辺りを散策した後、僕たちは再び同じ道を戻り嵐山のお土産屋へ向かった。
元々体力はそれほど自信が無いがそれにしてもなんだか疲れる。
やっぱりこの身体になってから体力も落ちたみたいだ。
「この後、渡月橋を渡るけど皆はどうする?」
「僕はこの近くで休んでるよ。足が痺れて来ちゃったし」
「私はせっかくだし渡ってみたいわ」
「それじゃぁ俺は琉夏とこの辺りで待っているから小春と秋吾で行ってきていいぞ」
「わかったわ。2人ともまたとでね」
小春と秋吾は渡月橋を渡りに歩いて行った。
僕は冬李と橋の近くで待つことにした。
「付き合わせちゃってごめんね」
「気にすんなって。さてどこで待つか。外から見えるところが良いよな」
「ん~……あっ、あそこに行ってみようよ」
僕は少し行った先にあるお店の前に足湯があるのを見つけた。
ここなら外からも見えるし休みつつ癒せる。
「足湯か。よし行くか」
僕と冬李は足湯のあるお店へ向かった。
ちょうど人が居なく空いている。
僕は設置してあるお店で貸し出し用のタオルを受け取り靴と靴下を脱ぐとさっそく湯へ足を入れた。
説明には40度と書かれている。
熱くもなくぬるくもないちょうどいい温度だ。
「はぁ~……温かい。疲れが取れるよ」
「それじゃ俺も入るかな」
冬李も靴と靴下を脱ぐとズボンの裾を捲り僕の向かいに座り湯に足を入れた。
「あ~、確かにちょうどいい温度で眠くなりそうだ」
「だよね~」
僕たちは湯に足を浸しながらゆっくり休んだ。
川の音や行き交う観光客の声などが聞こえる。
「明日にはもう地元に帰るんだよね。もう少し時間があればいいのに」
「またみんなで来ればいいさ」
「皆で色々な所旅行したいね」
「車があればもっと自由に動けるし―――あっ……」
冬李が突然目を逸らした。
「ん? どうしたの」
「あ、いやその……」
「なになに~? 言ってごらん」
「見えてる……」
「っ!? ご、ごめん……」
僕は咄嗟にスカートをタオルで押さえた。
小春に注意されたけどやっぱり気が緩むと忘れてしまう。
「いや、俺もなんかごめん……」
なんか微妙な空気になってしまった。
なんだか気まずい……。
何か話題をと考えていると小春と秋吾がやってきた。
「お待たせー。向こうからちょうど2人が見えたから―――ってどうかした?」
「いや別に何もないぞ。な?」
「う、うんっ。ほら、小春。お土産買いに行こ? 僕ちょっと気になるお店があったんだよね」
僕はすぐに靴下と靴を履くと小春の手を引きお土産を買いにお店へ向かった。
足湯の所為なのかなんだか顔まで熱い。
こうなったら買い物をして忘れよう。
僕たちは周辺のお店でお土産を買った。
「結構買っちゃったわね」
「僕もついこれとか可愛くて買っちゃったよ。そろそろお土産置きにホテルに戻る?」
「そうね。冬李と秋吾君もいいかしら?」
「俺はいいぞ」
「同じく」
僕たちはお土産を置きに一度ホテルへ向かった。
電車内は空いていて運良く4人座ることが出来た。
「渡月橋どうだった?」
「良かったわよ。写真いっぱい撮っちゃった」
小春はスマホで撮影した写真を見せてくれた。
橋全体の写真や中央付近から川を撮った写真など。
写真を見ているとその中に誰かに取ってもらったのか小春と秋吾のツーショット写真があった。
「誰かに撮ってもらったの?」
「これはたまたま向こう側に友達が居たから撮ってもらったの。記念よ」
そう言っている小春はなんだか嬉しそうに見え、写真を見た僕はなんだか羨ましく感じた。
ホテルに着き各自部屋に荷物を置くと再びロビーに集まりホテルを出た。
ロビーには同じように一度お土産を置きに来る生徒とすれ違った。
「水族館ってここから何で行くの?」
「歩いて行ける距離にあるみたいよ」
水族館へ向かい歩いた。
先ほどまで居たところとは違くこの辺りは現代の街って感じだ。
