら約束守らないとね?ロゼッタちゃんも」
「あ、はい」
シャルルがロゼッタの頭を優しく撫でてから部屋を出ていくと、代わりに薄い水色の髪色で結構ボサボサしていて前髪が長くて目元を隠していて、分厚い伊達眼鏡を身に着けている。
商人らしき格好をしていて、モスグリーンの長めのマフラーを身に着けている背の高い青年が口元に笑みを浮かべて入ってきた。
「???」
「あ!ハジメマシテー、ギルド国家で出張商人的な事をしている“ペイン”って言います!ヴェテルさんの娘さん、ロゼッタさんですよね!?」
「あ、はい???」
「いやー、会ってみたかったんですよー!丁度、他国へと出張していて大会には間に合わなくて!でも、こんな機会で会えるとは………運命ってヤツですかね!?」
「いや、違うかと」
「えー???」
「いや、“え?”って……」
ペインはロゼッタから断れるなんて思わず、あんまりの事に驚いているとロゼッタからツッコミを食らわされては笑っていた。
「いやー、どんな女の子なのかなーって思いましたけど………成る程なるほど」
「???」
「おっと!もえ、次の国に行く準備をしないと!また、いつか会いましょ!!ロゼッタさんっ!絶対ですからね!?」
「あー、………はい」
ロゼッタが返事し終わると同時に慌ただしくペインは部屋を出ていくと、ロゼッタは“嵐のような人だなー”って思っていた。
ロゼッタは何だか眠くなってきて、ベッドへと戻っては目を閉じていた。
久々に、見なくなった“夢”をロゼッタは見ていた。
それは、僅かな記憶の断片とも言えるほどの“懐かしいはずの夢”だった。
ーロゼッタ。
何処となく優しい声で自分を呼んでいる方へと振り向けば、素顔などは思い出せないが幼い男の子で自分よりも大きいのは確かだろう。
ーロゼッタ、ほら遊びに一緒に行こうっか。
その幼い男の子はロゼッタへと手を差し出せば、その幼い男の子の左手首に鳥のような痣かあるのだけは覚えていた。
何だか目を覚ますのが惜しくも感じるのような、そんな楽しい日々があったんだと思うと少しだけ寂しくも感じてしまう。
目を覚ませば其処は医務室の天井で、ロゼッタは少しだけ涙を流していたんだと自分の頬に触れたら濡れてた痕跡があった。
「なんか、久しぶりに夢なんて見たような気がする……」
「アレかな?ここ数日で色々と起きたから、久しぶり見たのかも??」
ロゼッタは窓の方を見れば夜空が見えたから、もう一度寝ようと布団を頭まで被り直して眠りへと誘わせて寝ることにした。
次の日になり、目を覚ましてシャルルからの診察などを受けている最中のロゼッタは背伸びをしては身体を動かしていた。
「もう大丈夫、って感じだね」
「あ、はい!ありがとうございました、なんか色々と」
「いやいや、コレがボクの仕事だからねー気にしないで?それと、シュヴァートが何かロゼッタちゃんに話があるみたいだから後で執務室に来てだって」
「お話、ですか?」
「うん、なんか大事な話があるって」
「わかりました」
ロゼッタがシャルルと話をしていると医務室の扉が壊れる勢いで開くと、目を輝かせて明らかに嬉しそうにしているカルマが立っていた。
「ロゼッタっ……!」
「あ、カルマさん」
「俺っ、ちゃんとロゼッタに言われた通りに約束守ったで!!」
「話は聞いていたので、シャルルさんから」
「んっ!!」
カルマはロゼッタへと頭を差し出しては撫ぜて欲しそうにしていて、ロゼッタは困惑気味だったがカルマの頭を優しく撫でる。
「~!」
「“お仕事”頑張ったんですね、凄く偉いです!カルマさん!偉い偉いっ!」
「お、おうっ!ロゼッタとの約束やから、俺、頑張ったで!」
シャルルはカルマとロゼッタのやり取りを横目で見ては、微かに笑いながらも“飼い主と飼い犬みたいだなー”と思っていたが表で言えばカルマに殺されそうなのでやめた。
「そ、それでな!約束の“お願い事を1つ叶える”ってヤツなんやけど、…これからシュヴァートと話があるんやろ?だから、その後に……言うわっ!」
退院した日、その日の夕方。
シュヴァートの執務室へと訪ねに来たロゼッタは、部屋へと案内されソファーに座っては紅茶の入ったティーカップを見つめている。
「すまないな、突如として此処へと呼んでしまって……」
「い、いえっ」
ロゼッタは執務室の部屋を見渡してみれば、机の上には山積みの書類やらファイルなどが多く置かれている事に気付く。
(この人、社畜だ)
「急に呼んだのは、ちょっとロゼッタさんに提案を提示したくてな」
「提案、ですか?」
「あぁ、統括者のレヴァンさんからの1つの提案なんだが……このギルド国家の本部に“道具屋の出張所”を作りたいって話になったんだ」
「えっと、父さんの??」
「あぁ、ヴェテルさんの道具屋の出張所として設立しようって話なんだが……勿論、ヴェテルさんからは許可は得ている」
シュヴァートはロゼッタが入院中に、ロゼッタの両親と会議をして色々と条件を付けながらも話し合いをしていた。
勿論の事だが、ロゼッタの母親であるライザから怒りの抗議はあったのだが説得を昨日まで行った事で、どうにかライザとヴェテルから許可を得ていた。
「まぁ、父さんや母さんが許可をしたならアタシは別に大丈夫です」
「そうか、なら書類にサインをしてもらっていいか?」
「あ、はい」
ロゼッタはシュヴァートから書類を数枚受け取り、その書類の中身を確認すれば“道具屋出張所”についての内容とロゼッタが店員としてギルド国家にて住み込みで働くという内容である。
「住み込み??」
「あぁ、ヴェテルさんが家の改築工事をしたいからって」
「あー、なるほど??」
(まぁ、色々とボロっちい感じになっていたから……いい加減直そうって所なのかな?)
ロゼッタは書類の最後の行に自分の名前を記入してから、その書類をシュヴァートに手渡すとシュヴァートは受け取りサインを確認するとファイルへとしまう。
「これで、本日からロゼッタさんは此処の“仲間”となった」
「“仲間”……」
「これから、宜しくな?“道具屋さん”」
「あ、はいっ!」
シュヴァートが満面な笑みを浮かべて挨拶すると、ロゼッタは何処となく嬉しそうにしながらも元気に返事をする。
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