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第71話「罠」

 ◆


 城田と坂上は、みんなから離れた場所で小型の変容樹を探していた。


 目当ては魔石だ。


「これならけっこう儲かるかもしれないぞ。大きめのを壊せば、もっとデカい石が出るだろ?」


 城田はヘイト・ドールを撫でながら、得意げに坂上へ話しかける。


 坂上も頷いた。


「だな。手柄にもなるし、ついでに魔石も独り占めできる。俺らだけでも十分イケるだろ」


 二人は公園の奥に踏み込みながら、変容植物を物色し始める。


 壊せそうな幹や蔦を見つけるたび、キバザルとヘイト・ドールをけしかけて試しに叩き割っていった。


 すると、何本かの小さな変容植物が光の粒子に溶けて消え、その場に小さな白い石を残していく。


「ほら見ろ、意外といけんじゃん。簡単だよ」


 城田は口元を緩めて、拾った魔石を握りしめる。


 坂上も同じように小さな魔石を手にして喜んだ。


「うまくすれば、もっと良い魔石も狙えるかもな。もうちょい大きめの樹を探してみようぜ」


 二人は警戒を怠りがちになりながらも、公園の奥へ奥へと進んだ。


 やがて、一本の大きな変容樹を見つける。


 濁った赤黒い樹皮、複数の枝がうねりながら突き出している姿は異様だ。


「これなんか良さそうだな」


 城田が目を細めると、坂上も腕を組んで頷く。


「なら、やるしかないだろ。キバザル、行け」


 坂上が合図を送るとキバザルが素早く駆け寄り、その幹に爪を立てて登ろうとする。


 だが、樹の表面には鋭い棘のような突起が隠れており、キバザルの手足を傷つけた。


 キバザルが一瞬悲鳴のような声を上げ、飛び退く。


「ヘイト・ドール、援護しろ」


 城田の指示で、ヘイト・ドールがキバザルの横から幹を斬りつける。


 カミソリのような刃物が幹にめり込む。


 すると、変容樹の枝葉がざわりと大きく蠢いた。


 二人は思わず息を呑む。


「な、なんだよ……樹が動いてるのか?」


 城田が焦った声を上げる。


 坂上も後ずさりしながらあたりを警戒する。


 すると、どこからともなく複数の足音が近づいてきた。


 赤黒い蔦の合間から、獣型と虫型のモンスターが次々に姿を見せる。


「こ、こいつ、モンスターを呼びやがったのか!?」


 城田が叫んだと同時に、甲虫の一体が鋭い角を振りかざして突進してくる。


「数が多すぎる! 引き返そう!」


 坂上が振り向いた瞬間、奥からは別のモンスターの唸り声まで聞こえてきた。


 二人は慌てて走り出すが、霧の漂う公園内で道がわかりづらい。


 背後を振り返ると、複数のモンスターが追いすがるようにこちらへ迫っていた。


「くそっ、速い……!」


 城田は若干うろたえた様子で走り続けるが、地の利もなく、モンスターの脚力との差は大きい。


 あっという間に間合いを詰められ、鋭い爪や牙が迫ってくる。


「うわああっ……!」


 坂上が悲鳴をあげながら転倒した。


 横合いから襲いかかったモンスターが、キバザルもろとも坂上に襲いかかる。


 城田もヘイト・ドールで必死に応戦するが、囲まれてしまい、思うように逃げられない。


「誰か、助けてくれええっ……!」


 城田の悲痛な声が公園の中にこだまする。


 ◆


 その絶叫を、三崎たちは遠くから聞き取った。


「今の声……城田たちか……!」


 英子が慌てて顔を上げる。


「まさかもう戻ってきたのか? いや、違うな……」


 吉村が血相を変えて周囲を見回す。


 沙理はルミナス・ソウルを手にしながら、声が聞こえた方をじっと睨んだ。


「行きましょう。仕方ない人たちだけど、放っては置けません」


 三崎もうなずく。


 麗奈がアーマード・ベアを先頭に立たせ、急いで悲鳴の方向へ駆け出した。


 ・

 ・

 ・


 森のように鬱蒼とした変容樹の集まりの奥へ進むと、城田と坂上が数体のモンスターに取り囲まれていた。


 二人は血を流し、ヘイト・ドールやキバザルも傷だらけだ。


「まずい……!」


 三崎が思わず駆け寄ろうとした瞬間、周囲の木立から低い唸り声が響いた。


 数えきれないほどの敵の気配がある。


 吉村が冷や汗を浮かべながら呟いた。


「まさか、罠か」


 視界の奥に蠢くモンスターの群れは、あまりにも多い。


 城田と坂上を助けようとすれば、こちらも包囲される恐れがあった。


 三崎たちはどうにか突破口を探ろうとするが、その前にモンスターたちが一斉に動き出した。


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