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第3話 楽しみ

 それからというもの。


 悠希は月に一度、満月の夜になると必ず、上手いこと嘘を考え、裏山へと通うようになった。

 辿り着きさえすれば、あの光に包まれて、勝手に夢の世界へと行ける。


 理屈は分からない。


 でもそんなこと、無垢な少年にとっては、どうでもいいことだった。


 楽しい。嬉しい。

 それだけで良かった。


 不思議だったのは、湖から帰った悠希を、祖父母があまり驚かずに出迎えてくれることだった。

 夢中になって何時間も、時間を忘れて遊んだ後で、咲夜の「そろそろ」という言葉を以って悠希は元の世界へと帰る。

 それだというのに、祖父母は怒らないどころか「早かったね」と言葉を掛けてくるのだ。

 こちらとあちらでは、時間の進み方が違うのだろうか――そんなことを、一度は考えもしたけれど。

 答えは出ないどころか、悠希はあの世界のことを、咲夜の言うように『素敵な夢』だと思い込んでいた為、さして気にすることもなく、すぐにそんな考えは捨ててしまった。

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