第4話 悪意のある“霊”
食事をしている最中でカルマが第2試合の準備で先に戻ったあと、シキと共にゆっくりと紅茶を飲んで世間話的な事をしていた。
「それで、巻き込まれて此処に来て参加していたんっすね」
「そうなんですよー……」
「……ほら、そろそろ“準決勝”っすよ」
「えぇっ!!?もう!?」
「まぁ、カルマさんっすから」
シキと共に待合室へと向かえば其処には、カルマが第2試合を終わらせてソファで寛いでいる姿を見つける。
「えっと、カルマさんお疲れ様」
「!おう、終わらせてきたぜ!そういえば、嬢ちゃんの名前聞いておらんような……」
「あ、名前?アタシは、ロゼッタって言います!一応、色んなモノを売っている道具屋の娘ですっ」
「ああ!ヴェテルさんの所の!だから、何処となく似ているなぁーって思ったら……」
「ヴェテルさんの娘さんだったんっすね……あ、呼ばれているっすよ?ロゼッタさん」
「あー、はい……イッテキマス」
決勝戦の舞台となるステージには、もう既にカルマが軽くジャンプしたり足踏みをしながらも準備満タンな状態でいた。
「ん?」
(何やろ、この感覚……?)
待機しているカルマから少し離れた位置で、“悪意のある霊”に憑依された俯いたロゼッタが歩いてきては立ち止まる。
(ロゼッタから、殺気…?)
「では、決勝戦開始!!」
「行くで、ロゼッタ」
「……」
係の一声と共にカルマがロゼッタへと問いかけると同時に、ロゼッタは剣を持っては身を低くして速い動きでカルマの懐へと入り込むとカルマはダガーで防ぐ。
(あの動きは、確か“旧帝國”の……!?)
「やるやんけっ、ロゼッタ…!」
「……こ…す、」
「ロゼッタ?」
「絶対に、殺す」
ロゼッタは回し蹴りをカルマに食らわすが、カルマは腕で防いでロゼッタの足を掴んでは軽く壁へと投げる。
そうすると、ロゼッタは壁に着地するようにしては勢いに任せてカルマへと跳んでは剣でカルマの首を狙う。
ー誰か、止めてっ………!
「っ!?」
「っ、ぁ……!」
「あ、やべっ」
カルマは強い殺気と不思議な感覚を感じて自衛のため向かってきたロゼッタへと、強めの回し蹴りをロゼッタの身体へと当てては壁へとふっ飛ばして壁へとロゼッタは激突しては軽く吐血してから地面へと倒れる。
「優勝は、カルマ選手!!」
係の人がロゼッタの状態を確認しては勝利判定をカルマにすると同時に、カルマは焦った表情をしては慌ててロゼッタへと駆け寄る。
「ロゼッタっ!?」
「……」
「っ~………、ごめんっ」
他の係の人が数人来ては担架にロゼッタを乗せると、“医務室”と呼ばれている部屋へと急いで運んでいく。
「どうしたんっすか、カルマさん」
「シキ………、どないしよっ、マジ蹴りを食らわせてしもうたっ……!」
「な、何をしてんっすか!?」
「い、いやっ、だ、だってさ!?すげぇー殺気を感じるし、なんか変な感覚がして“倒さない”とアカンって……!」
「………一応、シュヴァートさんに報告するっすよ?それと、レヴァンさんにも」
「うっ…………、お、おん………」
カルマとシキは其処から動き出しては“自警団”用の執務室へと向かう途中で、反対の方から書類を持って歩いて来るシュヴァートを見つけるとカルマは少し嫌そうな顔をしていた。
「優勝したんだろ?カルマ?それなのに、暗い顔を……」
「あ、あのな!……シュヴァート、そのー……」
「どうした??」
カルマは言いづらそうにしながらも、少しずつシュヴァートに決勝戦での出来事を話すとシュヴァートは驚いた表情をしては少し焦った表情へと変わる。
「彼女に何かあったら、ヴェテルさんに顔向けが出来ないぞ!?」
「一応、さっき“医務室”には運ばれていったんっすけど」
「シャルル先生が居るが、大丈夫だろうが………一応、特級の傷薬も用意しておこう」
「そうっすね」
シュヴァートとシキが話をしている時、カルマは顔を俯かせてはロゼッタに怪我を負わせてしまった事を悔やんでいた。
