禁錮室から出て俺はとある場所に用があるため夏休み期間に新幹線に乗っていた。
ただ遊びに来た訳ではなのだが面倒なのがついてきた
「奈良県なんて中学の修学旅行ぶりだよ」
「それは楽しみですね」
「なんでお前らがついてくるんだ?」
「いいじゃんせっかくの休みなんだから」
「だからってわざわざ来なくても」
「もう来ちゃったんだし」
健二に携帯を見るように促した
「小鳥遊の子守唄頼んだぞ」
「それで私にも声がかかったんですね」
「どっちにしろ東大寺には二人とも行けないし」
「分かりました」
「二人してなにスマホ見てるの?」
「なんでもない」
程なくして五時間の新幹線での時間は終わった、いつもなら時間があれば霊札に術をコピーだったり式神の研究を進めたいところだが人目につく所ではそんな事は出来ないので寝たかったのだが隣の二人が五月蠅すぎて寝られるものも寝られなかった
まずは京都に着いてそこからバスで奈良まで行く予定なのだが小鳥遊に奈良までついて来られてはまずいので一つ策を打った。
「じゃあ俺は行く場所あるから二人は京都で満喫してくれ」
「安倍君は?」
「奈良に用があるから先にそっちに行く」
「分かった」
「それじゃあ」
「うん」
「いってらっしゃいませ」
今回は随分と大人しいく引き下がったと思ったがそんな事を考えている俺には知らない所でその経緯が話されていた。
「それじゃあ太一様も行かれたので私達はレンタカーでも借りに行きましょうか」
「はい」
駅から少し歩いて予約していた車で手続きをした早速ホテルまで向かうことになった
「そう言えば京都では何処に行きたいですか?」
「そうですね、まずは金閣寺や銀閣寺とか清水寺とかは修学旅行で行ったからもっと京都を満喫したいな」
「そうですか」
「そう言えば太一は奈良の何処に行ったの?」
「東大寺です」
「何しに行ったの?」
「太一様に何も聞かれなかったのですか?」
「うん、だって結果的についてきたのは京都に行きたかったからだしそれに健二さんが行かなかったって事は私もどうせ行けない場所だと思って」
「いい気遣いですね」
「そうだね、私は陰陽師じゃないしだから力になれる事はないからね」
「十分力になれてますよ」
「そうかな?」
「はい」
「さあ、せっかくの夏休みだし楽しもう」
「そうですね」
そんな小鳥遊の気遣いに気づかずに俺は奈良に着き東大寺に到着した。
「すいません」
東大寺の受付に向かい声をかけた
「はい、どうなされましたか?」
「昨日電話をした安倍太一ですけど、松村さんはいらっしゃいますか?」
「只今お呼びするので少々お待ちください。」
「はい」
そう言うと受付の人は慌ただしく本堂に走っていった
そんなに急がなくてもと思いながらその場で待っていると程なくして住職さんがこちらに歩いてきた
「初めまして、私が松村です」
「初めましてこの度はお時間を作って頂きありがとうございます」
「いえいえ、安部家の方には随分とよくしてもらいましたから」
「それは結界の事ですか?」
「はい、代々安部家の当主様にこの東大寺の結界を張っていただいています」
「そうですか」
「此処で話すのもなんですからどうぞこちらへ」
そう言われて松村さんについていった
「所で陰陽師については此処の方は知っているのですか?」
「いえ、代々後を継ぐものにしか知りません」
「そうですか」
じゃあさっきの受付の人はなんであんなに急いでいたのか不思議に思えた
「先ほどの受付の方は私の妻なんですよ」
「え?」
「いや、妻がなにか粗相をと思いまして」
「いやそんな事はないですよ」
この人エスパーなのか、それともなにか術をそんな事が脳裏によぎった
「此処には色んな方々が訪れ私や住職に相談をしに来る人がいるので術を使わなくても人の表情から相手の事をよく思いなさいと先代に言われ術の事は言わずとも私も常に相談を受ける住職には口酸っぱくいっておりますので」
「そうでしたか、いやなんか奥様が慌てて松村さんを呼びに行かれたのでそんなに慌てなくてもと思ったので」
「安部家の方がお見えになるので一番信頼できる妻にあそこにいてもらったんです、とても大事なお客様だと言い伝えたのでそのせいでしょう」
「そうでしたか」
