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城田と坂上は、みんなから離れた場所で小型の変容樹を探していた。
目当ては魔石だ。
「これならけっこう儲かるかもしれないぞ。大きめのを壊せば、もっとデカい石が出るだろ?」
城田はヘイト・ドールを撫でながら、得意げに坂上へ話しかける。
坂上も頷いた。
「だな。手柄にもなるし、ついでに魔石も独り占めできる。俺らだけでも十分イケるだろ」
二人は公園の奥に踏み込みながら、変容植物を物色し始める。
壊せそうな幹や蔦を見つけるたび、キバザルとヘイト・ドールをけしかけて試しに叩き割っていった。
すると、何本かの小さな変容植物が光の粒子に溶けて消え、その場に小さな白い石を残していく。
「ほら見ろ、意外といけんじゃん。簡単だよ」
城田は口元を緩めて、拾った魔石を握りしめる。
坂上も同じように小さな魔石を手にして喜んだ。
「うまくすれば、もっと良い魔石も狙えるかもな。もうちょい大きめの樹を探してみようぜ」
二人は警戒を怠りがちになりながらも、公園の奥へ奥へと進んだ。
やがて、一本の大きな変容樹を見つける。
濁った赤黒い樹皮、複数の枝がうねりながら突き出している姿は異様だ。
「これなんか良さそうだな」
城田が目を細めると、坂上も腕を組んで頷く。
「なら、やるしかないだろ。キバザル、行け」
坂上が合図を送るとキバザルが素早く駆け寄り、その幹に爪を立てて登ろうとする。
だが、樹の表面には鋭い棘のような突起が隠れており、キバザルの手足を傷つけた。
キバザルが一瞬悲鳴のような声を上げ、飛び退く。
「ヘイト・ドール、援護しろ」
城田の指示で、ヘイト・ドールがキバザルの横から幹を斬りつける。
カミソリのような刃物が幹にめり込む。
すると、変容樹の枝葉がざわりと大きく蠢いた。
二人は思わず息を呑む。
「な、なんだよ……樹が動いてるのか?」
城田が焦った声を上げる。
坂上も後ずさりしながらあたりを警戒する。
すると、どこからともなく複数の足音が近づいてきた。
赤黒い蔦の合間から、獣型と虫型のモンスターが次々に姿を見せる。
「こ、こいつ、モンスターを呼びやがったのか!?」
城田が叫んだと同時に、甲虫の一体が鋭い角を振りかざして突進してくる。
「数が多すぎる! 引き返そう!」
坂上が振り向いた瞬間、奥からは別のモンスターの唸り声まで聞こえてきた。
二人は慌てて走り出すが、霧の漂う公園内で道がわかりづらい。
背後を振り返ると、複数のモンスターが追いすがるようにこちらへ迫っていた。
「くそっ、速い……!」
城田は若干うろたえた様子で走り続けるが、地の利もなく、モンスターの脚力との差は大きい。
あっという間に間合いを詰められ、鋭い爪や牙が迫ってくる。
「うわああっ……!」
坂上が悲鳴をあげながら転倒した。
横合いから襲いかかったモンスターが、キバザルもろとも坂上に襲いかかる。
城田もヘイト・ドールで必死に応戦するが、囲まれてしまい、思うように逃げられない。
「誰か、助けてくれええっ……!」
城田の悲痛な声が公園の中にこだまする。
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その絶叫を、三崎たちは遠くから聞き取った。
「今の声……城田たちか……!」
英子が慌てて顔を上げる。
「まさかもう戻ってきたのか? いや、違うな……」
吉村が血相を変えて周囲を見回す。
沙理はルミナス・ソウルを手にしながら、声が聞こえた方をじっと睨んだ。
「行きましょう。仕方ない人たちだけど、放っては置けません」
三崎もうなずく。
麗奈がアーマード・ベアを先頭に立たせ、急いで悲鳴の方向へ駆け出した。
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森のように鬱蒼とした変容樹の集まりの奥へ進むと、城田と坂上が数体のモンスターに取り囲まれていた。
二人は血を流し、ヘイト・ドールやキバザルも傷だらけだ。
「まずい……!」
三崎が思わず駆け寄ろうとした瞬間、周囲の木立から低い唸り声が響いた。
数えきれないほどの敵の気配がある。
吉村が冷や汗を浮かべながら呟いた。
「まさか、罠か」
視界の奥に蠢くモンスターの群れは、あまりにも多い。
城田と坂上を助けようとすれば、こちらも包囲される恐れがあった。
三崎たちはどうにか突破口を探ろうとするが、その前にモンスターたちが一斉に動き出した。