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魔法の特訓

 私は今、客室で魔法の特訓をしていた。


 たいしたことはしていない。


 瞑想をして、集中力を高める。


 その後、魔力を留める。私の場合、無の属性が邪魔をして魔力を放つ前に弱まって抜け出てしまうらしい。

 例えるなら、ガスコンロの火がなかなか着かないような。


 だったら魔力を高め、コントロールも適切にしていかなければいけないらしい。


 シーアさんが屋敷に来て二ヶ月。


 特訓は厳しいけど、少しだけ魔力が高まった気がする。

 これもシーアさんのおかげね。私一人だと難しかっただろう。


「休憩にするか?」


 瞑想していた私に声をかけたのはシーアさん。


 私はゆっくりと目を開ける。


「……いいえ、まだ続けます」

「続けて寝るでないぞ」

「わ、わかってます!」


 最初、寝室で瞑想をしていたんだけど慣れている場所なのもあって、そのまま寝ちゃったんだよね。


 寝室はダメだと思ったのか、客室で瞑想することになった。


 ソファの座り心地も全然違うから落ち着かないが、却ってそれが良かった。


 眠ることなく、瞑想に集中できる。


「ところでのぉ、お主は婚約者はおらんのか?」

「!? な、なぜ急に!!!?」

「前から不思議でのぉ。婚約者が居てもおかしくない歳じゃろ? 外見はいいんじゃから、男連中は放って……、いやすまん。忘れてくれ」

「なんででしょうか。とんでもなく失礼なことを言われて思われた気がします」

「そんなことはないぞ」

「目を見ていってください!!」

「ところで、でぃすられたとは、どういう意味じゃ?」

「な、なんでもないです」


 シーアさんの言いたいことはわかる。

 そもそも引きこもりに近い暮らしをしている私は出会いがない。

 かといって、貴族のパーティに参加は難しい。

 屋敷外に出たら封印が解けて、闇属性が暴走するかもしれないから。


 カースさんの屋敷の場合は、運が良かったんだ。


「まず、出会いよりも闇属性をなんとかする方が先です」

「あんまり思い詰めるでないぞ?」

「はい。わかってます」


 闇属性があるから、殿下は婚約を申し込んだに決まってる。

 デメトリアス家よりも王宮の方が、腕の良い騎士や魔導士が多いから。


 万が一、暴走しても止められるだろうし。


 私は殿下には幸せになってほしい。

 一番の推しがそんな理由で好きでもない女性と婚約だなんて、悲しいじゃない。


 闇属性をなんとかしないと。


「今日は、マテオという人は見んのぉ」

「マテオ様ですか?」

「いつもはお主の近くにいるじゃろ? 竜騎士と一緒に」

「マテオ様はお義父さまと一緒にミットライト王国に行っています。なんでも、マテオ様を引き取ってくれる貴族が見つかったとか」


 マテオ様は嫌がってはいたけど、オリヴァーさんが耳打ちをした後、大人しくなったんだよね。素直に受け入れたし。


 何を言われたのかと不思議に思って聞いてみても教えてくれなかったから、男にしか分からないことなのかな。


 だったら私がしゃしゃり出るのは、お門違いね。






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