少し歩いた所の本堂の裏手に鍵がかかっている地下に行ける場所があった
「こちらですね」
「手伝います」
「ありがとうございます」
扉は錆びていて大人の男一人では難しくなる程に固く閉まっていた。
まるで自分の所へ来る事を拒んでいるかのようだった。
「硬いですね」
「もう何年も開けた事がないので」
力みながら二人で扉を上へと上げた瞬間に反動で二人とも尻餅をついてしまった
「本当に開けましたね」
「私もこの度扉を開けるのは始めてだったのでまさかここまで錆びているとは思いませんでした」
「始めて開けたんですか?!」
「ええ、最後にこの扉を開けたのは平安時代だと言われていましたので」
「じゃあ中の掃除とかは?」
「それが当時に中に安置している本人が鬼道でこの場所の結界と清潔を保たれたらしく」
「あの時代にそんな事が」
「そうなんですが平安時代には当時此処を管理していた者が不安になって安倍晴明様に中を見てもらいたったと言い伝えたられたとされています」
「ここも安倍晴明か」
「まあそれ程の方と言う事でしょう」
自分にとっていつしか安倍晴明がいなければ自分に負い目を持った人生を送る事はなかったと思ってしまっている事を見透かしているかのように優しく言葉をかけてくれた
「では私はここで待っていますので」
「松村さんは中に入らないんですか?」
「はい、いくら此処の管理と責任者と言えど中を見ることは禁じられているので」
「そうですか」
「はい」
「では行ってきます」
「はい」
中に入ると中は防空壕のようになっていてその中には沢山のお供え物や青銅器や絹織物など当時で言う高価なもので溢れていたが中は驚く程に清潔に保たれていた。
その中心には一人が入れそうな棺桶のようなものが置いてあってその上には勾玉が置いてあった、俺は迷わず棺桶を開けて中を見ると中には何も入っていなかった。
ただ七色の目を使い中の人物の能力を見る。
そしてその能力を霊札にコピーした。
そしてそれが終わると棺桶を元に戻し上に行く
「終わりましたか?」
「はい、ありがとうございます」
「所で太一さんの能力は霊札に術をコピーするでしたよね?」
「はい」
「成功しましたか?」
「はい」
「能力は?」
「千里眼でした」
「じゃあやはり記述の通り卑弥呼は千里眼の持ち主と言う事ですか」
「そうなりますね」
「では太一さんは未来が見えるようになったのですか?」
「分かりません、僕の能力はコピーすれば何でもかんでも使えるというわけでではないので」
「というと?」
「筋肉と同じで使えば強くなる、使わないと衰えていくし」
「じゃあ普段から使えばより元の力より強くなると言う事ですか?」
「はい、オリジナルを超える事もできますし霊札を直接使えるようになりますけど体に馴染まないと上手く使えないと言う事です」
「成程、それが太一さんの能力ですか」
「そうですけど所で貴方は誰ですか?」
「はい?」
「さっきまでは俺の事を安部家の人間として話をしていたからさ、それにさっきから俺の式神があんたを警戒しまくってるのよ」
松村さんの姿をしていたものは俺から少しずつ離れた
「これは実に面白い、流石晴明の血筋」
「晴明は関係ないだろ」
「それはどうかな?君は九尾を使役できるんだろ?」
「ばれてしもうたな太一よ」
「こいつは何者だ?」
「私は待っていたよ」
「なんだと?」
「太一君、君は正しく安倍晴明の生まれ変わりだぞ」
「は?」
「黙れ!!」
九尾が珍しく怒り見たこともない姿をしていた
「落ち着け、九尾!!」
「こいつはやばい」
「だからなんなんだあいつは?」
「そろそろじれったいし男の体のままは嫌なものだ」
そう言って松村さんの姿をしていた人物はまるで平安時代の女性のような着物を着て存在していた。
ただそれは俺の目には禍々しく見たこともない程に恐ろしかった
「私は六条御息所と言う」
「お前が、松村さんはどうした?」
「そう怒りなさんな安心しな、少し眠ってもらってるだけだ」
「太一早く逃げるぞ」
「でも松村さんが」
「そんなの後にしろ!!」
「ふざけんなそう言うと訳にはいかない」
俺は霊札から剣を取り出し戦おうとした時九尾が俺を背負ってその場を後にしようとした
「安心しな君を殺しはしない」
「信じられないな」
