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「今の声は……」
三崎たちも遠く屋上の方から響いてくる叫び声に気付いていた。
「……他の連中かもな」
陣内が険しい表情で呟く。その言葉に一同の顔が引き締まる。
「屋上にいるのか……でも、どうするんだ?」
山本が迷いのある声で問いかける。
「僕は助けたい……とは思っているけど」
三崎が答えるが、絵里香は複雑な表情を浮かべる。
「でも、私たちが行っても、本当に助けられる? 余裕なんて……」
その言葉に、微妙な沈黙が漂った。
「……私が行くわ」
その場を打ち破るように口を開いたのは、九条 誠子だった。
「ここでぐだぐだ話していても何も変わらないでしょ? 私が行くから、皆は逃げなさい」
誠子がそう言うと──
「先生!? そんなの無茶だよ!」
杏子が慌てて声を上げる。
「皆には大切な人がいるでしょう? 先生にとっては生徒たちがそうなの。少し前まではそうじゃなかったんだけどね。あなたたちは二番だった……こんな時にこんな事を言うのはちょっとどうかとおもうけど」
苦笑しながら言うが、目の奥の黒くてドロドロとしたモノは隠せない。
誠子の "一番大切な者" はモンスターによって既に奪われているのだ。
瞳に怨讐の念を滾らせる誠子を、三崎達はそれ以上説得することが出来なかった。
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「……あれは、鳥? いや、人? ……くそ、モンスターか!」
フェンス際で叫び続けていた室井が吐き捨てる様に言う。
それはただの鳥ではなかった。
「や、やばい……」
屋上の覚醒者の一人である相田 良が慄きながら言う。
彼の目には "視" えるのだ。
──『レア度4/踊り喰らう妖鳥マ・ヌ/レベル3』
と。
レア度とレベルがモンスターの強さに影響している事は、これまでの戦いで相田にも分かっている。
問題は、この場には妖鳥マ・ヌより高いレア度及びレベルのモンスターを召喚出来た者が一人も居ない事だった。
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それは鳥というよりは鳥人だろうか? 鋭い嘴と鳥の頭に人間のような体、そして黒い翼を持つ異形のモンスターだった。
そんなマ・ヌたちは次々に空中から屋上へと舞い降りる。
怯え竦む生徒たち。
マ・ヌの一匹が生徒たちの前に進み出てくると、ココココ……」という鳥のような鳴き声が、まるで呼びかけの様に繰り返された。
「襲い掛かって……来ない?」
相田は疑問に思い、自身の召喚モンスター『レア度2/女王に使える忠兵ワーカー・ビー/レベル1』を見て安堵した。
レア度、レベルから見てもとても敵いそうにもなかった為だ。
──もしかしたら交渉出来るかも……?
相田はそんな事を思い、マ・ヌの様子を窺う。
他の者たちも同じ事を思ったのか、中には「あの、助けてくれるんでしょうか」などと話しかける者も居た。
しかし──
──『コココ……キキキキ』
マ・ヌから漏れ出た声は笑い声と言うよりは "嗤い声 " で、相田はその啼き声に含まれる不穏な気配に、背筋がぶるりと震えた。