しばらく歩くと木々が多い場所が見えた。周りには大勢の人が居る。
「なんだかあの辺りだけ人多いね。公園かな?」
「あの広場の所にある建物が水族館なんだよ」
建物をよく見ると確かに水族館と書いてある。
水族館に着き、入口でチケットを買い館内に入った。
館内は薄暗く水槽がライトアップされている。
「わぁ~! 綺麗~!」
「琉夏、これくらいの暗さは大丈夫か?」
「水槽が明るいから大丈夫だよ」
とは言ったものの正直薄暗くて怖い。
でも冬李に心配させるわけにはいかず我慢した。
少し進むと半屋外展示場へ出た。中とは違い明るい。
ガラスで囲われた展示スペースがあり見ると中にはたくさんのペンギンが居た。
「わぁ! ペンギン可愛い~」
「可愛いわね~」
僕も小春もペンギンにメロメロだ。
よちよち歩く姿が愛くるしい。
再び館内へ戻り色々な魚を見て回った。綺麗な色の魚や大きい魚、凄く小さい魚等、見て回るだけであっという間に時間が過ぎて行く。
「凄い種類の魚居るね。秋吾は魚とか詳しい?」
「そこまで詳しくないから新鮮で楽しいよ。琉夏は詳しいのか?」
「ううん、僕も全然。小春は詳しいと思うよ」
「確かに。小春さんって動物とか好きそうだし気になる物を調べてそう」
「きっと話合うと思うよ。なんだか秋吾と小春ってそう言うところ似ているよね」
「そう言うところ?」
「気になった物を調べたりするところ」
「そうかな? でも確かに小春さんと話すのは楽しいから」
僕と秋吾が話していると小春と冬李がやって来た。
「なんか楽しそうね」
「小春は魚とか詳しそうだねって話してた所。実際の所詳しい?」
「そこまでじゃないけど種類とかならある程度分かるわ」
「そうなんだ。それじゃ向こうの魚なんだけどさ」
小春と秋吾が話し始めた為僕は冬李と一緒に歩いた。
展示スペースも終わり最後のお土産コーナーへ寄った。
ぬいぐるみやストラップ、お菓子など色々売っている。
「ペンギンのぬいぐるみ買おうかな? あ、でもイルカも可愛い~。冬李は何か買って行く?」
「俺はこの小さいぬいぐるみ買って行くかな。アイツ喜びそうだし」
「アイツって……?」
「あぁ、小学生の従妹だよ。今度婆さんの所行くときに手土産に持って行こうかと」
「そ、そうなんだ。これならきっと喜ぶね」
別に冬李が誰かにプレゼントするなんて僕には関係ない。
関係ないはずなのになぜかムッとしてしまった。
お土産を買い出口ゲートを潜ると小春と秋吾が待って居た。
「あれ? 冬李は?」
「まだレジに並んでたよ。小春と秋吾は何買った?」
「私はメンダコのぬいぐるみよ。一目惚れして買っちゃったわ」
「俺はこのストラップだけ。琉夏は何買ったんだ?」
「僕は小さいぬいぐるみとハンカチだよ。大きいぬいぐるみも欲しいけど値段がね」
「大きいのってアレくらい?」
小春が指した方を見ると1メートルほどのイルカのぬいぐるみを持った人がゲートを潜って出て来た。凄く抱き心地が良さそうだ。
ぬいぐるみを持った人はこちらへやってくる。よく見るとそれは冬李だった。
「どうしたのそれ?」
「1000円以上買い物でクジ引けただろ?それで1等当てちゃってさ」
「そうなんだ。それも従妹にプレゼントすれば?」
「いや、これは琉夏にプレゼントするよ」
「えっ? いいの?」
「別に良いって」
「良かったわね」
「うん……ありがとう」
夕方、日が沈み切る前に早めにホテルに戻った。
ロビーではすでに戻って来た生徒がちらほらいる。
部屋に入るなり僕はイルカのぬいぐるみと共にベッドに倒れた。
「疲れたぁ。もう動けない……」
「結構歩いたわね。夕食まで時間あるからしばらくゆっくりしてましょ」
「だねぇ」
僕はベッドでゴロゴロしながらスマホで撮った今日の写真などを見返していた。
風景や食べたスイーツ、みんなの写真など。
あっという間の一日だった。
冬李に貰ったイルカのぬいぐるみをギュッと抱いた。