「松村と言う人間は本堂にいるただ今は君を人目見たかっただけだから」
そう言うと六条御息所は体から抜け落ちたようにすっと消えた
「九尾、もう落とせ」
「分かってる」
そう言うと九尾は俺を落としてさっきの殺気に満ちた姿から元の状態に戻った
「まさかお前が俺を守ろうとするなんてな」
「今お前に消えられたら困る」
「そうか、それよりまずは松村さんだ」
「そっちは任せた」
そう言うと九尾は札に戻った
「松村さん!!」
「ああ」
「ここは」
「体を乗っ取られていたんです」
「体を、いった誰に?」
「六条御息所です」
「え?」
「驚かれると思われるかもしれませんが事実です、体はどうですか?」
「少しだるいくらいでなんともないですよ」
「そうですか」
「まあ記述に残されている程の怨霊に憑りつかれても死ななかっただけでも奇跡ですよ」
「恐らく陰陽師について知り、理解している事が影響したのでしょう」
「そんな事がありえるのでしょうか?」
「知る事と知らない事で起きる体の変化とでも言うのでしょうか」
「まあそうでもして理由をつけてないといけんな」
「そうですね、それより病院に行きましょう」
「大丈夫ですよ」
「でも」
「病院に行って医者になんて説明したらいいのやら」
「まあそれはそうですが」
「とにかく助けてもらったお礼をさせてほしい」
「助けただなんて、もし六条御息所に俺を殺そうとしたら直ぐにでも俺は死んでました今のこうして俺が生きてるのはあいつの気まぐれです」
「そうだとしても私が生きてるのは事実ですよ」
「分かりました」
「じゃあお茶でも飲んでゆっくりしましょうか」
「はい」
そして少し移動して休憩所のような一室に通された
「はい、お茶ね」
「ありがとうございます」
「そう言えばどうして此処に僕を立ち入る許可が出たんですか?」
「私は上からの許可をもらっただけですよ」
「そうですか」
「それにこれも代々言い伝えられたんです、六条御息所が復活した時此処を訪れた陰陽師がいれば迷わずお通しするようにと」
「そうですか」
「でも今思えば卑弥呼は貴方を待っていたのかもしれないですね」
「俺を?」
「はい」
「それに君は安倍晴明様に宿ったとされる七色の目を持っているようですね」
「よくご存知ですね」
「安部家の逸材の話は陰陽師の世界を知っている人間なら誰でも知っていますよ」
「僕はそこまでじゃないですけど」
「七色の目を持ち式神の中でも最強の水龍を使役できるんでしょう?」
「まあそうですけど」
ここで九尾について知られればまた面倒な事になるのでそれは隠した
「それ程の逸材はそうそう生まれないよ」
「それが生まれつきだったら少しは変わったのかもしれないですけど」
「そう言えば最近君の話が周りだしたみたいだね」
「はい、この目も一年前ですから」
「途中で発生する事があるのですか?」
「まあ俺自身よく分かっていないので」
「霊札に術をコピーするのは安部家が使っていたものではないんですよね?」
「そうです」
「それじゃあ今まで大変でしたでしょう」
「はい、あそこは普通を一番嫌う家柄ですから」
「安部家や有名な陰陽師の家柄の話は聞いていますので」
「そうですか」
「はい」
お茶を飲みながら淡々と話す
「僕は小学生の時までは家の雑用ばかりさせられてそれに見かねて叔父が中学にあがるタイミングで僕を引き取ったんです」
「そうでしたか」
「他の家はどうかわからないですけど俺の実家は間違いなく毒ですよ」
「貴方がそこまで言うならそうなんでしょうね、貴方はどちらも分かる貴重な人なんですね」
「どちらも?」
「はい、必要とされる人とされない人とでもいうのでしょうか。それは人にとってどんなことよりも大切な感性の才能ですよ」
「そうなんですか」
「はい、その年でそれに気づかれる事が何よりも貴方を成長させるでしょう」
そのまま僕は松村さんに色んな話をして松村さんは僕を否定する事ははなく思わず話過ぎてしまったそして結局三時間くらいお邪魔した事になった。
「ではそろそろ僕は行きますね」
「はい」
「病院には行ってくださいね」
「大丈夫ですよ」
「理由は体がだるくてとか適当でいいので」
「分かりました」
東大寺の出口まで送ってもらってバス停まで歩いて京都に向かった。