普段なら“あのような殺気”を感じても冷静で対応が出来ていた筈だというのに、何かに動かされるかのように“ロゼッタを攻撃しなければいけない”と感じて無意識に動いていた。
(そうだったとしても、気にいっているヤツを攻撃するとか……最悪やろっ)
「カルマ」
「!、お、おん?」
「ちゃんと、話を聞いていたか?これから、シキと共に薬品倉庫に出向いて、特級の傷薬を2本ほど持ってきてくれ」
「わ、わかったっ」
「んじゃ、行くっすよ」
「おうっ」
カルマとシキが二人して走っていくのを確認したシュヴァートは、頭を軽く掻いては困った表情をしていた。
「これは、レヴァンさんにも相談しないとな……俺一人では、決定するわけにもいかない」
シュヴァートは別の塔へと足を向けて歩き出すと、前から白寄りの灰色の髪色をさせたボブショートで、空色の瞳色で少しタレ目でパッチリ目をしている。
庶民的な服装で、動きやすい感じにしている格好をした女性が歩いてくる。
「あ、シュヴァートくんじゃない~!相変わらず、カルマくんの活躍は凄いねぇ~!」
「ポルムさん」
「ん??何か、あったの~?」
「実は、それについてレヴァンさんに話をしたくて」
「レヴァンなら、執務室に居ると思うよ~」
「わかりました、ありがとうございます」
「いえいえ~!じゃあ、お話が長くなるなら紅茶持っていくね~」
「はい」
「じゃあ、またね~!」
シュヴァートは笑顔で去っていくポルムを見てから少しだけ安心したかのような表情をしてから、レヴァンが居る執務室へと向かう。
自分の執務室とは違った装飾された扉の前に立っては、其処に書かれている“ギルド統括者”という文字を見ては少し緊張してくる。
それも、そうだろう。
自分は“自警団”を率いる者だが、この“ギルド国家”を統括しているのは自分ではないのだ。
この扉の先にいるのは、“ギルド国家”の主でとあり“討伐士”を率いる人なのだから緊張してくるのは当たり前だ。
ーコンコンッ
「どうぞ、開いてるから入っておいで」
「失礼します…、レヴァンさん」
シュヴァートはドアノブを掴み扉を開けて中に入りシンプルな執務室を軽く見渡すと奥には長机があり、そこの席に座っているのは金色の髪色をした少しハネっ毛のあるショートで、赤色の瞳入をした少しツリ目をしている。
格闘家のような服装をしており、両手には小手を身に着けている男性だ。
「今回も相変わらずの活躍っぷりだねー、カルマくん」
「聞こえました?レヴァンさん」
「うん、ここまで歓声が聞こえたからね」
「ですよねー……」
「それで、キミが此処に来るって事は書類以外の事だね?」
「あ、はい……実は」
シュヴァートはレヴァンに話をすると、レヴァンは少し驚いては困った表情へと変えると椅子の背もたれに寄り掛かる。
「それは、確かに困ったね……ヴェテルさんの娘さんを怪我させてしまったとなると」
「はい……」
「まぁー、ちょっと待って」
「…??」
レヴァンはシュヴァートへと手を向けては、空いている手を自身の顎に手を添えては天井を見たり下を見たりと考えている。
「そうだ!こうしないか?」
「何を?」
「このギルド国家本部に、“道具屋出張所”を作ってヴェテルさんの娘さんに店員さんになってもらう!」
「え!?」
「そうすれば、運搬や商品の確認や管理までの時間を短縮も出来るし」
「まぁ、そうですけど……それで、誤魔化す感じにするんですか?」
「いやいや、そうじゃないよ!?永続的に“お抱えの道具屋”として、此処に迎え入れるって意味だからね!?面倒臭くて、そうしたいってわけじゃないから!」
「あ、はい」
(あの焦りようは、明らかに少しでも過ったんだろうな)
シュヴァートはレヴァンの提案の実行のために、レヴァンの執務室から出ていくと門の所へと急いで向かった。
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