「――ユウ、右です」
「了解。雪姉は後方注意ね」
「はい!」
互いの位置取りさえ分かっていれば、相手の注意点を指摘するのは容易だ。
この数年間の間で、ふたりは仲が良くなっただけでなく、ユウからすれば、副長になるまでの間の仕事の殆どは紗雪と一緒だった。
阿吽の呼吸、と言っても過言ではない連携力が、築かれているのだ。
(それにしても――)
隣で、一、二と流れるように妖魔を狩るその姿は、未だ見たことのない咲夜の戦闘方法を想像させた。
紗雪は咲夜から直接指導を受けてきた。ユウは菊理とは違う方法での戦い方を得意とするが、紗雪の方は咲夜と瓜二つなのだという話だ。
足取り、重心、長巻を握る手元への無駄のない力の加え方――その一連の動きは舞踊を思わせる程に滑らかで、気が付けば対象の懐へと潜り込み、流れるようにあっさりと必殺の一太刀を浴びせている。
それだけでもユウは、自分よりはるかに上の強さだと言いたいのに、咲夜はそれを更に限界まで洗練した強さであり、模擬戦ですら「足元にも遠く及ばない。背中すら未だ見えない」と紗雪は言う。
全盛期の咲夜の戦いが如何程であったか。
想像したくない程の脅威であったことだろう。