そんな、軽い気持ちで来てみれば。
「なんですか、これ……」
辿り着いた医務室にてユウは、呻き声を上げて横たわる幾つもの姿を目にした。
腕の無い者。
脚の無い者。
中には、絶命寸前で呼吸を繰り返しているだけの者までいる始末。
「ここまでの被害……傷口も、見たことがないものですね。嚙みみ痕のようにも、千切られた痕のようにも見えます」
「ええ。他にも幾つか見られる異常性から、私が巫女様に報告致しました。本日の招集も、おそらくこれに関連した何かかと」
「調査、或いは有事の討伐かな――って、お前、
ひとり見つけた妖へとユウが駆け寄る。
しゃがみ込み、よく観察してみると、全身そこかしこから血を流しながら浅い呼吸を繰り返している様子が分かった。
「死にゃしない程度ではあるんすけど……すんません、ユウさん。ドジ踏んじまって――痛っ…!」
「あっと、無理に喋らなくていいよ、ごめん。委細は咲夜様に聞くよ」
慌てて制するユウに、三叉は苦笑い。
命が弱っているのは確か。だが同時に、本人の話す通り、今すぐに死んでしまうような状態でないことも確かではある。
妖はそれぞれ、種族ごとに身体の強さや頑丈さが異なる上、生命を司る器官の場所も役割も違う。
特に三叉は、妖の中でもとりわけ頑丈な種族であり、生命器官も損傷はしていないように見える。
絶命している、そう確実に分かる状態でない限り、それを心配する必要はあまりないのが妖という生き物だ。
四肢の欠損に関しても、時間や程度は異なれども、再生はする。
「美桜さん、ここにいる皆は布団の上だっていうのにそれだけ運んできたってことは、まだ?」
「ええ。報告ではあと四名、ここへ運ばれてくる予定なのです」
「更に四人……ざっと二十、ですか。布団、ここに置いておきますね。咲夜様のところへ急ぎます」
言いながら、ユウは布団をおろすと、さっさと腰を上げて歩き始めた。
「お願い致します。今の時刻でしたら、朝の湯浴みをなさっているはずですから、大浴場の方へと行かれた方が早く出会えるかと思います」
「ありがとうございます、美桜さん。行ってきます」
小さく頷くと、ユウはそのまま医務室を後にした。